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第73回NHK紅白歌合戦:今回の紅白は“アニメ寄り”だったのか

小新井涼アニメウォッチャー
(提供:イメージマート)

アニメ関連の楽曲の多さも話題となっていた「第73回NHK紅白歌合戦」。

実際に、注目を集めた「ONE PIECE FILM RED」のウタの出演をはじめ、「鬼滅の刃」 遊郭編や「SPY×FAMILY」の楽曲なども披露されました。

また、出場者によるパフォーマンスだけでなく、特別企画では「ドラゴンボール超」の楽曲が披露され、VTRナレーターとしても声優の江口拓也氏と早見沙織氏が参加。

従来と比べてすっかり“アニメ色”が強くなったようにもみえますが、果たして今回の紅白歌合戦は、そんなにもアニメ寄りだったのでしょうか。

確かにアニメの楽曲や演出も目立ちましたが、実際の紅白歌合戦は、アニメ関連の楽曲でもアニメ映像等の演出はないパフォーマンスもあったり、アニメのタイアップ曲もリリースしていたアーティストがそれ以外の曲目を披露したり、VTRナレーターについても分かる人は分かる程度の露出度であったりと、変に“そればかり”となることなく、バランスよくアニメ要素が取り入れられていたように思います。

むしろ大きな変化があったとしたら、それはそうしたアニメ要素に対する、アニメファン以外からの反応の方ではないでしょうか。

ご存知の通り、これまでにも、アニメ関連の楽曲が披露されたり、アニメのタイアップ曲が紅白で歌われたりする機会は多々ありました。

しかしほんの4、5年前までは、そうしたアニメ関連の楽曲に対して、アニメファン以外からは「こういう世界があるのか/紅白で初めて知った」というような反応も少なくなく、タイアップ曲についても、作品紹介がなければアニメ関連の楽曲ではなくシンプルにJ-POPとして認識されていたように思います。

それが今回は、「鬼滅の刃」以降、アニメがより一層アニメファン以外にまで親しまれるようになってきたことに加え、特に昨年は上記楽曲達が紅白以外の歌番組等でも“「作品」の主題歌”として披露される機会がぐっと増えたこともありました。

そのため、恐らく(視聴者や観覧者のみならず審査員や出演者に至るまで)作品を視聴・鑑賞していなくても、多くの人が「鬼滅の刃」という作品を知った上で・ウタの楽曲だと認識した上で紅白でのパフォーマンスをみていたでしょうし、「SPY×FAMILY」の楽曲についても、今回は作品紹介がありましたが、それが無くとも、星野源氏の「喜劇」という楽曲としてだけでなく、アニメ関連の楽曲としても認識していた人が、ほんの4、5年程前であれば考えられないほど増えたのではないかと思います。

特に、アニメファン以外の人と共に今回の紅白を視聴していたアニメファンの方には、実際にそうした紅白のアニメ要素に対する周囲の温度感や作品認知度の高まりを改めて体感した人も少なくなかったのではないでしょうか。

今回の紅白は、紅白が大きくアニメ寄りに変化したというよりは、どちらかというとそうした、アニメが紅白、ひいてはそれを視聴する世間一般層にまで広がったことで生じた、アニメを取り巻く環境の変化が、より一層色濃く反映されたものであったように思います。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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