合わせても3000億円割れ…日本の音楽CDと有料音楽配信の売上動向
有料音源込みでピークを迎えたのは2007年か…音楽ソフト+有料音楽配信の売上
趣味の多種多様化や配信手段の多元化に伴い、日本の音楽業界では売り上げが減退しているとの話を見聞きする。日本レコード協会の公開資料「日本のレコード産業」から、音楽CDや有料音楽配信の売上動向を通し、その実態を確認していく。
次に示すのは公開資料で確認できる限りにおける、「有料音楽配信」(モバイル、そしてインターネットダウンロード(パソコン配信とスマートフォン双方))、そしてCDなどの「音楽ソフト」の2014年分における売上結果。
「有料音楽配信」は金額としては436億9900万円、前年比でプラス4.9%の増加。データの公開を始めた2005年から今回発表分の2014年で10年目となるが、前年比でプラスの変化率を示したのは2009年分以降5年ぶり。従来型携帯電話による着うたなどの売上を意味する「モバイル」は急速に減少を続けているが、代わりにインターネットダウンロード(iTuneなどのスマートフォン系含む)が増加し、それ用のサブスクリプション(使用権の販売など)も大幅上昇を遂げ、2014年は「有料音楽配信」の全体額を押し上げる形となった。
2007年までは「音楽ソフトの売上減を、有料音楽配信がカバーし、全体の売上は上昇していた」と解説できた。ところが2008年に至り、有料音楽配信の成長は続いているものの、それ以上に音楽ソフトの売上減が急速に進み、市場全体の売上も落ち込む結果に。そして2010年以降はモバイル端末市場の変化、具体的には従来型携帯電話からスマートフォンへのトレンドの移り変わりに伴う、利用者の有料音楽との付き合い方の激変によって、有料音楽市場も急速に縮退する。
最新の2014年ではインターネットダウンロードの上昇分でどうにか従来型携帯向けを意味するモバイル部門の減少分を補完し切ることができ、有料音楽市場は拡大を示すことができた。一方で音楽ソフトではCDが不調となり、販売数でマイナス10%・金額でマイナス6%の縮小を示す。結果として音楽ソフト全体の売上は前年に続き縮小、アナログ・デジタルを合わせた音楽全体の売上は落ち込んでしまう。
長期動向を確認すると、売上ピークは1998年
音楽業界の動向を一歩引いた立場から眺められるのが次の図。上記のグラフを1990年までさかのぼって再構築したもの(有料音楽配信は2005年以降のみ計測されている)、さらに有料音楽配信と音楽ソフトの売上合計における両者の比率推移をグラフ化した。
1990年代後半に音楽業界はピークを迎えており、それ以降は売上の面で漸減する傾向である実情が確認できる。
携帯電話上の着メロがスタートしたのは1996年。ただし2004年以前は計測対象とならないほど売り上げが小さかったこと、そして音質の問題もあり、1996年~2004年の間の音楽ソフトの減少が、デジタル有料音楽配信のみに起因するとは考えにくい。2005年からは別途取り扱われるほどまでに有料音楽配信が成長し、一時期ではあるが音楽業界に救いの手を差し伸べた形になっている。
2009年~2010年ではすでに1/4近くがソフト部門において音楽配信で占められていた。ところがそれ以降は、「従来型携帯電話からスマートフォンへの利用移行に伴う、音楽聴取者の有料音楽配信との付き合い方の変化」、そして「シングルCDの販促方法の多様化に伴う盛り返し」などがあり、少なくとも売上の面ではトレンドの変化が確認できる。そしてここ2年ほどはそのドーピング効果も薄れ、再び減退に転じている。
音楽視聴需要の多様化などにより、この数年の音楽ソフトの売上は激しい減退ぶりを示している。他方、有料音楽配信部門ではスマートフォンの台頭に伴い、大きな転換点を迎えている。曲の管理の簡易化と収録容量の増加、無料曲の増加、市場単価の減退、定額制サービスの普及など、多彩な売り上げ圧縮理由により、従量制的な従来の「有料」音楽市場が縮小を続けている。今年前年比でプラスに転じたのは正直なところ、奇跡に近い。
今後さらにスマートフォンの普及率が高まるに連れ、有料・無料楽曲感のバランス、聴取者の利用スタイルはどのような変化を見せていくのか、多分に拡大を続けているであろう無料音楽市場、さらには定額制の取得サービスの動向と合わせ、注視し続けたい。
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