ロシアに挑む日本代表発表。「驚き」なしは「ときめき」もないということなのか
ワールドカップ・メンバー発表に「驚き」も「どよめき」もなかった。
これまで日本代表のワールドカップ・メンバー発表と言えば、三浦知良(98年大会)や中村俊輔(02年大会)の落選、巻誠一郎(06年大会)や大久保嘉人(14年大会)の抜擢など、常に「サプライズ」があったものだが、昨日5月31日に発表されたロシア・ワールドカップ日本代表の最終メンバー23名は、おおよそ予想された通りの結果だった。
(参考記事:「慢性的弱点もそのまま。さほど変わらなかった」西野ジャパン初陣ガーナ戦の問題点を韓国も指摘)
2010年大会からキャプテンを務める長谷部誠(フランクフルト)をはじめ、吉田麻也(サウザンプトン)、長友佑都(ガラタサライ)、川島永嗣(メス)など南アフリカ大会時から主力だった選手たちが選ばれたりし、ハリルホジッチ前監督時代は「当落線上」とされていた本田圭祐(パチューカ)、香川真司(ドルトムント)、岡崎慎司(エバートン)ら“ビッグ・スリー”も結局は選ばれている。
ある意味、ハリルホジッチ前監督が電撃解任された時点で予想できたメンバー構成という印象だ。大会開幕2か月前に指揮官になった西野朗監督には「発掘」も「冒険」もする猶予がなかったと言えるだろう。
その西野監督がメンバー発表時で強調したのは「経験」だ。若さや可能性よりも「経験値と実績」を考慮したという。
実際、経験値と実績は申し分ない。前回ブラジル・ワールドカップ経験者は11名もいるし、欧州でプレーする選手は14名。ワールドカップ経験者の数も、欧州組の数も過去最多だ。ちなみに韓国の予備登録メンバー26名(韓国は6月2日に最終メンバー23名を発表予定)中、ワールドカップ経験者は8名で、欧州組は6名となっている。
(参考記事:サガン鳥栖チョン・スンヒョンも抜擢。韓国がロシアW杯メンバーに「5人追加」した背景とは)
だが、日本の平均年齢は上がった。前回ブラジル大会時は平均26・8歳だったが、今回は平均28・2歳となる。1歳半近く高くなったチームの高齢化は、前回のワールドカップ時の顔ぶれとあまり変わっていないことを示唆する。
この4年間で新陳代謝がなかったわけではない。
前任者のハリルホジッチ監督は24歳の久保裕也(ヘント)、23歳の中島翔也(ポルティモネンセ)と浅野琢磨(シュッツガルト)、21歳の井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)など若手も積極的に起用していた。
が、ベルギーで活躍する久保や、10得点12アシストを記録してポルトガル・リーグの年間ベストイレブンにも輝いた中島は西野監督体制下で初のAマッチとなったガーナ戦メンバーに選ばれず、ガーナ戦メンバーに選ばれた浅野と井出口も結局は最後の最後に落選となってしまった。
限られた時間しかない新指揮官からすれば、若さ特有の勢いや溌剌さよりも、経験という言葉が連想させる「安定」のほうが安心できたのだろう。
その心理は痛いほど理解できる。
96年アトランタ五輪を指揮した経験があるとはいえ、A代表の指揮は初めてで選手時代も経験したことがないワールドカップという大舞台に、2か月の準備期間で挑まなければならないのだから手堅くなるのは当然である。
それに長谷部、川島、長友、本田、岡崎などは3大会連続のワールドカップだ。韓国も2002年時はホン・ミョンボ、ファン・ソンホン、2010年時はパク・チソン、イ・ヨンピョなど3大会連続W杯経験者たちが、チームの支えになった。
だが、経験や実績がそのまま強みと長所になるとは限らない。5月30日のガーナ戦でもそれは証明されている。
出場選手たちの平均年齢が27・5歳の日本は、平均年齢23歳台で主力を欠いた1・5軍のガーナに0-2で敗れた。
新たに試した3バックは機能せず、“ビッグ・スリー”も目立って良いところがあったわけではなく、しかも雨まで降ってスタジアムには言葉では言い表せないマンネリ感が漂っていた。その苛立ちから試合後には客席からブーイングが起き、派手な演出が用意されていた出征式もどこか白けたムードだった。
そんな空気はヤフー・ジャパンが実施しているネット・アンケートにも表れている。
最終メンバー発表直後に行われた「この23人で日本はロシアでどこまで勝ち進めるか」という設問に対して、参加者約2万8800票のうち、89・4%が「予選敗退」としたのだ(5月31日午後7時時点)。ワールドカップ開幕1か月を切った状況で、日本代表への期待値がここまで低いのは初めてだろう。
(参考記事:「展望は暗い」「今更スタイルを戻すと…」西野ジャパンは16強進出できるか。韓国紙が分析)
史上例のない大会直前の監督更迭というギャンブルは支持されず、最終メンバー発表にもどこか閉塞感漂う日本サッカー。果たして、この停滞ムードを本番までに払拭できるだろうか。
「驚き」と「どよめき」もないということは、「夢」も「ときめき」もないということもまた、事実なのだが。
初出:韓国スポーツ新聞『スポーツ・ソウル』(2018年6月1日)