【広島市】大晦日に除夜の鐘を鳴らしに行かない?西福寺の魅力
こんにちは、Webライターのなおゆきです。今回は、広島市安佐北区白木町にある「西福寺」を取材してきました。このお寺では、大晦日に一般の方でも除夜の鐘を鳴らせるそうです。そんな西福寺の魅力を、みなさんにお届けします。
西福寺へと向かう
今回私が訪れたのは、安佐北区白木町三田の静かな町並みに佇む「西福寺」。周囲にはスーパーマーケットのショージやホームセンターのコメリがあります。
白木街道のそば流れる三篠川に架かる小さな橋を渡り、芸備線の線路を越え、さらに奥へと進むと目の前に現れるのは石の階段。その階段を一段一段登ると、西福寺の荘厳な門が姿を現します。
門をくぐり境内に足を踏み入れると、視界いっぱいに広がるのは、大きな屋根が印象的な本堂。その堂々たる佇まいとスケール感には、思わず「すごい……!」と声が漏れてしまうほど。
西福寺は浄土真宗本願寺派に属するお寺。浄土真宗本願寺派(じょうどしんしゅうほんがんじは)は、浄土真宗の中でも特に大きな分派で、日本全国に広がる宗派の一つです。
その教えは阿弥陀如来への信仰を中心に、極楽浄土への生まれ変わりを願うもの。この西福寺でも、多くの人々が仏の教えを学び、心の拠り所にされています。
しばらく境内を歩いていると、西福寺の住職・福永さんが穏やかな笑顔で迎えてくださいました。「ようこそお越しくださいました。今日は寒いので本堂の中へどうぞ」温かい声に誘われ、本堂へと足を運びます。
広々とした本堂の中に入ると、まず目を引くのは須弥壇に安置された阿弥陀さま(阿弥陀如来像)。静かな空気の中で手を合わせると、自然と気持ちが整っていくのを感じます。
【対談】西福寺・福永住職と語る、お寺の魅力と除夜の鐘
これまであまりお寺が身近な存在とは感じられなかった私。今回の取材では住職の福永さんと直接お話を伺う機会を得ました。
なおゆき:お寺というとすごく歴史のある建物という印象ですが、西福寺の創建はいつ頃になりますか?
福永住職:1551年からなので、473年になりますね。
なおゆき:すごい!それはとても長い歴史ですね。「西福寺」というお名前に由来はあるのでしょうか?
福永住職:残念ながら由来は明確にはわかっていません。ただし、「西」という漢字は多くのお寺で使われています。西方浄土、つまり夕日が沈む方向を指していて、人生における終わりの方向を象徴していると考えられています。また、「福」や「善」も多くの寺名に見られますね。
なおゆき:人生と結びつけると、お寺の名前にも深みが出てきますね。ちなみに、西福寺には年間どのくらいの方が訪れるのですか?
福永住職:年に4回の法座のときに30〜40人ほど集まります。さらに、月2回の太鼓教室には15〜20人、写経の会には約60人がいらっしゃいます。ざっと年間700人ほどが訪れますね。
なおゆき:行事もいろいろ行っていらっしゃるんですね。とはいえ、広島ではお寺の存続もいろいろな背景がありそうです。
福永住職:他のお寺と比べると、行事はそこまで多くないかもしれませんね。ただ、私が住職として来るまでに40年ほど無住の期間がありました。その間にも通いのお坊さんがが熱心に立て直しをしてくださったおかげで、私が住職になる時には本堂も直っていました。広島はお寺を大切にする気質があり、それも助けになっていますね。
なおゆき:そんな歴史的背景があったとは。ところで福永さんの普段の一日はどんな感じなんですか?
福永住職:朝はおつとめをして、それから犬の散歩をし、掃除やお参り、行事の準備などを行っています。あとは、人が亡くなられたときにはすぐに行かなければなりませんし、他の僧侶の助けが必要なときにはそちらにも伺います。一人でいろいろやっていますね。
なおゆき:なかなか多忙ですね。お一人で様々なことをこなしていくのは大変そうです。福永さんが住職をされていて、一番良かったことややりがいは何ですか?
