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「リリベットの名は女王が事前に了解。ヘンリー王子は閉鎖的な英王室記者クラブに嫌気」側近記者が明かす

木村正人在英国際ジャーナリスト
亀裂が入る前の英ロイヤルファミリー(2017年12月)(写真:REX/アフロ)

夫妻は表現の自由がないと感じていた

[ロンドン発]英王室のヘンリー公爵=王位継承順位6位=とメーガン夫人の王室離脱の内幕を描いた暴露本『自由を求めて ハリーとメーガン 新しいロイヤルファミリーを作る』の共同著者オミッド・スコビー氏が18日、ロンドンの外国人特派員協会(FPA)で記者会見し、離脱を最終的に決断したのはヘンリー公爵だったことを明らかにしました。

ヘンリー公爵とメーガン夫人が英メディア全体を敵に回す中、最も夫妻に近い記者と言われるスコビー氏に筆者は「夫妻はどんな自由を求めようとしているとお考えですか。私には彼らの自由への旅は資本主義に動機づけられているように見えるのですが」と質問してみました。

オミッド・スコビー氏(筆者がスクリーンショット)
オミッド・スコビー氏(筆者がスクリーンショット)

スコビー氏は「本の題名を『自由を探して』としたのはカップルが表現の自由がない、彼らの生活を取り巻くナラティブ(物語)をコントロールする自由がないと感じていたからです。イギリスのメディアに描かれる彼らの姿はほとんど風刺画だと2人は感じていました。だからそれをコントロールする自由がほしかったのです」と即答しました。

「彼らは公になるのを望まない事柄をプライバシーとして保つことを選択する自由を求めたのです。夫妻は公人なので、彼らの言い分には同意しない人がいるかもしれません。ロイヤルファミリーのメンバーがプライバシーを求める権利を有するのか否かについては議論が行われています。しかしプライバシーは基本的な人権だと私は思います」

「私たちが言う自由はそれ以上のものです。自分たちのお金を稼ぐ自由、どのようにお金を消費するか、使うかの自由があります。これからたくさんのお金が夫妻の活動に費やされることになるでしょう」

英王室記者クラブが嫌で、嫌でたまらなかったヘンリー公爵

「王室離脱を発表する前から、ハリー(ヘンリー公爵の愛称)は“ロイヤルロタ(英王室記者クラブ)”という制度が嫌で、嫌でたまりませんでした。彼と彼の妻についてひどく批判的な報道機関を代表する記者が自分たちや自分たちの活動を取材し、報道することを独占していることが気に入りませんでした」

「2人は世界中の他の報道機関にアクセスすることができませんでした。彼らは自分たちの活動を英連邦諸国やアメリカの報道機関、草の根組織に伝えることを望んでいたのです。それについて英王室とハリーの間で議論があった時、ハリーは“もし、そうしたいのなら、自分たちの活動について自分たちで費用を負担する必要がある”と言われたのです」

「自分たちの公務について自分たちで負担しなければならないと。それが引き金になりました。彼らはその時、全く自分たちの稼ぎがなかったので、資金源を探さなければなりませんでした。どのようにして活動資金を作るのか、どのようにすれば正当性を保てるのかについての会話と交渉が始まったのです」

スコビー氏は「主導権を握っていたのはヘンリー公爵です。2年間様子をみる選択肢もありましたが、メーガン夫人にはすべてを諦める決心ができていました。離脱を最終的に決断したのは王位継承順位6位のヘンリー公爵です」と打ち明けました。

不平も言わなければ説明もしないという王室の大ウソ

王族は報道に関して不平も言わなければ説明もしないという鉄則がありました。しかしロイヤルロタに所属する王室担当記者には報道に関する多くの不平や説明が行われているのが現実で、ロイヤルロタを通じて王室の言い分は垂れ流されてきたとスコビー氏は指摘します。この掟からいったん外れてしまうと「反体制」とみなされてしまうのです。

ヘンリー公爵とメーガン夫人は第二子(長女)に「リリベット・ダイアナ」と名付けたことについても一騒動が持ち上がりました。エリザベス女王の愛称「リリベット」を名前の一部に使用したのに、英BBC放送は王室関係者の話として2人がエリザベス女王に事前に相談していなかったと報じました。

スコビー氏は「王族の結婚とベビー誕生はみんなを歓喜させますが、ヘンリー公爵とメーガン夫人にとってはそうではありません。第二子の名前を巡っても論争が起きました。英王室が正式に回答する前に、英メディアは翌日には名前を付けるのに許可を取ったのかと糾弾し始めました。そして異なる情報源からのメッセージは混線していました」と指摘します。

「私が話した英王室関係者によると、ヘンリー公爵とメーガン夫人はエリザベス女王と話し、女王は名前についてとても喜んでおり、支援を表明したそうです。私は夫妻のチームとも話しましたが、ハリーは女王に最初に電話をかけ、娘の名前の一部にリリベットを使う計画を伝えたそうです。女王はとても幸せそうだったという話でした」

「しかしBBCという非常に信頼度が高い報道機関は、夫妻が事前に女王に相談していなかったというニュースを伝えました。普通の家族でも子供の名前をつける前に、本人に名前を使うことを伝えるでしょう。夫妻が礼儀知らずで、女王や王位、国家に敬意を示していないかのように印象づけたい欲求が一部にあるのです」

「私たちはおそらく真実より、英メディアが夫妻をどう思っているか、上級の王族が2人をどう感じているか読まされているのかもしれません。リリベットの誕生はすでにスキャンダラスで論争を巻き起こしています。私は彼らが永遠にプライベートな生活を送るとは思っていません。夫妻は公私を自分たちで選択する権利を求めています」

公開されないリリベットちゃんの写真

リリベットちゃんの写真はSNSで王族には共有されていると報じられているものの、写真はいまだに報道機関に公開されていません。スコビー氏自身、リリベットちゃんの写真をまだ見ていないそうです。ヘンリー公爵とメーガン夫人は世間の憶測が収まった頃合いを見計らって、写真を公開するだろうとの見方を示しました。

ヘンリー公爵とメーガン夫人が友人の米人気司会者オプラ・ウィンフリーさんのインタビューに、生まれてくる長男アーチーちゃんの「肌の色」への懸念が英王室内にあったと告発したことについて、スコビー氏は「王室がこの問題に答えないのは非常に危険だと思います」と強調しました。

「ウィリアム王子は、王族は人種差別的な家族ではないと発言した時でさえ、いかなる形でも人種差別を非難しませんでした。私たちはこれまで王室が人種差別を非難するのを耳にしたことはありません。反人種差別、英王室の歴史、支配階級や王族に無意識のバイアスが存在するのかについて全く言及がありません」

「アーチーちゃんの“肌の色”への懸念が上級王族から示されたか否かが大きな争点になっています。もしその人物が将来の君主ならば、私たちは真実を知る権利があります。英連邦諸国にはさまざまな人種や民族がいます。だからこそ人種問題が大事なのです」

これは王位継承順位1位、2位のチャールズ皇太子、ウィリアム王子と、傍流に追いやられたヘンリー公爵の潜在的な確執がメーガン夫人との結婚、第一子、第二子の誕生で表面化したに過ぎません。直系のチャールズ皇太子、ウィリアム王子、2人を支持する英王室記者クラブとアメリカに移住した夫妻の間に妥協点があるとは筆者には到底、思えません。

(おわり)

参考: メーガン妃とヘンリー王子の暴露本『自由を探して』の衝撃 英王室は人種差別的なのか

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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