インド、月探査機チャンドラヤーン2を7月15日打ち上げ
2019年6月12日、インド宇宙研究機関ISROは、インドの月探査機Chandrayaan-2(チャンドラヤーン2)の打ち上げを7月15日午前2時51分(日本時間で15日午前6時21分)と発表した。探査機は月周回機、着陸機、ローバーから構成され、月の極域への着陸探査に挑む。
チャンドラヤーン2は、2009年に打ち上げられたチャンドラヤーン1に続く、インド2回目の月探査計画。サンスクリット語で「月へ行く乗り物」を意味し、インドで初めて月の南極域への軟着陸を実施する。
着陸機はインド宇宙工学の父と評価される物理学者でISRO初代所長のヴィクラム・サラバイ博士にちなみ、Vikram(ヴィクラム)と名付けられた。南緯70度付近にある2つのクレーター「マンチヌス C」と「シンペリウス N」の間の領域へ、9月6日から7日に着陸する予定だ。地球時間で2週間ほど月面で活動する。ヴィクラムからは6輪のローバーPragyan(プラギヤン:サンスクリット語で知恵、知識の意)が放出される。プラギヤンは太陽電池パネルで電力を得ながら、月面を500メートルほど走行し探査を行う。
着陸機にはX線分光器、赤外線分光器、合成開口レーダー、光学カメラ、温度計などが搭載され、月の地質学や極域の地図作成などを行う。ローバーには月震の観測機器が搭載され、着陸地点付近で月の地震計測を予定している。NASAから委託されたレーザー・レトロリフレクター(光を入射方向に正確に反射させる鏡)を搭載しており、過去にNASAのアポロ11号やロシアのルノホート2号などが設置したレトロリフレクターと同様に、月面に設置して地球-月間のレーザー測距を行う予定だ。
着陸機ヴィクラムとローバーのプラギヤンから着陸機へ送られた情報は、周回機を通じて地球に送信される。周回機は高度100キロメートルで月の南北の軌道を1年間、周回する計画だ。3機の質量は合計で3.8トンとなる。
チャンドラヤーン2が着陸を目指す月の極域は、永久影と呼ばれるまったく日の当たらない場所があり、氷が存在する可能性があるとされる。南極域の探査から、水の存在の解明が進むことが期待される。チャンドラヤーン2は2018年打ち上げと月の裏側への着陸を目指していたという報道もあったが、実際は中国が2018年に嫦娥4号で史上初の月の裏側への着陸を成功させた。チャンドラヤーン2では、着陸場所ではなく月の水の存在の裏付けに焦点を合わせ、成果を狙うと考えられる。また、日本はインドと共同で2023年度打ち上げ目標の月着陸探査を計画しており、インド側が着陸機を、日本側はローバーと打ち上げロケットを担当することが検討されている。
インドの宇宙探査計画は非常に低コストで実現されることで知られている。タイムズ・オブ・インディア紙の報道によれば、チャンドラヤーン2探査機の開発費は60億3000万ルピー(約94億円)、大型ロケットGSLV-Mk IIIの打ち上げ費用は37億5000万ルピー(約58億円)だという。