福永住職:私は布教使という立場でもあるので、私がかつて感じた仏教の面白さ、楽しさ、嬉しさが皆さんに少しでも、伝わったと感じた時や仏教を好きなってもらったかなと感じた時です。
なおゆき:除夜の鐘についてもお伺いしたいのですが、鐘を108回鳴らすと言われる由来は?
福永住職:よく108回と言われますが、決まりごとというよりは後付けの部分が大きいですね。もちろん、そこにこだわるお寺もありますが、西福寺ではあまり気にしていません。目安として鳴らす回数としては108回程度は鳴らしますね
なおゆき:大晦日に西福寺で除夜の鐘を一般の方でも鳴らすことは可能なのでしょうか?
福永住職:もちろんです。どのお寺でも鳴らしていいところが多いと思いますよ。この時期になると日頃訪れない方もいらっしゃって、「お寺ってこんな感じなんだ」と思ってもらえるのが嬉しいです。また、除夜の鐘は重力に身を任せて打つとうまく鳴りますよ。
なおゆき:最後に、今年の除夜の鐘を鳴らしに訪れる方へのメッセージをお願いします!
福永住職:去年は若い人たちも来てくださいました。楽しい行事ですし、もしも誰も来ないってなったらさみしいので、今年もぜひお気軽お越しください。
なおゆき:今回の記事がきっかけとなって、少しでも多くの方が西福寺に訪れることを願っています。福永さん、ありがとうございました!
1月16日までの期間限定で拝観できる掛け軸
福永住職との対談を終え、本堂内を撮影させていただく中で、4枚の掛け軸に目を奪われました。それは親鸞聖人の生涯を描いたもので、視線を下から上へとたどると、親鸞聖人の物語が浮かび上がります。この貴重な掛け軸は、親鸞聖人のご命日である1月16日までの期間、一般の方も拝観することができるそうです。
その後、拝見させていただいたのは阿弥陀さま(阿弥陀如来)。福永住職が「西福寺の阿弥陀如来は他のものとは少し違うんですよ。特別にお見せしましょう」とおっしゃり、ご案内いただきました。これほど間近で阿弥陀如来を拝むのは初めての体験。穏やかな表情は、柔らかな光を浴びて一層優雅で神聖さを感じさせます。
福永住職が続けて、「西福寺の阿弥陀如来は、浄土真宗が生まれる前の時代のものではないかと言われています。特徴的なのは、光背(後ろにある放射状の光)に描かれている青い丸と、その中の梵字です」と教えてくださいました。
さらに、「浄土真宗のご本尊は少し前かがみになっているのをご存じですか?」と質問されました。初耳だった私は「いえ、初めて知りました」と答えると、福永住職は「ぜひ横からもご覧ください」と促してくださいました。真横から眺めると、確かに阿弥陀さまのお姿が前かがみになっているのがわかりました。
福永住職は続けます。「これは前傾姿勢、つまり人々を救おうとする動きを表しているんです。奈良や鎌倉の大仏のような座った仏さまは、修行者が訪れるのを待つ姿。でも、この仏さまは、今まさに人々を救済しようとしているお姿なんですよ。」
福永住職の説明はとても分かりやすく、新たな視点で仏教と仏さまの在り方、面白さを考えさせられるひとときでした。
まとめ
西福寺には、深い歴史とともに、現代の人々にも心安らげる場としての魅力がたくさん詰まっています。特にこの時期は、除夜の鐘を一般の方々にも開放し、訪れる方々と共に新たな年を迎えたいという住職の福永さんの温かな心遣いが印象的でした。ここに訪れると、日々の忙しさを忘れて、穏やかな気持ちに包まれることができます。興味のある方は、是非一度、訪れてみてはいかがでしょうか?
西福寺
◆住所
広島県広島市安佐北区白木町大字三田5465
◆駐車場
有り
★除夜の鐘を鳴らせる時間
大晦日(12月31日)23時30分から鐘をつきますが、毎年23:00くらいから人が集まり始めるそうです。