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耳垢は取る方がいいのか?耳鼻咽喉科医がお答えします。

前田陽平耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医
(写真:アフロ)

「耳垢は取る方がいいのか?」や、「子供の健診で耳垢を指摘されたが、家で取っておけばよいのか?」など、耳垢にまつわる疑問にお答えしたいと思います。

耳垢は必要なもの

耳垢には実は役割があります。耳垢があることで耳の穴(外耳道)を細菌や真菌(カビ)から守っているのです。これは、耳垢が自然に出てくることとも関連しています。そう、耳垢は自然に外に出てくるのでそれをふき取るだけで十分なのです。

耳垢はまず表面を覆うことで外耳道を守ります。さらに、耳垢が外に出てくるときに、同時に異物を排出させます。

耳垢を取ることのマイナスもある

耳垢を取ることは、外耳道の守りが弱くなることでもあります。また、耳かきのやりすぎは外耳道を損傷するリスクがあるばかりでなく、外耳道がんのリスクにもなるといわれています。

耳垢を取るつもりが、逆に綿棒で押し込んでしまって奥に溜まってしまい、耳鼻咽喉科の診察でも一回で除去できなくなってしまうこともあります。

特に、耳掃除をしたときに耳が痛い・血が出るなどがあるなら耳鼻咽喉科で相談が必要です。

また、耳かきをしているときに何かがぶつかってしまい、外耳道や鼓膜などを損傷するということもあります。場合によっては手術が必要になることもありますので注意が必要です。

耳垢を取らないことでのマイナスはないのか?

耳垢はかなり溜まっても聞こえにくくはならないですが、耳垢で耳の穴がほぼふさがってしまうと耳のつまり感や聞こえにくさが出る場合があります。

他にも、耳のかゆみが出たり、いやなにおいがしたり、耳垂れが出たり、耳の痛みが出たり、咳が出たりする方もいます。(耳の中にはのどと共通する迷走神経という神経が走っていて、この神経が刺激されることで咳が出てしまうのです。)

特に補聴器を使っている方などは補聴器とともに、耳の穴もきれいにしておく必要がありますし、子供など自分で症状を訴えにくい場合も早めに耳垢を処置しておく方が良い場合もあります。

耳垢が溜まりすぎた結果で、外耳道に炎症を起こしていること(外耳道炎)もあります。外耳道炎は当初は耳のかゆみから始まりますが、炎症がはっきり起こると耳の痛みが表れます。また、耳垢が溜まってしまうような病気、たとえば外耳道真珠腫や真珠腫性中耳炎などの病気を見逃すことが考えられます。

健診で耳垢を指摘されたとき

お子様が健診で耳垢が指摘されたときは、私自身は(おうちで耳垢を取るのではなくて)一度耳鼻咽喉科で診察を受けることを勧めています。耳鼻咽喉科健診では鼓膜の状態を観察することで中耳炎などの有無をチェックしますが、耳垢があるとそれができないからです。健診の前に目立つ手前側の耳垢は取っておくのもよいでしょう。

学会の方針

実は、アメリカの耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会では耳垢についてガイドラインがあり、定期的に自分で耳垢を除去する必要はないとしています。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のホームページでも、耳垢は除去する必要がないとされています。

耳垢が溜まるように感じるなら一度耳鼻咽喉科でご相談を
耳垢が溜まるように感じるなら一度耳鼻咽喉科でご相談を写真:アフロ

結局どうすればよいのでしょうか。

耳垢が溜まっていると思う、と受診された場合、実際に耳垢が詰まっていて除去することもありますが、実は耳垢は溜まっていなくて聴力が低下しているという方もいます。ですから、耳垢が溜まっていると思ったら一度耳鼻咽喉科でご相談いただくことが重要です。

耳垢を除去しなくても、多くの方は自然に排出されるので問題ありませんが、定期的な除去を必要とする方もいます。どれぐらいの間隔で耳垢を取るべきかという決まりはありません。個人ごとに差があるのです。先ほど書いたように、耳垢は耳の入り口の方に出てきますから、家庭では入り口の方だけ取るようにすることはよいアイデアだと個人的には考えます。耳垢がそれでも溜まってしまうという方は耳鼻咽喉科に受診して除去してもらうようにしましょう。なお、総合病院の耳鼻咽喉科などは入院や手術に特化した治療を行なっている場合も多く、気になる場合はまず耳鼻咽喉科のクリニックでご相談ください。

綿棒で逆に耳垢を押し込むのもよく見るパターンです。つまようじなど他の細長いものを入れることは外傷の原因になりますからやめておきましょう。

おまけ:耳垢がねばっこい(あめみみ)のは病気??

あめみみやじゅるみみ、やにみみ、ねこみみなど様々な呼び方がありますが、医学的には湿性耳垢と呼びます。湿性耳垢か、乾性耳垢(乾いた耳垢)か、というのは遺伝子で決まっています。ときどき「湿性耳垢は病気ですか」と聞かれることがありますが、もちろん病気ではありません。日本人の2~3割程度が湿性耳垢であるといわれています。

耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医

2005年大阪大学医学部医学科卒業。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。医学博士。市中病院勤務、大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教を経て現在JCHO大阪病院院長補佐・耳鼻咽喉科部長。雑誌取材・メディア出演多数。臨床・研究の専門領域は鼻副鼻腔疾患・アレルギー疾患・経鼻内視鏡手術など。一般耳鼻咽喉科についても幅広く診療している。耳鼻咽喉科領域や診療に関わる医療情報全般の情報について広くTwitter(フォロワー4万人)などで発信している。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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