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メーガン妃とヘンリー王子の王室離脱MEGXITにエリザベス女王が同意 数日中に最終決着

木村正人在英国際ジャーナリスト
昨年、英戦没者追悼記念式典に出席したウィリアム王子(右)とヘンリー王子(写真:ロイター/アフロ)

「家族としてより自立した生活を送りたいという彼らの願いを尊重」

[ロンドン発]英王室のヘンリー王子(35)と妻の元米女優メーガン妃(38)が「王室のシニアメンバーとしての地位から退き、財政的に独立する」と宣言した問題で、滞在する英中東部ノーフォーク州サンドリンガムで13日、家族会議が行われました。

出席したのはエリザベス女王、チャールズ皇太子、王位継承順位2位のウィリアム王子と当事者である同6位のヘンリー王子。カナダに戻ったメーガン妃もメッセンジャーアプリのワッツアップで家族会議に参加したと見られています。

家族会議は午後2時から始まり、ちょうど3時間後にはエリザベス女王の声明が発表されました。声明の内容を見ておきましょう。

「今日、私の家族は孫と彼の家族の将来について非常に建設的な議論をしました」

「私の家族と私は、ハリー(ヘンリー王子の愛称)とメーガンが若い家族として新しい人生を築きたいという願望を全面的に支持しています。私たちは彼らがロイヤルファミリーのフルタイムのメンバーであり続けることを望んでいましたが、私たちは私の家族の大切な一部でありながら家族としてより自立した生活を送りたいという彼らの願いを尊重し理解しています」

「ハリーとメーガンは、彼らが新しい人生で公的資金に依存したくないことを明らかにしました」

「したがって、サセックス公爵家がカナダとイギリスで時間を過ごすという移行期間を設けることに同意しました」

「これらは私の家族が解決するための複雑な問題であり、さらにやるべきことがいくつかありますが、私は今後数日のうちに最終決定に至るよう求めました」

家族会議の前にみんなで昼食をとる予定でしたが、ヘンリー王子との不仲が取り沙汰されるウィリアム王子は会議が始まる15分前に到着し、家族水入らずの昼食には参加しませんでした。

大きな争点は6つあります。エリザベス女王の声明から最終決着がどうなるか推測してみました。

(1)王室の称号

声明の中でサセックス公爵やサセックス公爵夫人と呼ばずにハリーとメーガンとファーストネームで呼んでいることから、2人が王室の称号を放棄することで決着すると推測。移行期間の今年は「サセックス公爵家」としてイギリスとカナダで過ごすことを認めるとみられる。

(2)公的資金

2人は「公的資金には依存したくない」意向だが、公的資金がソブリングラント(王室の活動費)10万~200万ポンド(1425万~2億8500万円)と皇太子に属するコーンウォール公爵領からの利益の配分200万ポンド(約2億8500万円)のうちソブリングラントだけを意味するのか、両方を指すのか不明。

チャールズ皇太子は陸軍時代に給料をもらった経験しかないヘンリー王子を心配する親心からコーンウォール公爵領からの利益の配分は続けるのでは。

(3)公務

チャールズ皇太子521回

アン王女506回

エリザベス女王295回

アンドルー王子274回

ウィリアム王子220回

キャサリン妃126回

ヘンリー王子201回

メーガン妃83回

フィリップ殿下が高齢のため公務から引退。勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン被告の未成年性的搾取疑惑に関連してアンドルー王子が公務から解任されたばかり。

王位が継承された後のことを考えると、ヘンリー王子とメーガン妃が抜けてしまうと公務がさばき切れなくなる恐れがある。ヘンリー王子もイギリスの慈善団体を一度に切り捨てるわけにはいかず、ヘンリー王子はある程度の、公務を引き受けながら大西洋を往復する生活になるのでは。

ここまで自分の都合を優先したメーガン妃に公務を期待するのは無理というもの。国民もメーガン妃には何も期待していない。

(4)「サセックスロイヤル」ブランドの使用

ヘンリー王子とメーガン妃の「サセックスロイヤル」ブランドを使って独自に活動し、自己資金を調達(英大衆紙デーリー・メールは7200万ポンド、日本円にして約102億6600万円と試算)する権利を主張。

英紙デーリー・メールの試算をもとに筆者作成
英紙デーリー・メールの試算をもとに筆者作成

2人はすでに100以上の商品について商標登録を済ませ、既成事実化を図っている。認められない場合は、友人の米人気司会者オプラ・ウィンフリーさん、英民放ITVのトム・ブラッドビー氏の番組に出て、全てをぶちまけると脅していると報じられている。

すでにエリザベス女王は2人の要望を大筋で認めており、「サセックスロイヤル」ブランドの使用も認めるのでは。

(5)身辺警護

最大6人の警察官による身辺警護、年間予算60万ポンド(約8600万円)は王室の称号を放棄した場合、認められないが、ヘンリー王子が王室の公務を務める場合は身辺警護がついてもおかしくない。

(6)フロッグモア・コテージの使用

エリザベス女王は2人を「私の家族の大切な一部」と言っているので、イギリスの拠点としてロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージ(改修費300万ポンド、日本円で約4億2800万円)の使用は認めざるを得ないのでは。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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