また値上げされるたばこ 「たばこ」の税と価格の推移を振り返る
2021年10月のたばこ税増税に伴い、日本たばこ産業(JT)はたばこ値上げを財務省に申請した(【セブンスターは600円、JTが173銘柄の値上げ申請…たばこ増税に合わせ】)。値上げは昨年2020年10月以来1年ぶりで、主力の「メビウス」(20本入り)は540円から580円になる。しばしばたばこ税の増税によって値上げされる雰囲気のあるたばこだか、実際にはどの程度のたばこ税が課せられているのだろうか。JTの統合報告書を基に、過去から現在におけるたばこ税の推移を確認し現状を整理する。
たばこにはたばこ税(国税)、たばこ税(地方税)、たばこ特別税(国税)からなる複数の税、そして消費税が課せられている。たばこ税の一部銘柄への軽減措置は段階的に縮小・廃止され、それに伴う形で値上げが漸次行われている。またたばこ税の引き上げや消費税率の引き上げに伴う値上げ、さらにはJTの収益基盤の強化との名目による値上げも実施されている。
最新の統合報告書には1985年以降のたばこ税の推移が記載されている。そこでたばこ1本あたりの従量税推移データをレポートから抽出し、まとめたのが次のグラフ(たばこ税は税率ではなく1本あたりの額によるもの)。今件グラフは時期(横軸)の区分については、等期間の間隔ではなく、何らかの事象に併せての区分(税額の変更など)となっていることに留意する必要がある。
現時点では2020年10月のたばこ税引き上げが最後の税額改正のため、それが最新のデータとしてグラフに収まっている。1989年4月の消費税導入、1997年4月・2014年4月・2019年10月の消費税率引き上げはたばこ税ではないため、今グラフには反映されていない。
それではこの税負担で、購入者はたばこ1箱でどの程度の税額を納めていることになるのか。それを算出したのが次のグラフ。オーソドックスな銘柄のメビウス(マイルドセブン)(マイルドセブンは2013年2月以降メビウスに名称が変更されている)を例に挙げ、1つ目は「販売価格の何%が税金に該当するのか」、2つ目は「販売価格と、税負担部分・それ以外の部分の金額」の図になる。なおこのグラフではたばこ税負担ではなく税負担で計算していることから、各種たばこ税以外に消費税も加算している。
1989年4月に消費税が導入され、1997年4月・2014年4月・2019年10月に消費税率の税率アップが実施、そして2016年4月に行われたJTの収益基盤強化目的の値上げをのぞけば、いずれもたばこに直結する税率・税制の変更に伴う負担率の変移が示されている。一時期をのぞけば税負担率は漸増、そしてそれに伴い税負担額・価格も増加している。
2020年10月時点ではメビウス1箱を吸うと、そのうち334円は税金な次第である。ひと箱20本入りならば12本強は丸ごと税金。
なお2つ目のグラフにおいて税以外の部分がすべてJT側の利益ではないので注意が必要。販売店のマージンがあり(10.00%)、残りがJTの売上となる。
そして「JT取り分」から人件費、材料費など多種多様な経費がのぞかれ、はじめて利益(場合によっては損失)が算出される。「税金が取られるとの話だが、それでもメビウス1箱で約152円もの『利益』が得られる」とする誤解釈による意見がしばしば寄せられる。そこであらかじめ言及しておくことにした。「売上」と「利益」は別物であることに、十分注意してほしい。
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