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日銀は金融政策の正常化を決定、長かった冬がやっと終わる。何がどう変わったのかを解説

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日銀は19日の金融政策決定会合で、金融政策を異常な緩和状態から普通の緩和政策に戻すという、いわゆる正常化を決定した。

 今回の金融政策決定会合の公表文のタイトルが「金融政策の枠組みの見直しについて」となっており、現状維持の際に使われる「当面の金融政策運営について」ではないので、政策の一部修正とかでなく、久しぶりの「金融政策の変更」となる。タイトルが違ったのは2021年3月の決定会合以来。

 今回の政策変更の柱は3つある。

 ひとつは政策金利を日銀当座預金の付利の一部に課せられたマイナス0.1%から、無担保コール翌日物の金利に戻しそれをゼロから0.1%とし、いわゆるマイナス金利を解除して、ゼロ金利政策となる。今後の政策金利は「無担保コール翌日物の金利」となる。

 もうひとつは長期金利コントロールを含めたイールドカーブコントロールを廃止したこと。ただし、これまでと概ね同程度の金額で長期国債の買入れを継続する。また、指値オペも残すようだが、こちらは早く引っ込めてほしい。

 3つめの柱が、長期国債以外の資産の買入れに関してで、ETFおよびJ-REITについて、新規の買入れを終了する。CP等および社債等について、買入れ額を段階的に減額し、1年後をめどに買入れを終了する。国債もいずれ本格的なテーパリングが実施されると予想、いや期待している。

 以上の日銀の決定内容は、事前予想というか、事前の報道通りとなった。

 中村委員と野口委員が反対票を投じ、全員一致ではなくなった。こちらは個人的にその可能性は意識していた。野口委員はリフレ派の意地をみせた格好。反対派の意見に賛成はしないが、多数決で決定されたことを示すものであり、これも歓迎したい。

 また、フォワードガイダンスも「経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する」と中立的な表現となった。

 「当面、緩和的な金融緩和環境が継続すると考えている」との表現については、2000年や2006年のゼロ金利解除の際にも同様の表現が使われていた。2%の物価目標を達成したと本当に認識しているのであれば、政策金利がゼロであることのほうがむしろおかしいため、当然、今後の利上げは視野に入る。

 今回の日銀の決定は、自らハードルを上げて賃金上昇などを加えて、異次元緩和の延命を計ったものの、物価が想定以上の上昇を続け、賃金も同様に上昇し、自ら上げていたハードルを越えてくると予想されたためともいえる。

 ただ、それ以上に政治からの反発が諸々の事情により、大きく後退したことも要因かと思われる。日銀は昨年12月に動く気配をみせたものの、急ブレーキを掛けたのも政治的な配慮との観測もあった。

 今回、個人的に気になったのは金融政策決定会合の途中休憩タイムと思われる時間に、NHKが総裁が議案提示を報じたこと。昔も同様のことがあって、携帯電話の持ち込みなど禁止されたはず。このため、途中経過が報じられたのは意外というか、何がどうなっているのかと。たしかに他社が事前報道合戦をするなか、NHKが今日まで静かだったのも気になるところ。

 何はともあれ、日銀はやっと正常化に舵を切った。

 2012年末の輪転機発言を受けて、2013年4月の異次元緩和、その後の意地源の追加緩和に、2016年にはマイナス金利やらイールドカーブコントロールやらで、雁字搦めの金融緩和を行ってきた。

 2022年には無制限毎営業日連続の指値オペという究極のオペを実施し、市場との対立姿勢を強め、10年国債の発行額以上を買いあげるというとんでもないことまでしてきたのである。

 その日銀がやっと普通の緩和に戻してきた。債券市場にとっては長い冬の時代から、やっと春の兆しもみえてきたような気がする。そういえば、明日は春分の日。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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