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電力需給ひっ迫、大規模停電の危機に備えろ

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
火力発電所 イメージ(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

寒波により、電力需給がかつてないほどにひっ迫している。電力各社の使用率は連日9割を超える異例事態。これほど緊迫した状況が、コロナの報道によりかき消されてしまっている。原発政策への批判を恐れてか政府からの呼びかけも弱い。

全国の需給状況や系統の運用状況の監視を行う電力広域的運営推進機関は、全国的に需給バランスを保つ調整力電源の供給力不足が継続的に発生していることから、電気の安定供給確保に万全を期すため1月6日に非常災害対応本部を立ち上げたと発表した。一般送配電事業者に対する融通指示、発電事業者及び小売電気事業者に対する発電に関する指示、地域間連系線の運用容量拡大などの対応を行っている。

それでも、1月12日現在時点の電力各社の発表によると、電力の供給力に対する需要の割合を示す使用率は関西電力や四国電力で98~99%と、いつ100%を超えてもおかしくない状況。各社が電力を融通し合う危機的な状況が続いている。また、12日付けの日経新聞によると「発電事業者のJパワーが、停止中の石炭火力発電の燃料に重油を使い、14日にも稼働させることがわかった」。石炭火力の主要燃料に重油を使うことは極めて異例な対応だという。

さらに、今後、予想できないのが、緊急事態宣言によるテレワーク移行に伴う家庭での電力使用量の増加だ。今回の緊急事態宣言では、事業所まで閉鎖するような企業は少ないと考えられ、事業所での電力使用量は簡単には減りそうもない。一方、多くの社員がテレワークを行えば家庭での電力使用量は高まる。東京電力パワーグリッド広報担当者によれば「緊急事態宣言によるテレワークで電力がどの程度あがるかは試算できていない」とするが、寒波で厳しい状況が続いてることは確かだと語る。

では、電力使用率が100%を超えればどうなるのか。同広報担当者は「100%を超えないように調整をしている。100%を超えてすぐにブラックアウトということはない」とした上で、考えられることは「周波数が乱れること」とし、それ以上は確かなことが言えないとする。しかし、「不安定になることで停電が起きやすくなるのでは」との質問に対しては否定しなかった。また、電力会社によって設備などは異なるため、電力会社すべてが同じ状況だと言えるわけではないとしている。

一般市民の立場で考えれば、今のうちに大規模な停電に備えておくべきだ。

1つは、暖かさの確保。つまり、電源がなくても使える暖房機器の準備。石油ストーブなどは多めに燃料を確保しておく。都市部で石油が使えない家なら、カセットガスボンベを燃料とするストーブで、電池不要で使用できるものもある(ただし定期的な換気が必要)。当然、防寒グッズも、停電でもすぐに着られるように身近に用意しておきたい。

ガスコンロは必須だ。料理はもちろん、お湯を沸かして湯たんぽなどに入れて使うこともできる。買い占めは控えてもらいたいが、食料も多めに確保しておきたい。

発電機もあれば便利だが、燃焼系については部屋内で使うと一酸化炭素中毒になる。秋田県では、停電中に、発電機を屋内で使用したとみられる60代の夫婦が死亡した。大事なことは二次災害を起こさない、巻き込まれないようにすること。発電機やストーブの燃料を入れる際も、熱が十分冷めてから行うなど、つねに二次災害に気を付けることを忘れてはならない。酒を飲んだら温まるなどと考えていれば大間違いで、凍死の危険もある。ちなみに、凍死による死者数は1000人を超える年も珍しくなく熱中症を上回る。その多くが屋内であることを覚えておいた方がいい。

また、冬季に停電が発生した時は、水道管に巻いた凍結防止帯が機能せず、水道管の凍結が発生してしまう場合も考えられる。停電が発生した際には、台所、洗面所等の水道蛇口を全開にし、水をすべて出し、水道不凍栓のハンドルを閉める「水抜き」をしたほうがよさそうだ。その際も、周辺が暗くなっていると転倒などして怪我をしやすいため、十分な注意が必要だ。そのほか、車のシガーソケットから電気が取れるようにしておくなど、基本的な停電対策はしておきたい。

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https://news.yahoo.co.jp/byline/nakazawakosuke/20200904-00196698/

ITシステムは、突然停電すると、サーバーなどのシステム機器が故障したり、データが破損することが考えられるため、企業もあらかじめ停電を想定して対策を講じておいた方がいい。データのバックアップをしっかりとっておくことや、UPS(無停電電源装置)をつけ停電時に安全にシステムがシャットダウンできるようにしておくこと、社内外の保守担当窓口に対策を聞き連絡が取れるようにしておくこと、確実に非常用発電機が作動するか確認しておくことなど、今できる対策を考えてほしい。

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。国内外500を超えるBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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