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リーグワンの痛快で残酷な現実。&ディビジョン1第7節ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
頂上決戦で活躍の稲垣(写真は第2節)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 リーグワン・デイビジョン1の第7節では、前年度のトップリーグのファイナリスト同士、4強同士のカードが各地であった。いずれも小さな差が大きな点差に変わった内容だった。

 特にディフェンディングチャンピオンのワイルドナイツは、防御を破られかけた後の補正が素早かった。攻めが得意なサンゴリアスは序盤こそ17得点も、次第に向こうの接点での圧、組織だった防御を前に手詰まりの状態となった(34-17)。

 接点への圧が際立ったのは、昨季初のベスト4入りを果たしたスピアーズも同じだ。

 孤立しがちだった相手走者にジャッカルプレーヤーが果敢に絡む。取られたトライはモール、被インターセプトによるもので、組織的に崩されてゴールラインを割られることは皆無だった(41-20)。

 来る第8節でも、細部から目が離せない。

 サンゴリアスは5日夜、久々の実戦復帰となるスティーラーズとぶつかる。攻撃が得意なもの同士のバトルにおいて、ワイルドナイツ戦のレビューを活かしにかかる。ボール保持者のタックルされた後の身体の向き、接点への素早いサポートを意識するか。

 スクラムハーフの流大は言う。

「速いテンポでやりたい。ボールキャリアが横になったら確実にスローダウンさせられている。ブレイクダウン(接点)の質を高めたいです」

 流が話したサンゴリアスの検討課題は、いわばラグビーにおける基本項目だ。

 基本項目には他に、倒れた後の起き上がり、素早いポジショニング、攻めるべきスペースの共有、相手の接点に働きかけるか否かの判断などが挙げられそう。いずれも言葉にすれば容易だが、その遂行度合いはクラブによって異なる。

 そして、この細部の動きの質は、いわゆる「チーム力」とほぼイコールで結ばれそう。「才能」を集めればクリアできる項目でないのは、今季のここまでの戦いが時に痛快に、時に残酷に証明している。

<ディビジョン1 第7節 私的ベストフィフティーン>

1、稲垣啓太(ワイルドナイツ)…点差で競っていた試合序盤、防御の壁にクラッシュしてはゲインラインを押し上げる。守ってはサンゴリアスの反則を誘うジャッカルを披露。

2、坂手淳史(ワイルドナイツ)…強烈なタックルで相手のパス回しを乱す。

3、竹内柊平(シャイニングアークス)…ブレイブルーパスに22-21で勝利。スクラムで優勢に立ち、接点でも圧をかけた。

4、サウマキ アマナキ(イーグルス)…ブラックラムズ戦で好突進、モールの推進役を見なった。

5、トゥパ フィナウ(スピアーズ)…スピアーズのフランカーとして出場。自陣の深い。置で相手走者を捕まえた直後に、球を出すスクラムハーフへ圧をかけたり、終盤のラインアウトからのモールで、防御を切り裂く役目を担ったり。試合の焦点となるフィジカルバトルで渋く光った。

6、ベン・ガンター(ワイルドナイツ)…チーム初トライを挙げただけでなく、再三のジャッカルで攻守逆転、ペナルティーキック獲得を決めた。

7、古川聖人(ヴェルブリッツ)…スピアーズに攻め立てられるなか、地上戦で身体を張り、スピアーズの波状攻撃を何とか鈍らせた。特に後半10分ごろのターンオーバーは見事。

8、アマナキ・レレイ・マフィ(イーグルス)…球を持てば防御を蹴散らし前進。陣地を問わず攻めるチームに勢いをもたらした。

9、谷口和洋(スピアーズ)…味方の快走を引き出すパスワーク。サポートからのトライ。

10、田村優(イーグルス)…自陣からも果敢に攻め、防御が前に出ればその背後にキック。柔軟なゲームコントロールで、ブラックラムズを30-12で制した。

11、根塚洸雅(スピアーズ)…スペースを切り裂く走りが、チームの攻めの連動性を生んだ。後半27分には、スタンドオフのバーナード・フォーリーが左大外のスペースに蹴った球を追いかけて捕球。加速しながらパスをつなぎ、試合を決定づけるトライをおぜん立てした。

12、本郷泰司(シャイニングアークス)…要所でのジャッカル、トライを演出するオフロードパス。

13、サム・ケレビ(サンゴリアス)…組織対組織の構図で後手を踏んだワイルドナイツ戦で、この人は問答無用の個の力で突破を重ねた。対するディラン・ライリーとのマッチアップは入場料の価値を高めた。

14、マリカ・コロインベテ(ワイルドナイツ)…勝負所でのビッグランで得点を重ねた。防御も堅実。

15、トム ・マーシャル(グリーンロケッツ)…27-34と惜敗も随所に妙技を披露。ルーズボールを後方からカバーして即座にチャンスを作ったり、防御を引き付けてスペースへパスを放ったり。対するブルーレヴズの奥村翔も、終盤にイエローカードをもらうも、鋭いランとトライセーブタックルで魅した。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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