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「プラスマイナス」岩橋、クセへの憎しみを消した浜田雅功の一言

中西正男芸能記者
クセへの思いを語る「プラスマイナス」の岩橋良昌

“やってはいけないことをやってしまうクセ”で、オンリーワンの存在感を放つ漫才コンビ「プラスマイナス」の岩橋良昌さん(37)。「ダウンタウン」の浜田雅功さんからお墨付きをもらったクセ芸で、関西では引っ張りだこの人気となり、東京に進出して4年が経ちました。芸人としては強力な武器にもなるクセですが、お笑いの世界に入るまでは、ただただ隠しておきたいだけのコンプレックスでもありました。本人にしか分からない葛藤、そして、紆余曲折を経てたどり着いた感謝の思い。ありのままの感情を、クセを出すことなくストレートに語りました。

クセを実感したのは…

そもそもの話で言いますと、小学校2年の時でした。突然、授業中に「ウワーッ!!」と叫びたくなったんです。その思いが抑えきれなくなって、実際に声をあげた。そうしたら、ま、当然なんですけど、先生から「静かにしなさい!!」と注意を受けました。

普通だったら「怒られたし、もう言ったらダメ」となって終わるはずなんです。ただ、そこで「次、言ったらもっと怒られる。でも、でも、言いたい…」という思いがこみ上げてきたんです。それがクセを初めて実感した時でした。

芸人になった今でこそ、ネタの1つとしてとらえてもらってますけど、子供の頃、学生の頃は、完全にデメリットばっかり。これが本当にやっかいで、絶対にそんなことをしたらダメなシチュエーションでこそ、それをやりたくなる。だから、学校のテストなんて最たるものでした。

鉛筆の芯を全部折ってしまう。解答用紙に違う名前を書く。解答用紙を紙飛行機にして窓から飛ばす。マークシート記入の“悪い例”を見たら、ずっと悪い例の塗り方で塗っていく…。ホンマに、ナンボでもあります。

だからね、よく“努力はムダにならない”と言われますけど、自分にとって、それは当てはまらないんじゃないかと。せっかく塾にも行かせてもらって、しっかり勉強してテストに臨んでも、大切なところでクセが出てしまう。この構図はね、正直、本当に悩みました。

学生時代から悩んできたことだったんで、芸人の世界に入ってからも、ずっとクセは隠してたんです。高校の同級生でもあった相方の兼光(貴史)にも隠してたんですけど、転機となったのが今から10年ほど前。デビュー3~4年目の時でした。

初めての感情だった

同期の「ジャルジャル」が司会をしていたトークライブがあったんですけど、そこでもクセが出てしまって、ちゃんとしゃべらないといけないのに、誰が聞いても絶対にウソやとすぐに分かるような話をしてしまったんです。そこで「ジャルジャル」の2人が「いやいや、絶対ウソやろ!!こっちは、その話をどんな顔で聞いたらエエねん!!」と突っ込んでくれたら、会場がドーンと笑いが起こったんです。お客さんからしたら、普通のやり取りやったと思うんですけど、その瞬間、自分の中では衝撃が走ったと言いますか、今までは絶対に表に出さないようにしていたものが爆笑に変わった。「これは、表に出してもいいものなのか…」と思った。初めての感情でした。

そこから「オールザッツ漫才」(毎日放送)とか関西のいろいろな番組で、クセありきの企画を作っていただいたりして、その中で、大平サブロー師匠や東野幸治さんが、僕の“取扱説明書”と言いますか、おもしろくイジるすべを作っていってくださって、少しずつ皆さんにも知ってもらえるようになっていったんです。

浜田さんにあっかんべー!

