ジャズは立って聴きなさい?
1960年代、ジャズは学生などの反体制運動の象徴のように思われていたそうです。だから、ジャズなんか聴くのは「ろくなもんじゃねえ!」と言われたんだとか。
ところが、1980年代のバブル景気のころになると、ジャズはオシャレな音楽と呼ばれるようになりました。BGMにジャズが流れているだけで、そこはトレンディなスポットってことになっちゃうから、不思議なものです。
と、こんなことを書き始めたのも、この記事が目に留まったから。
●2000枚超のLPレコード ジャズにも酔う角打ちファン伝説の店|NEWSポストセブン
昭和16(1941)年創業という大分の酒屋さん。その一角には、買ったお酒をその場で飲めるスペースが設置されています。おしゃれな言い方だと「イートイン」(飲み客だからドリンクインかな?)ですが、酒屋さんでこういうスペースがあるのはわりと一般的でした。お酒を量り売りしていたころ、店先で1杯単位で供してくれるようすは、江戸時代後期(1800年代前半)の江戸市民の暮らしぶりを写しとった『江戸名所図会』「鎌倉町豊島屋酒店白酒を商うの図」などにも見ることができる、いわば日本の”飲み助の伝統”と呼べるもの。
ところがこの大分の「御手洗(みたらい)酒店」がユニークなのは、2000枚超のジャズやクラシックのLPが詰まった棚が据え付けられ、オーディオの名機やピアノまでが並んでいるスペースであるということ。
そう、それはまるで”ジャズ喫茶”のような立ち飲み店なのだそうです。
立ち飲み店のことを”角打ち”と言います。北部九州地方で言われていたものが広まったとされていますが、まさにこの「御手洗酒店」のような店を言っていたのでしょう。一説に、升で供される酒を飲み干し、お代わりを要求するときにカウンターやテーブル(代わりにしていた台など)をコンコンと叩いて、店の人に知らせたことから、そう言われるようになったとか。
ぜひ取材をさせていただきたいですね。
ところで、”お酒をコンコン”で思い出したのがこの映像。
♪1974 Suntory Whisky,'Sammy Davis Jr ad libs' cinema
サミー・デイヴィスJr.は、1950年代に注目を集め、歌にタップにモノマネと多彩な芸を披露してアメリカのトップ・エンタテイナーの座に上り詰めました。
この映像は、1973年に日本で放映されていたTVコマーシャルのもので、いくつかのパターンを収録していますが、そのなかでもとくにこのヴァージョンは彼のアドリブだけで1分間を演じたものだと言われています。
酒瓶を前に、グラスに注ぐだけで”ジャズになっている”のは、やはり世界が認めたエンタテイナーゆえですね。
「これだけじゃ、歌手としての実力はよくわからないよ~」と言われると、そうですね。では、こちらもどうぞ。
♪NAT KING COLE & SAMMY DAVIS JR
ジャズ・ヴォーカルを代表するシンガー、ナット・キング・コールとの豪華な共演。素直に譜面どおり歌わないのがサミーの魅力でもあるのですが、それがまた”ジャズが流れている空気”を彩ってくれることが伝わってきますね。