痛みや膿を改善!化膿性汗腺炎の新薬ビメキズマブ、日本で保険診療可能に
【化膿性汗腺炎とは?症状と治療の課題】
化膿性汗腺炎は、わきの下や股関節部など、体の折り目にできる慢性の炎症性皮膚疾患です。痛みを伴う炎症性の結節や膿瘍、瘻孔(ろうこう)と呼ばれる皮下のトンネルが特徴的な症状です。
この病気は世界人口の約0.4~1.0%に発症すると言われていますが、日本での正確な患者数は把握されていません。症状が恥ずかしいと感じて受診をためらう人も多く、診断が遅れがちです。
従来の治療法としては、抗生物質の内服や外用薬が使われてきました。重症例では生物学的製剤と呼ばれる注射薬が用いられますが、これまで日本で承認されていたのはアダリムマブのみでした。
【新薬ビメキズマブの登場と期待される効果】
このたび、化膿性汗腺炎の新しい治療薬として「ビメキズマブ」が日本でも保険適用となりました。この薬は、炎症を引き起こすサイトカインと呼ばれる物質のうち、インターロイキン(IL)-17AとIL-17Fという2種類を同時に阻害する働きがあります。
BE HEARD IとBE HEARD IIという2つの大規模な臨床試験が行われ、その結果が発表されています。試験では、中等度から重度の化膿性汗腺炎患者さんを対象に、ビメキズマブの効果と安全性が評価されました。
主な結果として、16週間の治療後、ビメキズマブを2週間ごとに投与された患者さんの約半数で、炎症性の結節や膿瘍の数が50%以上減少しました。さらに、75%以上減少した患者さんも3分の1以上いました。
これらの効果は治療開始後4週間という早い段階から現れ始め、48週間の長期投与でも効果が持続したことが確認されました。
【患者さんのQOL改善と日本での保険適用】
化膿性汗腺炎は痛みを伴うため、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。ビメキズマブの治療を受けた患者さんでは、皮膚の痛みが軽減し、QOLの改善が見られました。
そして、待望の日本での保険適用が実現しました。これにより、多くの患者さんがより少ない経済的負担で新しい治療を受けられるようになります。
安全性については、48週間の投与期間中、大きな問題は見られませんでした。最も多く報告された副作用は、口腔カンジダ症(口の中のカビ感染)でしたが、多くは軽度から中等度で、通常の抗真菌薬で治療可能でした。
ビメキズマブの日本での保険適用は、化膿性汗腺炎に悩む患者さんにとって大きな朗報です。特に、既存の治療で十分な効果が得られなかった方々に新たな希望をもたらすでしょう。ただし、個々の患者さんに適した治療法の選択には、慎重な判断が必要です。
化膿性汗腺炎は、見た目の問題だけでなく、痛みや臭いによって患者さんの社会生活に大きな影響を与える病気です。新しい治療法の保険適用により、多くの患者さんのQOL向上につながることが期待されます。
化膿性汗腺炎でお悩みの方は、まずは皮膚科専門医に相談することをおすすめします。ビメキズマブを含む最新の治療選択肢について、詳しく相談できるでしょう。適切な診断と治療により、症状の改善が期待できます。
参考文献:
Kimball AB, et al. Efficacy and safety of bimekizumab in patients with moderate-to-severe hidradenitis suppurativa (BE HEARD I and BE HEARD II): two 48-week, randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre phase 3 trials. Lancet. 2024;403(10393):2504-2519. doi:10.1016/S0140-6736(24)00101-6