「ダウンタウン」の浜田(雅功)さんにも、強く、強く、背中を押していただきました。今でも公私ともにお世話になっているんですけど、初めてお会いした時に、ありがたいことにテレビで僕らの漫才を見てくださっていて、初対面にもかかわらず「お前のあそこのツッコミのトーンは一定やから、もっと緩急をつけた方がエエわ」といった感じで、すごく具体的にアドバイスをくださったんです。

こんなにスゴイことはないですし、もちろん、しっかりと浜田さんのアドバイスを聞かないといけない。ここでふざけるなんて、ありえない。絶対に、まじめに聞くしかない。そういう考えが頭を駆けめぐり、気が付いたら、浜田さんの顔に自分の顔を突き付けて、舌を出して「べ~っ!!」とやってました。鼻がくっつくくらいの距離で、あっかんべーをやってしまったんです。

瞬間的に浜田さんに「お前、何しとんねん!!」と突っ込まれました。「やってしもた…。何もかも、終わった…」と思ったんですけど、ツッコミの直後に聞こえてきたのは大笑いの声でした。そして、ホンマに優しい顔で「お前、おもしろいやないか!!」と言っていただいたんです。そして「いろいろあるかもしれんけど、絶対にやり続けろ。もし、どこかで何か言われたら、オレがやれと言ってるからと言うたらエエ」との言葉をもらったんです。ずっと隠していたことを、あの浜田さんがそこまで認めてくれた。出していけと言ってくださった。この感覚はとてつもなく大きかったです。

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相方の存在がとてつもなく大きい

漫才中でもクセが出て段取り通りに進めたくなくなったり(笑)、そんな時もあるにはあります。また、いろいろな企画に挑戦をさせてもらっている「ごきげん!ブランニュ」(朝日放送)でも並べたドミノをいきなり蹴り倒したり、バスケットボールのゴールを連続で決めないといけないのに、真逆の方向にボールを思いっきり投げたり、ここでこんなクセが出るかと思う時もあります。

ただ、これは本当に感謝するしかないんですけど、相方・兼光の存在がとてつもなく大きいんです。もし、クセで漫才がグチャッとなっても「それはそれでおもしろいやないか」と本気で、心から言ってくれる。本来、絶対に守るべき、一番大切なところに、クセが影響したとしても、それはそれでいい。いわば、究極のクッションを作ってくれているので、今は本当に自然体でやらせてもらっています。

万事、あるがまま。これが、全て自分やし、これ以上でもこれ以下でもない。本当にそう思うようになりました。

そして“もしも”なんて存在しない。「今日、あんなクセを出さなかったら、どうなってたんやろ…」「そもそも、クセなんてものがなかったら、どうだったんだろう」と思うこともありました。でも、結局、現実は1パターンしかない。実際に起こったことだけ。そこで「もしも」なんてことを考えて、負のスパイラルに入っていくこと自体がナンセンスなんだと。やっと、そう考えられるようにもなりました。

隠して、隠して、何なら死んでしまいたいくらいイヤだったクセを武器にできる。こんな流れを作ってくださった周りの方々とお笑いの世界に、ただただ、感謝するしかないです。

最新のクセは…!

…えっ、最新のクセですか。こんなん言うと、また、こいつ大丈夫かと思われるかもしれませんけど、最近、ふと「トータル・リコール」という映画を見てしまったんですよね。あの中で、登場人物の顔が左右対称に真ん中から割れていくというシーンがあるんですけど、あれをやろうとすることですかね(笑)。意味分かりませんわね…。仕事とかでプレッシャーがかかると、あれをやろうとイメージをして、鼻の真ん中の部分に爪を当てて、グイッと力を入れにかかる。そして、顔を半分に割りにかかるという(笑)。当然、割れないんですけど、鼻が赤くなるくらい、それをやってしまっているというのが最新のクセです。

もし、僕の鼻に爪痕が残っているのを見たら「落着きなさい」と声をかけてもらえたら、うれしい限りです(笑)。

■岩橋良昌(いわはし・よしまさ)

1978年8月12日生まれ。大阪府出身。大阪府立交野高校の同級生だった兼光貴史と2003年に漫才コンビ「プラスマイナス」を結成する。大阪NSC25期生。桃山学院大学中退。コンビとして、NHK上方漫才コンテスト最優秀賞、ABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞などを受賞。岩橋個人としては「R-1ぐらんぷり2013」で決勝進出を果たす。2014年に14歳年下の一般女性と結婚し、長女も誕生する。朝日放送「ごきげん!ブランニュ」などに出演中。14日放送の「ごきげん!ブランニュ」では、高速で飛んでくるテニスボールを1分間で52球キャッチして世界記録を達成し話題を呼んだ。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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