長友、家長、興梠、西川…、J1・86年組が語った「岡崎引退」への思い
侍ストライカーに刺激を受けた同世代
日本代表得点ランキング歴代3位となる50ゴールという偉大な記録を残している岡崎慎司(シントトロイデン)が今季限りでの現役引退を発表して2週間あまり。「岡崎ロス」は今も日本サッカー界全体に色濃く感じられる。
3月21・26日には2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選・北朝鮮2連戦が控えているが、「岡崎のような泥臭い点取屋が出現して、未知なる敵を撃破してほしい」という声も少なくない。
「一生ダイビングヘッド」という座右の銘をピッチ上で体現してきた侍ストライカーと同世代の選手たちは、彼の一挙手一投足に大いなる刺激を受けてきた。
日本代表では本田圭佑、長友佑都、岡崎というのが86年組の代表格。今季Jリーグで開幕から右サイドバック(SB)で奮闘中の長友は「僕ら3人が話したら絶対にケンカになるっていうくらい気性が激しかった」としみじみ言う。
「高校サッカーの頃から負けたくなかった」と長友
エゴの強い本田、ハッキリした主張をする長友に比べると、少し岡崎は黒子でチームを支えるイメージが強かったかもしれない。しかしながら、ゴールに向かって突き進むブレないメンタリティは誰よりも強かった。
「岡崎には高校サッカーの頃から刺激をもらったし、北京五輪、代表と絶対に負けたくなかった。そういう選手がいなくなるのは寂しい。この年齢でつねにトップでやり続けられるほど、プロサッカーの世界は甘くない。僕も1年1年しっかりとやっていけるように頑張りたいなと思います」とFC東京の背番号5は悲願のリーグ制覇を現実にすべく、チームを力強くけん引することを誓っていた。
努力家の男・岡崎をリスペクトする家長と興梠
日本代表で岡崎と10年以上共闘した面々に比べると、家長昭博(川崎)、興梠慎三(浦和)の2人は「努力家の男に追い抜かれた」という一抹の悔しさを抱いているかもしれない。彼ら2人は10代の頃は「天才」の称号をほしいままにしていたからだ。
高校2年時にガンバ大阪のトップに昇格し、高校3年時だった2004年にプロ契約を締結した家長は、イビチャ・オシム監督時代にA代表初招集を受けた逸材。興梠も鵬翔高校時代は「稀代のファンタジスタ」と位置づけられ、鹿島アントラーズでもプロ1年目だった2005年から出番を得ていた。
そんな彼らとは対照的に、滝川第二高校から清水エスパルス入りした頃の岡崎はFWの8番手。長谷川健太監督(現名古屋)からは右SB転身の打診を受けたというエピソードがあるほどだ。だからこそ、そこからの爆発的成長には家長も興梠も大いに驚かされたに違いない。
「オカちゃんは自分にないものを持ってるし、努力する部分や走って戦うところは大きな魅力。それをブレずにずっとやってきてたから欧州でも活躍できた。あいつには結果、完敗でしたね、もう何もかもが(苦笑)。佑都もそうだけど、やっぱ努力も才能の一つ。努力って必要だなと思います」と興梠は神妙な面持ちで語っていた。
一方の家長も最大級のリスペクトを口にしていた。
「岡崎は本当にプロの鏡。僕ら86年世代を引っ張ってくれた存在だと思いますし、日本サッカー界をホントに前に進めてくれた人でもありますね。彼が背中を見せてくれたというか、個人的にも苦しい時も彼が活躍してるのを見て勇気をもらった。ホント、特別な存在だと思います。
特に岡崎は子供たちにとってすごく参考になる選手でもある。彼のプレーだったり、人柄、やってきたことっていうのをみなさんが伝えていってくれたら同い年の1プレーヤーとして嬉しいなと感じますね」
テクニックや創造性に秀でた2人から見ても、岡崎の泥臭さやタフさ、粘り強さはインパクトが大きかったのだろう。37歳になった今、興梠は筋トレを取り入れ、地道にコンディション調整をしているというが、それも世界に名を馳せた同い年のFWの姿から学んだ部分でもあるのだろう。身近にいるライバルの存在というのは、やはりいくつになっても大きいのだ。
岡崎の飽くなき闘争心を最後尾から見続けてきた西川
こうしたフィールドプレーヤーたちの姿を最後尾から見続けてきた西川周作(浦和)も同じ86年組。岡崎とは日本代表でも長く共闘し、2014年ブラジルW杯でも惨敗を味わった間柄だ。
「オカちゃんとは各年代の代表でずっと一緒やってきましたけど、体がボロボロになるまで戦って、日本のために沢山のゴールを取ってくれて、僕自身、非常に心強い存在でした。オカがいるとサッカー以外のところでも雰囲気をよくしてくれる存在で、僕も助けられましたね。
引退発表を受けて、連絡を取ったんですけど『周作はまだまだ頑張ってくれ。俺は違う道で上を目指すから』という返事が来たんで、お互いにこれからもまだまだ頑張りたいなと思います」と、彼はいつも通りの笑顔で盟友に惜別の言葉を送ってくれた。
西川らは今年、揃って38歳になるが、長友が語気を強めていたように、本当に「1年1年が勝負」という段階を迎えている。
「僕ももう長くないと思うので、自分のプロサッカー選手としての残りのキャリアをいいものにできるように日々、頑張っていきます」と家長も普段、語らないような発言をしていた。現役ラストが近づいているからこそ、完全燃焼したいという思いが強いはずだ。
岡崎自身は目下、ひざのリハビリ中で、復帰できたとしても5月のベルギー・プレーオフ終盤になると言われるが、ピッチに立てば闘争心溢れるパフォーマンスを必ず見せてくれるはず。そんな男のマインドを受け継いで、少ないJ1・86年組には大いに奮闘してほしいもの。今季のFC東京、浦和、川崎の動向を注視しつつ、ベテランの味を存分に示してくれることを期待したい。