米財務長官人事でホッとしたところにトランプ関税砲
トランプ次期米大統領は、麻薬や不法移民の流入が止まるまで、メキシコとカナダに25%の追加関税を課すと表明した(26日付時事通信)。
フェンタニルの流入が止まるまで中国製品に10%の追加関税を課すとも表明した 。
トランプ氏は大統領選挙中、自身が当選すれば、メキシコと中国が医療用麻薬フェンタニルの米国への流入を阻止するまで、対応措置を講じると述べていた。それを実行に移すということであろう。
カナダについても移民や違法薬物の流入を理由に25%の追加関税を課すようである。
市場では、25日にトランプ次期米大統領が財務長官に投資家のスコット・ベッセント氏を指名したことから米債は大きく買われ、ダウ平均は続伸となり386ドル高で最高値更新していた。
トランプ政権下にあって「まともな」人物が、財務長官になるという安心感からの動きのようだが、そういった淡い期待は早くも裏切られた格好となった。
2023年の貿易統計によると、米国のモノの国別の輸入額でメキシコが中国を抜いて首位となった。3位はカナダ、4位はドイツ、5位は日本となっている。
現在のバイデン政権は、トランプ前政権が発動した3700億ドル(約55兆円)相当の対中制裁関税の大部分を維持している。
中国にはそこからさらに10%の追加関税、メキシコとカナダにも25%の追加関税を課すことになる。
トランプ氏は先の大統領選で、米国への全ての輸入品に10~20%の関税を課す方針を掲げており、日本も例外ではなくなる可能性は当然ある。
輸入品に関税が課せられることで、販売価格が上昇したり、割高な国内製品を買うこととなるなど、これは物価上昇圧力となる。
中期的な財政赤字の縮小を訴えるスコット・ベッセント氏の登用で、トランプ氏の政策による財政悪化は避けられるという安易な見通しもいずれ後退しよう。
仮にベッセント氏とトランプ氏が財政問題で意見を異にした場合、過去の事例からも財務長官が交代させられることも予想される。