ベイルート爆発現場 民間最高レベルの地球観測衛星画像を支援向けに公開
2020年8月4日、レバノンの首都ベイルートの港湾地区で発生した大規模爆発の現場について、災害対応のための衛星画像公開が相次いでいる。
137名以上の死者、5000名以上の負傷者が出た現地では、地上からの撮影、行方不明者捜索が行われており、ドローン撮影なども行われている。加えて衛星画像ならば爆発後の現地の様子を、地上のカメラよりも広範囲に、かつ安全に把握することができる。
民間の地球観測衛星では最も高精細なWorldView-3(ワールドビュー3)を運用する米Maxar Technologies(マクサー・テクノロジーズ)は、8月5日に現地支援のための情報提供プログラムを開始した。解像度31センチメートル級の商用衛星画像を無償で公開し、赤十字などの支援機関が現地の状況把握や災害支援計画作成などに利用できるようにする。
マクサーによる「OPEN DATA PROGRAM」は、これまで2020年頭のオーストラリアの森林火災や、途上国の新型コロナウイルス感染状況など、災害発生時に衛星画像を提供してきたプログラムだ。ベイルートの爆発事故は「Beirut Explosion」と名付けられ、これまでに事故発生前(Pre Event)6月9日と7月31日、事故後(Post Event)2020年8月5日に撮影された画像が公開されている。
衛星画像は、画像に地理情報を付加されたGeoTIFF形式で配布されている。地理空間ソフトで読み込めば、地図との重ね合わせや距離、面積の測定などが可能だ。画像はクリエイティブ・コモンズ4.0の非商用ライセンスで公開されている。
衛星画像が示す爆発事故現場
マクサーは、オープンデータプログラムで公開しているベイルートの事故現場の観測画像から、特徴的な被害の部分を抽出した画像をメディア向けに公表した。
画像は地球観測衛星ワールドビュー2(解像度46センチメートル)とワールドビュー3(解像度31センチメートル)の2機が8月5日に撮影したもの。爆発の原因となった硝酸アンモニウムが保管されていた倉庫の対岸で、客船オリエント・クイーン号が横倒しになる様子、事故現場から900メートルほど離れた場所でビルのガラス窓とみられる破片が大量に落下している様子などが映し出されている。
事故前と事故後の爆発現場
6月9日にワールドビュー3が撮影した事故前のベイルート港(上)と8月5日にワールドビュー2が撮影した事故現場(下)
横倒しになった客船
7月31日にワールドビュー2が撮影した、事故現場対岸に停泊中の客船オリエント・クイーン号(上)と8月5日にワールドビュー2が撮影したオリエント・クイーン号。
市街地の被害
8月5日のワールドビュー3画像から。全壊した倉庫街と住居棟(上)と、爆発現場から900メートルほど離れたビルの足元にガラスと見られる破片が溜まっている様子(下)。