日銀はブレーキなしの緩和策を続けて大丈夫なのか
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日銀の黒田総裁は11日の日銀支店長会議の挨拶で「物価」について下記のような発言をしたようである。
「先行きについては、当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想される。この間、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる。」
原油や天然ガス、石炭などの世界的な価格上昇によって、日本でも当面はエネルギー価格が大幅に上昇していくことが予想される。
エネルギー価格だけでなく、原材料コストも大きく上昇することが予想され、ロシアによるウクライナ侵攻によってそれが加速される懸念も出てきている。
これによって企業物価指数が前年比10%近くまで上昇しているが、原材料コスト上昇の価格転嫁も今後は進むことが予想される。すでに値上げの動きが広まっていることも事実である。
携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想されるとしているが、この「はっきりと」というのは2%超えを指しているように思われる。
ただし、これらはコストプッシュによる物価上昇が意識されるが、これとともに「この間、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる」としている。
問題は物価上昇とともに賃金が上がるのかという点であるが、物価上昇の勢いが強い半面、賃金上昇はなかなか強まらず、個人消費などへ影響も危惧されることはたしかではある。
しかし、物価そのものに上昇圧力が加わっていることもたしかである。そのなかにあって、異常な金融緩和策をそのまま続けるということはどういう結果を招くのか。これは日米金利差などを通じた円安なども加わって、物価上昇を加速させかねない。
今回の挨拶文の最後のほうに「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」とある。
中央銀行の金融政策は片道切符ではない。必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとともに、必要があれば、躊躇なく正常化に向けて舵を切るとの表現があってしかるべき。
そもそも「わが国の景気は、新型コロナウイルス感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している」と判断しており、経済は正常化しているのにどうして異常な緩和策を続け、その緩和策のブレーキを解除したままなのか。
「ウクライナ情勢が、国際金融資本市場や資源価格、海外経済の動向等を通じて、わが国の経済・物価に及ぼす影響についてもきわめて不確実性が高い」こともたしかではあるが、だから追加緩和しか手段がないというのは絶対におかしい。