今こそ田澤ルールを見直すべきではないか?
マーリンズが現地17日、田澤純一投手を40人枠から外す措置(いわゆる「DFA」)を行った。今後は7日以内に1)他チームへのトレード、2)チームからの解雇、3)マイナーに降格させるためのウェーバー公示──のいずれかを進んでいくことになる。
ただ田澤投手の今シーズンの成績(22試合、1勝1敗、防御率9.00)を考慮すると、わざわざトレードしてまで残りの年俸(全額700万ドルから約2ヶ月分を引いた残額)を支払うチームは現れるのは厳しい状況で、今後はFAとなって新しいチームを探すか、もしくはマイナー契約を結び直してマーリンズに残留するか──になってくるだろう。いずれにせよ田澤投手の将来はエージェントの手腕に委ねられている。
1つ残念でならないのが、もし田澤投手がFAになったとしても即座にNPB入りするという選択肢がないということだ。これまでもシーズン途中でNPBに復帰した日本人メジャー選手は存在しているにもかかわらず、NPBの様々なルールのため彼の場合は不可能なのだ。その1つとして、彼の名前が冠された“田澤ルール”がある。
多くの方が承知のことではあると思うが、2008年にドラフト指名有力候補だった田澤投手が直接レッドソックスと契約を交わしたことを受け、今後更なる有望アマチュア選手のMLB流入を阻止するためNPBが策定した規則が“田澤ルール”だ。日本のドラフト指名を拒否して海外チームと契約した場合、当該チームを退団した後も、大学・社会人出身なら2年間、高校出身なら3年間はNPBチームと契約できないというものだ。
つまり田澤投手はFAになったとしても、向こう2年間はNPBのどのチームとも契約することはできないわけだ。レッドソックス時代にはワールドシリーズ制覇の経験もあり、現在も150キロ前後の球威を誇るリリーフ投手であり、年齢も31歳と野球選手として脂の乗りきった時期だ。もし田澤投手がルール適用選手になるなら(まだ最終確認できていないが、ルール設定は田澤投手がレッドソックスと契約した後なので対象外という見方もあるようだ)、33歳まで待たなければならないというのはむしろ不条理ではなかろうか。
さらに理不尽なことは、MLBで9年近い実績がある選手であるにも関わらず、かつてのマック鈴木投手や多田野数人投手がそうであったように、NPB入りする際にはまずドラフト指名を受けなければなたないことだ。この規則がある限り、たとえ“田澤ルール”の適用外になってとしても今シーズン中にNPB入りできないことに変わりないのだ。
大谷翔平選手が日本ハムと契約したことで、田澤投手以降ルールが適用される選手は現れておらず、規則そのものが有名無実化しているところはある。だが今シーズンの大谷選手の活躍で、若くしてMLBに挑戦したいという選手は確実に増えていくことになるだろう。その一方でNPBは日本ハムのような寛大なチームばかりではなく、今でもポスティング制度での移籍さえ許してくれないチームも存在している。そうした状況を考えれば、今後再び田澤投手のような選手が登場する可能性を否定することはできないだろう。
元々“田澤ルール”は誕生当時から批判も少なくなかった。自分も国際化が進む野球界の流れに逆行するものだと感じていた。こうして田澤投手が日本のマウンドに立てるチャンスが出てきた時だからこそ、今こそ“田澤ルール”の存在意義を含め規則の見直しを行うべきではないだろうか。