甲子園出場の岡山学芸館、来春に通信制を新設へ~「通信制のイメージ変えたい」思いとは
◆岡山学芸館高校は文武両道
本日の第3試合で聖カタリナ高校と戦う岡山学芸館高校は夏の甲子園には5年ぶり3度目の出場となります。
野球以外でもサッカー部(2023年・全国高等学校サッカー選手権大会で優勝)、女子テニス部、吹奏楽部なども全国大会に出場しています。
進学実績も地元の岡山大学の他、東京大学を含め国公立大学合格者が2024年は167人と高いものでした。
文武両道の岡山学芸館高校が来春、通信制課程となるフレックスVコースを新設する予定です(設置認可申請中)。
◆「通信制のイメージを変えたい」
設置の狙いについて、小笠原健二・副校長は「通信制のイメージを変えたい」と話します。
※以下、コメント部分は小笠原副校長
東京や大阪では通信制課程に通学することで道が拓けた、ポジティブな子が増えています。
一方、この岡山を含む地方では、まだまだ「通信制?不登校児が行くところでしょ」などのネガティブなイメージがまだ色濃く残っています。
本学が通信制課程を開設することでこのネガティブなイメージを変えたい、という思いがあります。
◆通学型とオンライン型、両方あり
岡山学芸館高校が開設する予定の通信制課程は学習スタイルが3種類あります。具体的には、通学型が週5スタイル、週3スタイルの2種類、それとオンラインスタイル(ネット型)です。学習スタイルの変更は入学後も可能です。
小笠原副校長は「全日制も通信制も同じ高校生で単位のとり方や学び方が異なるだけ」と話します。
本学は今後も全日制を維持していくことには変わりありません。しかし、全日制のスタイルには合わない生徒が増えています。
同じ不登校児でもその方向性は人それぞれです。
学校には全く通えないという子もいますし、ちょっとは通えるという子もいます。部活動をやってみたい、という子もいます。
本学が開設を目指す通信制課程は全日制とは学び方が違うだけで基本は同じです。
これはコロナ禍以降、オンラインの使い方が変化する中で教育も同じでしょう。
Zoomを利用した双方向型の授業や、AIを使った個別最適な学習などが登場しています。こうしたオンラインによる教育を通信制課程では積極的に取り入れていきます。
◆個人競技は通信制を選択か
スポーツの強豪校なので、今後はスポーツについては通信制に集約していくのか、気になるところです。
これについて、小笠原副校長は「全日制と通信制を併設している場合、野球などは全日制で個人競技は通信制と分かれていくのではないか」と話します。
インターハイなどは全日制のみ、という制限があります。それから、全日制と通信制の混合チームは認めない大会もあります。
そのため、本学の場合だと、野球やサッカー、バスケットボールなどの集団競技で、インターハイや甲子園、ウィンターカップなどの目指す大会がある部活動は今後も全日制が基本となるでしょう。
一方、個人競技のスポーツだと通信制を選択する中学生が多くなる、と考えています。
本学の卒業生に元フィギュアスケート選手の小松原美里さん(2022年北京五輪・銀メダリスト)がいます。
在学中から全国大会や海外の大会にも出場していました。もちろん、当時は全日制のみなのですが、授業の出席日数や試験などは相当大変だったようです。
しかし、通信制課程ができると、小松原さんのような個人競技の選手はスポーツと学業について、全日制よりも無理なく両立させることが可能となります。
◆「スタート地点がバラバラでもサポートしたい」
小笠原副校長は、通信制で不登校児以外に受け入れたい中学生として起立性調整障害、外国にルーツを持つ方、スポーツ特化志望の3タイプを挙げています。
不登校児の方以外に受け入れたい中学生のタイプとしては3タイプあります。
まずは、スポーツなどに特化したい方。
スポーツ以外でも何か一つのことに打ち込みたい、そのためには通信制だと時間の使い方の自由度合が高い、と考える方です。
次が起立性調整障害の方です。
起立性調整障害とは自律神経の障害の一種であり、10代に多いと言われています。
朝、頭痛がひどいなどの症状があります。それが午後になると収まるので事情を知らない大人からすれば「怠けているだけ」「単に夜更かししているだけではないか」などと本人を責めがちです。しかし、近年では循環器系の障害の一種として認知されるようになりました。ただ、全日制では起立性調整障害の生徒を十分にサポートできないのが現状です。
その点、通信だと、十分にサポートすることが可能です。
最後に外国にルーツを持つ方も是非、入学を検討して欲しいと考えています。
外国にルーツを持つ方だと、日本語教育が不十分なまま、進級・進学してしまう方が多くいます。本学の通信制課程だと、日本語指導のレッスンを設けるなど、サポートできます。
まとめますと、中学校時代は何かにつまづいた、あるいは、人より先に行きたいなど、スタート地点はバラバラです。
本学の通信制課程では、スタート地点がバラバラでも構いません。その分、一人ひとりのペースや成長スピードに合わせた教育が可能なのが通信制だと思います。
そして、通信制課程を選んだ生徒が、自分の望む進路実現が出来ていけば、地方でも積極的に通信制を選ぶ生徒が増えてくると思います。更に通信制へのイメージも変わっていくのではないでしょうか。