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【JAZZ】かれいどすけーぷ“Special”with Junky Funk@目黒BAJ

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、かれいどすけーぷの東奔北走ツアーファイナル。

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かれいどすけーぷ“Special”with Junky Funk
かれいどすけーぷ“Special”with Junky Funk

かれいどすけーぷは、ヴォーカルの前田祐希とマルチインストゥルメンタリストの松井秋彦によるデュオ・ユニット。

前田祐希はクラシックでの活動歴をもった異色のジャズ・ヴォーカリスト。オペラ・ヴォイスによるジャズへの切り込みで独自の見解を示し、徐々に帯域を低くしながら、持ち前の形にとらわれないアプローチでジャズの既成概念を打ち壊していくアヴァンギャルドなミュージシャンだ。

松井秋彦は、ポピュラー音楽の礎を築いたバークリー音楽大学に学びながら対極のアンチ・ポピュラリティなアプローチのなかでインプロヴィゼーションに拠らない構築性をめざすという、フリー・ジャズから限りなく遠いフリーなジャズを具現しようとしている作曲家&パフォーマー。彼が名乗るマルチインストゥルメンタリストとは、ピアノ、ギター、ベース、ドラムを特化することなく弾きこなし、あるときはいくつかの楽器を同時に弾いてしまうという離れ業を身につけていることを意味している。

対極の2人が組んだ近くて遠いデュオ

磁石のプラス極とマイナス極のような2人がデュオを組むきっかけは、松井のユニークな楽曲に興味をもって挑戦する機会が増えていた前田が、秘境の温泉でのライヴのオファーを松井にもちかけたことに始まるという。

初期はかれいどすこーぷと名乗っていたこのバンド、エレクトリックで近未来的なサウンドを指向していた松井のCPJコンセプトのなかでは異色とも言えるアコースティックでほのぼのとしたサウンドが特徴だった。2006年にはファースト・アルバムをリリースして“CPJの異端児”としてのポジショニングを明確にすると、さらに先鋭化させた2013年には名前をかれいどすけーぷと変えて、セカンド・アルバム『めくるめく光彩のうつろい』をリリースし、さらに分裂症的なマルチ・ジャンルのアプローチへと踏み込んでいる。

スペシャル編成で飾る2015年上半期の締め括り

2015年、かれいどすけーぷは“東奔北走”と題して、5月の横浜を皮切りに東北・北関東・甲信・東海を回るツアーを敢行。

そしてこの日、目黒に戻ってツアーファイナルを迎える。東京公演はかれいどすけーぷの2人にCPJの枢軸的な存在であるJunky Funkから岡田治郎と嶋村一徳が参戦する予定だ。

この4名でのライヴは昨年初夏にも行なわれたが、今年はプログラムも一新してさらに個性を炸裂させた内容になるもよう。

4つの異なる磁極が集合することによって、“反発”ではなく“距離を保った融合”を可能にしようとするのがかれいどすけーぷプロジェクトではないだろうか。その見えない音楽的磁場が発生している“距離感”を、生でじんわりと実感したい。

では、行ってきます!

●公演概要

7月9日(木) 開場18:00/開演19:30

会場:Blues Alley Japan(ブルース・アレイ・ジャパン)(目黒)

出演:前田祐希(ヴォーカル)、松井秋彦(ピアノ、ギター)、岡田治郎(ベース)、嶋村一徳(ドラム)

♪Summertime by Kaleidoscape on Junky Funk @ JZ Brat

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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