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世界中の名ホースマンの目にアーモンドアイはどう映っているのか?!

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
ドバイターフを制したアーモンドアイ。その名は世界へ轟いている

世界へ打電されたアーモンドアイ

 国枝栄調教師からいただいたアーモンドアイのジャンパーを着て取材をしていると、多くの外国人に声をかけられた。声の主はメディア関係者ばかりでなく、馬主や調教師、騎手などのいわゆるホースマン。この春、私が訪れた海外で聞いたアーモンドアイの評判について記してみよう。

 2月にはカタール、3月の中旬からは香港、中国、ドバイ、そして4月の初旬にかけてオーストラリアを転々とした。いや、正確にはしている最中であり、この原稿はオーストラリアで執筆している。

 行く先々で競馬を取材しているわけだが、今年はとくに逆取材されるケースが非常に多い。

アーモンドアイに関し、外国人プレスからインタビューされる筆者
アーモンドアイに関し、外国人プレスからインタビューされる筆者

 「アーモンドアイってどんな馬なんだい?」

 質問の多くはこんな感じ。多少の誤差こそあれ、アーモンドアイに対する質問がほとんどだ。

 昨年、桜花賞(G1)、オークス(G1)、秋華賞(G1)の牝馬三冠を制覇。さらにジャパンC(G1)では古馬の牡馬勢、外国馬達もまとめて負かして優勝。更に驚かされたのはその勝ち時計。2400メートルを2分20秒6という世界で誰も走った事のないタイムで走り抜けてみせた。

 この時点でアーモンドアイの名前は世界中へ打電された。

世界中の名ホースマンが関心をよせる

 3月30日に中東、ドバイにあるメイダン競馬場で行われたドバイワールドカップデー。その中で行われる芝1800メートルのG1・ドバイターフにアーモンドアイは出走した。他の出走馬は同じく日本から参戦したヴィブロスやディアドラ。また、英愛のトップトレーナーであるJ・ゴスデンやA・オブライエン、地元UAEのトップトレーナーであるS・ビン・スルールやC・アップルビー、南アフリカの名調教師でドバイでも厩舎を構えるM・デコックなど、錚々たる伯楽が管理馬を送り込んで来た。

 今回、私はそんな外国人関係者への取材が目的でかの地へ飛んでいた。そして、そこで思わぬ光景の数々と遭遇する事になったのだ。

ドバイターフでアーモンドアイと対戦したセンチュリードリームとO・マーフィー騎手
ドバイターフでアーモンドアイと対戦したセンチュリードリームとO・マーフィー騎手

 まずは同じドバイターフでセンチュリードリームに騎乗したオイシン・マーフィー騎手。昨年の暮れからこの年頭にかけて短期免許で来日し、大活躍した若いジョッキーはレース前、センチュリードリームの話を聞く私に対して、きっぱりと言った。

 「アーモンドアイに勝つのはちょっと簡単な事ではないと思う」

 彼は来日前から日本の競馬をチェックしており、三冠牝馬についてもよく知っていた。

 「日本馬のレベルの高さは世界中で知られています。その中でG1を連戦連勝している馬が弱かろうはずがありません」

 ドバイターフにユーロンプリンスとマジェスティックマンボの2頭を送り込んだM・デコックも、ひと通り取材が終わった後、逆質問をしてきた。

 「アーモンドアイの具合はどうなんだい?」

 当方が「良さそうですよ」と答えると、両てのひらを上に向けるような恰好をした後、言った。

 「じゃあ、かなわないな」

 また、ウートンでドバイターフに挑戦したC・アップルビーは次のように言った。

 「前哨戦(ジェベルハッタ2着)の時よりも更に状態は上向いています。だから本当ならチャンスと言いたいところだけど、日本から強い牝馬が1頭来ているからね。あまり強気な事は言えません」

 ここで当方が「日本から強い牝馬は3頭も来ていますよ」と言うと、彼は「そうだったね」と笑った後、真顔になって右手の人さし指をあげてから言葉を続けた。

 「中でも強いのが1頭いるじゃないか!!」

 レース後に顔を合わせると、更に話を続けた。

 「ほら、言った通りじゃないか。日本の牝馬は皆、強かったけど、中でも抜けているのが1頭いただろう」

世界が注目するアーモンドアイの動向

外国メディアからも次々インタビューされた国枝調教師
外国メディアからも次々インタビューされた国枝調教師

 また、メディア関係者もこの強い牝馬の今後の動向には目を光らせていた。調教師の国枝がひっきりなしにマイクを向けられていたのは当然として、当方もフランスやトルコ、更にはアブダビのテレビ局にまで様々な質問をされた。秋には凱旋門賞を目指そうとしている事は、誰もが知っており「その臨戦過程はどうなるのか?」「なぜ今回(2410メートルの)ドバイシーマクラシックではなくドバイターフに使うのか?」「フランスの芝は合いそうか」などなど、答えに窮するような質問まで投げられた。

 私はそんな彼女の評判をドバイから直接、海を渡って訪れたオーストラリアでも目の当たりにする事になる。日本のクルーガーがドンカスターマイルに出走するために訪れたこの地で、私は地元オーストラリアの馬についての取材を中心に行った。最初に取材したのはランドウィック競馬場に構える厩舎。競馬場内のどこにその厩舎があるのか分からず、馬を曳いている人に聞くと、場所を親切に教えてくれた後、言った。

 「ドバイのアーモンドアイのレースをテレビで見ていたよ。彼女はアンビリーバブルだね。ウィンクスとどちらが強いのか、見てみたいよ」

ウィンクスを管理するC・ウォーラー調教師もアーモンドアイの動向には注目している
ウィンクスを管理するC・ウォーラー調教師もアーモンドアイの動向には注目している

 そのウィンクスを管理するのはリーディングトレーナーのクリス・ウォーラー。彼に取材した時の事だ。彼の管理馬であるアンフォーゴトゥンは2400メートルのATCオークスの勝ち馬。その馬で1600メートルのドンカスターマイルに臨んできたので、距離の適性を問うと、彼は答えた。

 「3歳の時は2400メートルでも走れるけど、年齢を重ねて競馬の経験を積むとより速く走ろうとするから距離がもたなくなってくる。だから古馬になったら1600メートルくらいの方が合うと思うんだ。おそらくアーモンドアイもそうなっていくんじゃないかな? いや、彼女くらい強いとそんなのは関係ないかもしれないけどね……」

 世界中のホースマンが彼女の事を知っている。私も世界中を飛び回って取材する生活を長らく続けているが、こんな事は2006年のディープインパクト以来である。そしてこれはある意味、世界中のホースマンが彼女の世界を舞台にした活躍を楽しみにしているとも言えるだろう。アーモンドアイの世界進出はまだ始まったばかり。秋には大団円が待っている事を願いたい。

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(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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