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トランプ氏銃撃の容疑者はどのような人物なのか? 欧米メディア報道 トランプ氏暗殺未遂事件

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ氏暗殺未遂事件から一夜が明けた。

 トランプ氏を銃撃したとされているのはトーマス・マシュー・クルックス容疑者(20歳)。IDを所持していなかったことから、DNA分析により容疑者であることが特定された。

 クルックス容疑者はどのような人物だったのか? なぜ、銃撃を犯したのか?

介護施設で働く

クルックス容疑者は「べセルパーク・スキルド・ナーシング・アンド・リハビリテーションセンター」と言う介護施設で、食事士の補助員として働いていた。

 同センターの広報担当者は「トーマス・マシュー・クルックス氏は何の心配もなく職務を遂行し、身元調査も問題がなかったため、彼の関与を知り、衝撃を受け、悲しんでいる。現時点では、警察に全面的に協力している。捜査が進行中のため、詳細についてこれ以上コメントすることはできない。トランプ前大統領とこの悲惨な事件の被害者の方々に、私たちの思いと祈りを捧げる。私たちはあらゆる暴力行為を非難する」と米メディアに対して声明を出している。具体的には、クルックス容疑者は、キッチンで働いたり、介護施設の入居者たちに食事を運ぶ仕事をしたりしていたと報じているメディアもある。

良い成績で歴史に興味

 クルックス容疑者は2022年にべセルパークハイスクールを卒業したが、成績は優秀だったようで、数学と科学の成績で500ドルの賞金(全米数学・科学イニシアチブの”スター賞”の賞金)を獲得している。

 また、歴史にも興味を持っていたようだ。元クラスメートが英BBCに対し、「テストでいつも良い成績を取っていた。歴史にとても熱心だった。政府や歴史に関することなら何でも知っているようだった。いつもナイスだった」と話している。

 米メディアによると、人となりについて、元クラスメートは「ただ物静かだった」「一人でいることが多く、ランチタイムも一人でいた」「変なところはなく、普通だった」などと述べているが、ハンティング・ウェアを身につけて高校に来ていたこともあることから「彼は、ほぼ毎日いじめられていた。のけものにされていた」と指摘する者もいる。

ライフルチームには入れず

 銃にも興味を持っていたようだ。べセルパークハイスクールの元ライフルチームのメンバーは、CBSニュースに対し「クルックスはトライアウト後、ジュニア・バーシティ・チームに入れなかった。その後、トライアウトにも戻って来なかった」と話し、人となりについては「特に人気があるわけではないが、いじめられたりすることはなかった。普通の少年だった。誰の悪口も言わないいい子だった。彼がこんな行動をするとは思わなかった」と話している。

 クルックス容疑者は犯行時、銃や爆破物に関するコンテンツで知られるYouTubeチャンネル「デモリッション・ランチ」のTシャツを着ていたとも報じられている。クルックス容疑者の車や自宅からは爆発物の材料も見つかった。

銃は父親が購入したもの

 クルックス容疑者が銃撃に使用したAR-15タイプの半自動小銃については、クルックス容疑者の父親が合法的に購入したもので、AP通信によると、その銃は、少なくとも6か月前に購入されたものだったという。

 また、CBSニュースによると、警察は、銃撃は事前に計画されていた可能性もあると見ているようだ。

共和党員だが民主党系団体に寄付

 ペンシルベニア州の有権者データベースによると、クルックス容疑者は共和党員として投票登録されているが、CNNによると、2021年1月20日に「プログレッシブ・ターンアウト・プロジェクト」と呼ばれる民主党寄りの政治活動委員会に15ドル寄付していた。

 警察は動機の解明を進めているが、いったい何が、クルックス容疑者に銃を取らせ、ターゲットをトランプ氏に定めさせたのか? 今後の調査動向に注目したい。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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