局アナにとって…エンタメ担当は“格下げ”なのか!?
10月の改編で、生ワイド(長時間生放送のテレビ番組・ラジオ番組)やニュース番組には、新人が加わったり、既存番組においても、出演するアナウンサーが入れ替わったりしている。
生ワイドといえば、新人アナウンサーの“顔見せ”“力試し”の場になりやすいことで知られ、配属となった新人アナウンサーは、まず「エンタメ担当」となるケースが多い。
大方の番組は、「スポーツ&エンタメ」なるコーナーにおいて、男性アナをスポーツ担当に、女性アナをエンタメ担当に配置しがち。そして、男性アナの方が少しだけ社歴が長いパターンが圧倒的で、これは、生放送で何かあった時に、先輩がフォローするようキャスティングしているのだ。
異例?中堅アナがエンタメ担当に
ところが…である。『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)の新たなエンタメ担当に、2014年入社の中堅どころ、山本雪乃アナウンサー(29歳)が就いたのだ。
これまで山本アナは、『羽鳥慎一モーニングショー』のコーナーキャスターや、単独番組から『サンデーLIVE‼』に吸収された「TOKYO応援宣言」で目立っていた印象がある。
「TOKYO…」は、『2020東京オリンピック』に向けてアスリートを取材し、タイトルどおり“応援”するものだったが、山本アナはアスリートのトレーニングに挑戦してみたり、使用する器具を手にしたりしながら元気にリポートしていた。
また、『…モーニングショー』では“いじられキャラ”として、羽鳥慎一キャスターやコメンテーターの玉川徹氏から可愛がられていた。以前、同番組の女性アナが“ガルコレ”にモデルとして出演した際には、ランウェイを歩く山本アナに、羽鳥キャスターらがツッコみまくっていた。
さらに先日は、すでに同番組を卒業しているにもかかわらず、2022年のカレンダーで、なぜか冷凍ギョーザを手にポーズを取っている山本アナが掲載されているのをわざわざ取り上げ、「他のアナウンサーは花などを手にしているのに、山本アナだけギョーザです。自分を分かっています」と“絶賛”していた。
タレントからの認知度低い?まるで“新人アナ”
そんな山本アナが『グッド!モーニング』の「エンタメワイド」担当になり、コーナーはグンと華やかに。ほぼ毎日、タレントのインタビューに出かけており、その対象は10月期ドラマのキャストから、アーティスト、お笑い芸人、パフォーマー…と幅広い。
インタビューの場でも、山本アナは様々なチャレンジをさせられている。“パラパラ漫画”の鉄拳とは“お絵描き対決”。『2020東京オリンピック』開会式において、“動くピクトグラム”のパフォーマンスで話題になった「が~まるちょば」の前では、パントマイムに挑戦して「逸材」と絶賛されたうえ、彼に「(テレ朝の幹部は)もっと彼女を起用したほうがいい」とまで言わせたのである。
また、それほど知名度がないということなのだろうか。行く先々のタレントは、山本アナに対して新鮮なリアクションを取る。そのため、VTRの出来上がりとしては、新人アナの挑戦企画のようにも見えてしまう。
前任の吉野真治アナも、2002年入社の中堅ながらエンタメを担当していた。局アナだからなのか、フリーの新井恵理那キャスターや森千晴キャスターを盛り立てている姿を見ることもしばしばで、見ていて少々気の毒になったこともある。
とはいえ、アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』の企画・プロデュースを担当した明石家さんまにインタビューした際に「君、いいねぇ」と言われた時は、かなりうれしそうにしていた。エンタメ担当アナの“至福の時”かもしれない。
ニュース番組→情報番組は“格下げ”?
日本テレビでは、平松修造アナ(2015年入社)を取り上げたい。退社した青木源太アナに替わって、2020年10月から情報番組『バゲット』(日本テレビと中京テレビで放送)のメインMCに就任しているが、その前はニュース番組『news every.』(全国放送)に出ていた。
いくらメインMCになるとはいえ、ニュース番組から、エンターテインメント・グルメ・エクササイズ・通販などのコーナーから成る『バゲット』を担当することを、“格下げ”と見る関係者や視聴者はいたようだ。
『バゲット』には「はじめまして 平松修造と申します」という冠コーナーがあり、けっこうな大物と絡んでいる。…が、あまり知名度がないのか、テレ朝の山本アナ同様、インタビュー相手はほぼ全員“あなた誰?状態”になりがち。それでも、アナウンサーという立場を守りつつ、愛用のギターを持参するなど、チャレンジャーなインタビューをし、タレントからの評判はいい。
このように、エンタメ担当としての仕事ぶりは評価されているのに、なぜ見ている側が“格下げ”と感じてしまうのか。
例えば、日本テレビなら『箱根駅伝』の放送席や号車担当、優勝した大学の監督や選手へのインタビューなどは「入社したからには、やってみたい」仕事なのではないか。テレビ朝日なら、『報道ステーション』のMC席に「いつか座りたい」と思うのではないか。そんな“想像”が見る側にあるため、“格下げ”と感じてしまうのではないだろうか。
しかし、ワイドショーにおいてエンタメを担当する私が声を大にして言いたいのは、「エンタメ担当を極めた際に見える景色もある」ということだ。
エンタメを極めた局アナにしか見えない景色
前述の青木アナは、局アナ時代には担当できなかったイベント(スポンサー絡みや、他局が出資社に名を連ねる映画の完成披露試写会など)のMCをするために退社を決めたと聞く。コロナ禍で、そうしたイベントが皆無になってしまったのはアンラッキーだが、イベントが増えてくればオファーも増えていくのだろう。
また、『めざましテレビ』(フジテレビ系)の軽部真一アナのように、“現場”で特別な存在になれる人もいる。
特別な…とは、例えば大物アーティストのコンサートの前後、軽部アナだけが楽屋に呼ばれる…ということ。これまで何度か、その瞬間を見たことがある。2016年からは仲間由紀恵と共に『MUSIC FAIR』のMCだし、高嶋ちさ子と共同プロデュースの『めざましクラシックス』なるコンサートにも出演している。
軽部アナの同期といえば、三宅正治アナや現在フリーの長野智子キャスター。スポーツや報道の分野でトップクラスとなった彼らを前に、軽部アナはどういう思いでエンタメ担当をしているのか…と心配になる方もいるかもしれないが、ここまで振り切って極めた軽部アナにしか見えない景色は確実にある。
“逸材”テレ朝の山本雪乃アナと日テレの平松修造アナには、頑張ってほしい。