闇に消える女囚たち…北朝鮮製「かつら」に隠された秘密
韓国の聯合ニュースは21日、今年上半期(1~6月)に北朝鮮製のかつらとつけまつげの中国への輸出が急増し、北朝鮮の輸出品目1位に浮上したと報じた。
聯合が中国税関総署の資料に基づいて伝えたところによると、上半期の北朝鮮製かつら・つけまつげの中国への輸出額は7636万7516ドル(約107億円)で、前年同期に比べ188倍に増加したという。これは上半期の北朝鮮の対中輸出額(1億3500万ドル)の56.6%を占める数字だ。
北朝鮮は元来、石炭や鉄鉱石、水産物などを中国への主力輸出品目としてきたが、これらは国連安全保障理事会の制裁決議で取引が禁じられている。現在も「瀬取り」などによる制裁破りで輸出が続いている部分はあるが、貿易統計には載っていない。
一方、制裁対象でない、つけまつげやかつらの加工・輸出は以前から行われてきたが、生産の相当部分を担っているのは教化所(刑務所)の女性収監者たちだ。以前は一般工場の生産量が多かったのだが、1年半ほど前から教化所のノルマが大幅に増やされたと、デイリーNK内部情報筋が伝えている。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
ノルマが増やされたのは2021年12月頃だという。平安南道(ピョンアンナムド)价川(ケチョン)市の1号教化所、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)市の3号教化所など、国内の一部の教化所では、つけまつげやかつらの製造以外にも、ニット、金属製品、家具、靴、その他衣類の製造も行っている。
これらの製品は、教化所だけで作られているわけではなく、一般労働者を雇った企業でも大々的に生産されていた。しかし2020年1月、新型コロナウイルスの流入防止のため国境が閉鎖されて以降、中国からの原材料の輸入と、中国への完成品の輸出ができなくなった。そのため多くの工場で従業員を大幅に減らすなどの措置を取ったが、結局は廃業せざるを得なくなった。
北朝鮮でも最近になってゼロコロナ政策が緩和され、貿易も一部再開されるようになったが、一般の工場が活力を取り戻すまでにはなっていない。それで、教化所への発注が激増しているものと見られる。
さらに背景を述べると、北朝鮮は外貨獲得ルートを国家が独占する目的からか、輸出入を当局が独占しようと試みている。
また、つけまつげなどの軽工業製品ならば囚人にも作れるし、人権のない囚人はいくらでも酷使できる。教化所内では、看守による暴力・虐待や各種の犯罪が横行しており、重労働や栄養失調で死亡しても遺体は教化所内で焼却処分され、遺骨は裏山などに捨てられてしまう。遺族が死因などをたずねても、真相は闇から闇へ葬られるのだ。