前年同月比マイナス約5000人、2014年7月の熱中症による救急搬送者数は1万8407人
7月搬送者数は1万8407人、前年同月比5292人減
総務省消防庁は2014年8月11日、同年7月の熱中症を起因とした全国の救急搬送の状況(確定値)を発表した。同年7月における熱中症による救急搬送者は全部で1万8407人となり、前年同月の2万3699人と比べ、5292人減少(22.3%減)している。これは2010年の1万7750人、2011年の1万7963人にほぼ等しい水準となった。昨年と比べて減少した理由として消防庁では、昨年比で梅雨明けが遅れたためと分析している。
今年の7月は台風8号の上陸や梅雨前線の活性化で大雨に見舞われる機会も多かったが、中旬以降は晴れる機会も増え、湿度の高い中で気温も上昇することによって、熱中症のリスクも上昇、搬送事例も多く見受けられた。また梅雨明けは例年と比べてやや遅めに推移し、6月末の沖縄に始まり、7月中旬には九州、そして関東と続き、7月28日には北海道をのぞきすべての国内地域での梅雨明けが宣言された。梅雨明け前後では各該当地域で気温をはじめとする急な気象の変化に伴い体調の調整が追い付かず、熱中症と判断されて搬送される人も相次いでいる。
昨年と比べるとすべての年齢区分で人数は減少。若年層の減少は少なめだが、成人以上では大よそ2割減の状態で推移し、梅雨明けの遅さによる減少との消防庁の説明も納得がいく。もっとも未成年者の減少率がやや低めなのが目に留まる。これは学校が夏期休業前の期間が多分にあること、そして休業に入った直後における部活動などでつい熱中してしまったことによるものと考えれば道理は通る。指導する先生方、部活動を行う生徒本人双方とも、梅雨明け前・梅雨明け直後で油断したのかもしれない。
搬送時の傷病程度別動向を確認
搬送時の初診傷病程度は次の通り。やや起伏はあるが、平均すれば少しずつ中等症以上の重い病症率は減少している。搬送が必要な状況が第三者に確認されても、軽度のうちに連絡が成された事例が増えていると見れば、悪くは無い傾向といえる。一方で、中等症以上(入院が必要な状態)で搬送される事例が今なお3割以上あることは、憂慮すべき事態に違いない。
自分自身への熱中症に係わる注意を怠りなくする(意識的に水分を取る、体調保全に努める)のと共に、自身の体調に異常を感じたらすぐに水分補給、涼しい場所への移動、楽になる姿勢を保つなど、各種対応を行うのは当然の話。最優先事項として実行してほしい。そしてそれだけでなく、身の回りに体力の不安な人、身体の衰えなどの理由から適切な反応が期待できない人(歳を取ると得てして周辺環境の変化には鈍くなるもの)が居る時には、積極的に声をかけるなどして、自分以外の人においても熱中症の発生を極力防ぐ姿勢を望みたい。
なお今回の確定報により、2014年6月から7月における累計搬送者数総計は2万3041人となった(2014年は5月下旬から計測が開始されているが、他年と比較するため6月からのものに限っている)。あらためて累計人数を記しておく。
今年は当初エルニーニョ現象の影響で冷夏予想がなされていたが、それも秋口にずれ込むと予想修正され、夏の暑さは直近では例年通りと予想されている。実際、台風の上陸がやや多い感はあるが、気温動向はほぼ例年通り。一方で電力需給状況及び電気代の上昇から考察した、冷房の利用性向に係わる懸念は昨年よりも強いことから、各方面で昨年以上の熱中症に対する警戒が取られている。
7月の熱中症によるものと見られる救急搬送人員は昨年を下回る形となった。しかし万単位をカウントしたことには違いない。「体調管理」として全般的な視線で自分の、そして周囲の体を気遣い、その中で熱中症に対する注意と配慮をしてほしいものだ。
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