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減量は薬剤ダイエットに頼る前にまず「運動の習慣化」。それだけで食欲を抑制【最新論文】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

GLP-1-受容体作動薬は「劇薬」指定。安易な使用は禁物。

「ウゴービ」など、GLP-1受容体作動薬を使った減量が話題になっています。

痩せるのは「早く満腹になる」だと説明されています

(これについては拙稿「話題の「GLP-1ダイエット」。薬を使わず同じ作用を期待できる食べ順がこれ!」をぜひご覧ください)。

でも気をつけましょう。法律上、GLP-1受容体作動薬の規制区分は「劇薬」ですからね [添付文書] 、「劇薬」。きちんとしたクリニックや病院でちゃんと診てもらったうえで、処方してもらいましょう。

「脱毛」や「メンタルへの悪影響」にも懸念

また米国ではこの薬で「脱毛」が増えるのではないかと、現在調査が進んでいます。髪の毛が気になる方はご注意を [日本の添付文書にも副作用として「脱毛」が「1~5%未満」の頻度で起きると明記されています」。

加えてGLP-1受容体作動薬は「メンタルへの悪影響」も危惧されています [米国食品医薬品局(FDA)報告書 ('24年1月時点)] 。そういえば「GLP-1受容体作動薬を使っている人は抗うつ剤を始める割合が高い」なんて論文も、つい最近出ていました [文末文献1] 。せっかく痩せても、気分が落ち込んでしまったら毎日が台無しです。

そしてなんと言っても、この薬は止めるとほぼ100%リバウンドします。「金の切れ目が減量の切れ目」では悲しすぎませんか?

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

やはり、できるなら薬を使わずに痩せたいものです。

ではどうやって?

運動を習慣化すると食欲が減った。

「運動は習慣化すると逆に食欲が落ちる」という論文が出ました [文末文献2]。

身体を動かすとお腹が減りそうなものですが、どうやらそうではないらしいのです。

4月11日、「栄養素」という学術誌が掲載した、ドイツ運動大学のクリストフ・コーニッツ氏たちによる論文を簡単にご紹介します。

今回コーニッツ氏たちが調べたのは、糖尿病予備群か糖尿病の人を対象に運動が食欲に及ぼす影響を検討した研究です。過去に7つの研究が報告されており、その結果を解析することにしました。

すると「単回の運動」が食欲に与える影響は研究間で一致せず、結論が出せませんでした。

一方、6カ月間運動習慣を続けると運動をしない人たちに比べ、食前・食後とも「空腹感」が軽くなっていました。また「食後に早く満腹感を感じる」と報告する研究もありました。

運動の量としては「1週間に150分の早足歩き」程度で良いそうです。土日は休むとして1日に30分。2、3回に分ければ簡単に達成できますね。

「下手に動くとお腹が減るかも」と心配し、運動を控えていたあなた。もうその心配は無用です。好きなだけ身体を動かしましょう。同じ減量でも薬を使うより絶対そちらの方が健康です!

最後に

今回の研究では残念ながら、運動習慣がつくとなぜ食欲が抑えられるのか、その仕組みは分かりませんでした。しかし私たちにとっては「運動習慣がつけば食欲が減る」という事実だけで十分ではないでしょうか?

減量」と「髪の毛」については以下のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. GLP-1受容体作動薬を使っている人は抗うつ薬を飲み始める割合が高い
  2. 運動を習慣化すると食欲は減る(か不変)

(いずれも英語ですが無料です。DeepLなどの無料翻訳を使ってぜひご自身でご覧ください)

【注意】本記事は医学論文の紹介です。研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員。

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