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ひろゆき氏「『はい論破』言ったことない」「それってあなたの感想ですよねは1回きり」なぜ誤解広がる?

岡田有花フリーランス記者
ひろゆき氏のX(Twitter)2021年の投稿より

 「はい論破」「それってあなたの感想ですよね」。ネットミームとして始まり、現実社会にもすっかり定着したこの言葉。特に小学生など子ども達の間で流行し、親を困らせているとして議論になることもある。

 「はい論破」は、「2ちゃんねる」創設者の西村博之(ひろゆき)氏が言ったと思われがちだが、実は彼、「一度も言ったことがない」と公言している。

 「それってあなたの感想ですよね」も、ひろゆき氏の名言というイメージが広まっているが、本人は「“一度しか”言っていない」という。

 いったいどこから誤解が生まれたのか。

「はい論破」はテレビがきっかけ? 「8年前」の流行語候補

 この言葉が「流行語大賞」にノミネートされたのはなんと、8年も前の2015年。いまの小学生が生まれる前か、幼児のころだ。その時点でネットミームとしては過去のものに近かったようで、「なぜ今更?」とも言われていた。

 この年にブームになったきっかけは、フジテレビのバラエティ番組「痛快TV スカッとジャパン」だった。番組内のミニドラマのキャラ「イヤミ課長」の定番のセリフとして流行した。

 ネットミームとしては、「2ちゃんねる」の「VIP板」で、2006年(15年以上前だ)に現れた「論破王」というユーザー(コテハン)がきかっけのようだ。VIP板向けのネット辞典「Vikipedia」によると、「『誰でも、どんな内容でも論破する』を掲げ、様々な場所で論破を仕掛け」ていたという。

 一方でひろゆき氏は2018年に「論破力」という書籍も出している他、テレビ番組出演時、議論の際に相手の主張の矛盾点を指摘する姿が印象深いことなどもあり、「『はい論破』はひろゆき氏が言った」というイメージが一人歩きしたと考えられる。

「それってあなたの感想ですよね」も8年前の一度だけ

 「『それってあなたの感想ですよね』は、ひろゆき氏いわく「ニコニコ動画に関してのデマを言われたので、事実ではないと否定する為に『TVタックル』で一回だけ言いました」とのことだ。

 これも放送は2015年。「ビートたけしのTVタックル」の一幕だ。

 ネット動画の“生主”などが犯罪を助長しているという文脈で、「明らかに、動画によって、ユーザーを巻き込む形で、投稿者が快感を得ているので、どんどん増えていると思う」と評論家の古谷経衡氏が主張したのに対して、「それは『明らかに』ではなくて、あなたの感想ですよね」と反論。事実やデータに基づかずに「明らかに」という強い言葉でサービスを批判・否定することに対して、「(明らかではなく)感想である」と反論したというわけだ。

「はい論破」「あなたの感想ですよね」は問題なのか?

 「はい論破」「それってあなたの感想ですよね」。これらのネットミームは確かに、小学生など子供の間で使われており、「最近の子供はこれだから困る」という文脈で紹介されることが多い。

 ただそれが冒頭の記事のように、「生意気な小学生が“増えた”」という文脈で報道されると、筆者は違和感を感じざるを得ない。

 「はい論破」は、昔からの子供の捨て台詞とそんなに変わらない。例えば、「お前のかあちゃんでべそ」とか、「何時何分何秒? 地球が何回回ったとき?」といった言葉と似たようなもので、語彙の少ない子供の反論のバリエーションが“ネット的”になったに過ぎないのではないか。それが捨て台詞ではなく、本当に子供が大人を「論破」できているのであれば、それは成長なのではないか。

 言われた親や教師が「イラッとする」ことには変わりない。だがそれが「現代的な問題」だったり、「マウント小学生が“増えている”」という意見に対しては「それってあなたの感想ですよね?」と反論したくなってしまう。(とはいえ筆者も、「今の小学生と過去の小学生に差は無い」というデータを持ち合わせていないので、自分が観測できる範囲の「感想」でしかないが)。

 データ・事実と感想を分けるべきという考え方に基づいた「それってあなたの感想ですよね」という言葉は、議論・ディベートするに当たっては重要な考え方だ。ひろゆき氏は「どうでもいい感想ではなく、事実ベースで話を進めるのは、教育にとっては良い事だと思うのですが、何がまずいのだろう。。。? 」とかつてXに投稿したことがある。

 「読書感想文」に代表されるように、日本の国語教育では、ロジックや議論よりも「感想」が重視されがちな面がある。だが、子どもたちはこうしたネットミームを通じて、感想だけでなく議論も重要だと学べるのではないだろうか。

フリーランス記者

1978年生まれ。京都大学卒。IT系ニュースサイト記者、Webベンチャーを経て、IT・Web分野を軸に幅広く取材、執筆するフリーランス記者。著書に「ネットで人生、変わりましたか」(ソフトバンククリエイティブ)。

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