打球直撃のオリックス・小林の対応に垣間見えたNPBの不安な危機対処能力
投手を強烈な打球を襲うのは野球だから仕方がないことだ。だがどうしても不測の事態も起こってしまう。これまで何度となく投手が打球直撃を受ける場面に遭遇してきたが、常にショッキングな光景でしかない。
30日のオリックス対ソフトバンク戦でも悲劇が起こった。6回表ソフトバンクの攻撃中に、高谷裕亮選手が放った打球が小林慶祐選手の顔面を直撃。マウンド上にうずくまった小林投手はすでに流血していた。すぐにトレーナーが駆けつけ措置を施すものの、小林投手が起き上がってくる様子はない。最終的にグラウンド上に救急車が搬入され、病院へ緊急搬送された。
この日は球場に足を運べなかったため、アクシデントの一部始終を『Sportsnavi Live』の動画でチェックした。やはり痛ましい限りだったのだが、その一方で感じてしまったのが、NPBがみせた危機対処能力への一抹の不安だ。
2013年5月7日のことだった。川崎宗則選手の取材でレイズ対ブルージェイズ戦を観戦していた。この日先発したJA・ハップ投手がやはり打球を頭部に直撃させ、病院に緊急搬送されるアクシデントが起こった。その様子をMLBがYouTube上で公開しているのでチェックしてほしい。
アクシデントが発生すると、まず両チームのトレーナーが駆け寄る。その後スーツ姿のチーム医師が登場し、さらに間髪入れずに救急隊員がストレッチャーを携えて現れ、すぐに救急措置を施す。その回りには屈強なセキュリティが集まり、各所に指示を出しながら搬送の準備を進める。そしてストレッチャーに頭部を固定されたハップ投手を球場内に待機してある救急車まで運んでいった。この一連の動きを映し出している動画時間は7分51秒だった。
再び小林投手のアクシデントに戻る。こちらの動画時間は11分1秒。小林投手が倒れ込んだ後トレーナーが駆けつけるまではMLBとまったく変わりはない。しかしその後ストレッチャーを持ってきたのはグラウンドキーパーだった。もちろん彼らは救急医療の専門家ではないので手出しできずに見守るしかない。結局救急車が搬入するまで直接対処したのはトレーナーだけだった。日米ともに10分前後の対応時間ではあったが、その中身があまりに違いすぎると思わないだろうか。
先日ヤンキー・スタジアムで観客席に飛んだ打球が幼い少女を直撃し、病院に緊急搬送されるアクシデントが起こり、球界に防護ネットの必要性が騒がれることになった。だがその一方で救急隊員たちが的確な対応をし、彼女は大事には至らなかった。MLBのすべての球場に救急車と救急隊員が常駐しているからこそ迅速な対応ができるのだ。
防護ネットの有無にかかわらず、グラウンドでも観客席でも不測の事態は起こりえる。そうした事態に抜かりのない対応することも運営側の重要な責務だろう。やはりNPBは、リーグ全体でセキュリティ体制のあり方を見直すべきではないだろうか。