安倍・トランプ蜜月を支えた皇后雅子さま 英米関係はメーガン妃、ファーウェイ5G 、EU離脱で大激震
4日にロンドンで大規模デモ
[ロンドン発]ドナルド・トランプ米大統領が3日から3日間の予定で英国を公式訪問します。首脳ゴルフの自撮り写真で安倍晋三首相とトランプ大統領の蜜月ぶりが世界に発信された蜜月の日米関係とは対照的に、英米間には大激震が走っています。
(1)第一子となる長男アーチーちゃんを産んだばかりの英王位継承順位6位ヘンリー王子(34)の妻で元米人気女優メーガン妃(37)
(2)中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)の次世代通信規格5Gネットワーク参入問題
(3)英国の欧州連合(EU)離脱交渉
(4)最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首、ロンドンのサディク・カーン市長らのトランプ批判
――を巡って激しく対立しているからです。
この日、エリザベス女王とチャールズ皇太子夫妻はバッキンガム宮殿でトランプ大統領とメラニア夫人を歓迎。同大統領は近衛歩兵連隊の栄誉礼を閲兵し、ウェストミンスター寺院で無名戦士の墓に花を手向けます。グリーンパークやロンドン塔では祝砲が撃たれ、夜にはバッキンガム宮殿で公式晩餐会が催されます。
トランプ大統領の人種・性差別的な発言に対する英国での反発は強く、4日にはロンドンで大規模な抗議デモが計画されています。昨年7月にトランプ大統領が英国を実務訪問した際には6万人規模の抗議デモが行われました。
メーガン妃とトランプ大統領は犬猿の仲
トランプ大統領は訪英に先立ち、メーガン妃について英大衆紙サンに「彼女が嫌な人とは知らなかった」と発言。その後、ツイッターで「私はメーガン・マークルを『嫌な人』と呼んだことは一度もない」と火消しに追われました。
メーガン妃は「産休」を理由に晩餐会を欠席すると報じられています。ヘンリー王子は出席するそうです。
2016年の米大統領選では民主党のヒラリー・クリントン候補を応援し、インスタグラムに民主党候補を支持する投稿をしたメーガン妃。トランプ大統領を「男尊女卑」「不和を起こす人」と表現したこともあります。そしてヒラリー氏の大統領選キャンペーン顧問だったサラ・レイサム氏を広報チームのトップに雇い入れました。
米国では人工妊娠中絶を巡って、反対する宗教保守・キリスト教右派が支持する共和党と、女性の権利として中絶を擁護するリベラルな民主党が激しく対立しています。
フェミニストでハリウッドセレブリティ・アクティビスト、リベラルの旗を振るメーガン妃と、保守反動を代表するトランプ大統領は「犬猿の仲」です。筆者はメーガン妃のファンですが、立憲君主国のロイヤルファミリーが政治や外交の争点になるのは望ましいことではありません。
一方、日本では「令和」の時代になり、天皇、皇后両陛下は初の国賓としてトランプ大統領夫妻を迎えました。通訳を介さずに英語で会話される皇后雅子さまの奥ゆかしさに、「籠の中のプリンセス」と同情していた米紙ニューヨーク・タイムズも「トランプ訪日で皇后雅子さまにスポットライト」と絶賛しました。
トランプ大統領が難しい人であっても、米国は日本にとって不可欠な同盟国です。米国との緊密な関係なしに、中国の軍事的な台頭や北朝鮮の核・ミサイルの脅威に立ち向かうことはできません。その意味で外交官出身の皇后雅子さまは見事に皇室外交の役割を果たされたと言えます。
参考:日米首脳会談 トランプ米大統領に抱きつく安倍首相と、媚びないメーガン妃の違いとは
ファーウェイ5G問題
トランプ政権は西側の同盟国にファーウェイを5Gネットワークから全面排除するよう呼びかけています。電子スパイ同盟「ファイブアイズ」のオーストラリア、ニュージーランドが全面排除を決定し、カナダもそうするとみられています。日米安保を結ぶ日本も追従しました。
しかし、第二次大戦以来、米国との「特別な関係」を誇る英国のテリーザ・メイ首相は国家安全保障会議(NSC)で「アンテナや他の『重要ではない(ノンコア)』インフラストラクチャーのようなネットワークの一部を構築するのをファーウェイが支援することを限定的に認める」方針を伝えたと報じられています。
この決定を英紙に漏らしたとしてギャビン・ウィリアムソン国防相は問答無用で更迭されました。これでは英国は米国の同盟国なのか、中国の“家来”なのか分かりません。
ファーウェイはノーベル賞受賞者を輩出している英名門ケンブリッジ大学から車で20分の村に最先端研究・開発センターと半導体製造センターをつくることを計画しています。そのために事務用品の卸売業者の跡地2.2平方キロメートルを3750万ポンド(約51億3800万円)で購入したと報じられました。
この建設予定地の近くにはソフトバンクグループの孫正義社長が2016年7月に約3.3兆円で買収した英半導体設計大手ARMがあります。
デービッド・キャメロン英首相(当時)は米国の忠告を無視して先進7カ国(G7)の中でいち早く中国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明して流れをつくり、米国を激怒させました。さらには人民元の国際化を後押しし、中国の原発計画参入にゴーサインを出しました。
日立も東芝も英国での原子力事業から撤退し、英国はもはや中国抜きでは近い将来の電力供給もままならない状況に追い込まれています。しかし米中逆転の阻止を最優先課題とするトランプ政権にとってファーウェイ全面排除は絶対に譲れない外交・安全保障政策の柱です。
今回の公式訪問でトランプ大統領が与党・保守党の次期首相にメイ首相の方針を撤回するよう強要するのは必至です。
参考:ファーウェイ5G参入を限定容認、中国にすり寄る英国のメイ首相「新聞に漏らした」と国防相更迭の泥沼
(おわり)