10年間で生じる平日夜間の大きな「テレビ離れ」の現実…テレビ視聴動向の10年間での変化
テレビ(放送によって提供される番組)は老若男女を問わず昔から愛されている存在。しかし昨今ではテレビ利用時間が減っているとの指摘がある。その実情をNHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の結果を基に、日常生活におけるテレビの視聴動向、具体的にはもっとも多くの人が身近さを感じるであろう平日の夜間における行為者率の変化から確認する。
平日夜間のテレビ(番組視聴)平均行為者率は、高齢者が早めの時間帯で高い値を示すが就寝も早いため、夜間になると中年層と値が入れ替わる動きを示している。
「国民生活時間調査」は5年ごとに調査が実施されている。直近分は2020年分だが、その10年前となる2010年分も各種データを取得することができる。そこで2010年分に関して同じ状況を確認し、同一の縦軸の区分でグラフを作成する。10年前の平日夜間における、テレビの視聴実情を知ることができる。
2020年の10年前となる2010年といえばスマートフォンは普及し始めたばかりで、多くは従来型携帯電話を利用していた時代。平日夜間の娯楽はテレビが絶対王政の長的な存在で、若年層における値が直近2020年と比べると随分と高かったのが分かる。
とはいえ両年のグラフを見比べるのは少々難儀する。そこで2010年から2020年の各属性の値を比較し、その推移を同様にグラフとして書き起こしたのが次の図。マイナス値が大きいほど、10年間でテレビ離れが進んだことを意味する。
男女で縦軸の区分を統一しているが、プラスが10%までなのに対しマイナスが30%まで存在していることからも分かる通り、全般的にはテレビの平均行為者率は減少の動きを示している。そして男性だが、おおよそ10代と30~50代は早い時間帯から、20代と60代以降は食事後で大きく減っている。元々この時間帯のテレビ行為者率が高く、削られうる値が大きいのも一因だが、リラックスのためのツールとしてのテレビの存在が、そのポジションを削られてしまっていることがうかがえる。高齢層でも値こそマイナス10%内外と低めだが食事の時間と思われる時間帯を中心に減少しており、プラスを示しているのは食事前と就寝前の時間帯のみ(高齢者の食事後の時間に関しては、元々昔から就寝時間が早くテレビをあまり見ていないので平均行為者率が低いことから、減少しにくいという理由もある)。
女性も傾向としてはさほど変わりはないが、10代の減少幅が男性よりも大きいことや、高齢層でも減少の動きにあることが確認できる。60代が食事後でもほぼ減少したままなのは注目に値する。
今回確認したのはわずか10年の間の変化ではあるが、それでも平日夜間における「テレビ離れ」の実情が確認できたのは興味深い。
一部には録画再生の番組を見るスタイルにシフトした可能性はあるが、少なくともリアルタイムでのテレビ番組の視聴は、平日夜間の時間帯において「何より一番」から「数ある選択肢の一つ」へと、その立ち位置を変えつつあるに違いない。
※2021.07.05.20:35 「夜間のテレビの平均行為者率(平日、女性、2010年との差、年齢階層別、ppt)(2020年)」のグラフを正しいものに差し替えました。御迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
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※2020年国民生活時間調査
住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。
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