いまの日銀にとってYCCの修正は政策変更でなく、緩和策継続のための時間的猶予を得るために行う可能性
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日銀の植田和男総裁は18日、インド西部のガンディナガルで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議閉幕後の記者会見で、持続的・安定的な2%の物価目標の達成には「まだ距離があるという認識がこれまであり、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)のもとで粘り強く金融緩和を進めてきた」と語った。YCC見直しの必要性には直接、言及せず、緩和姿勢の前提や見通しに変化がないか「毎回の金融政策決定会合でチェックする」と述べるにとどめた(19日付日本経済新聞)。
これを受けて、18日のナイトセッションの債券先物は147円40銭あたりから147円86銭まで跳ね上がった。欧米の国債が買われていたこともあってショートカバーを誘ったとみられる。
ただし、この発言がYCC修正は考えていないということを示すものではない。
7日のインタビューで内田副総裁が「当面はYCCを続けていくと強調していた」と発言しており、それと整合性がある。内田氏は「YCCはうまく金融緩和を継続するという観点から続けていく」と発言していた。
今の日銀にとって、YCCの「解除」は政策変更となるのかもしれないが、長期金利コントロールのレンジの「修正」はうまく金融緩和を継続するための手段としての微調整に過ぎないとしている。
昨年12月20日の金融政策決定会合で長期金利コントロールのレンジを拡大したが、この際の公表文のタイトルは「当面の金融政策運営について」。金融政策変更時はこのタイトルではないため、これは金融政策の変更、つまり緩和の修正ではないとしていた。
もし28日の金融政策決定会合で、昨年12月と同様に長期金利コントロールのレンジを±0.5%から同1.0%に拡げたとしても、これも金融政策の変更とはしないであろう。
今回、日銀がYCCの修正をしてくる可能性は引き続き高いとみている。内田副総裁にとっても今回がひとつの修正チャンスとみているのではなかろうか。これは昨年12月の修正の教訓も生きている。もしレンジ拡大がなければ、さらなる国債の極度の買入に追い込まれていた可能性は高い。また日銀も円安対策に尽力しているということも示すことができた。
その教訓を生かし、緩和の時間稼ぎのため、さらには緩和修正を求めるむきのガス抜き、そして円安進行にブレーキをかけるために、YCCは維持したまま、長期金利のレンジを±1.0%に拡大してくる可能性は依然、高いとみている。
その際の公表文のタイトルは「当面の金融政策運営について」となり、公表文の最後も「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。」とするであろうと予想される。現執行部というか内田副総裁はなぜそこまで頑なな姿勢を貫き通したいのかはよくわからないのではあるが。ただ、もしかすると執行部3名(総裁・副総裁)の考え方に、微妙なズレが生じつつあるのも確かなのかもしれない。