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49歳。「絶対に結婚したい」はないけれど「しなくていい」理由も見つからない~スナック大宮問答集51~

大宮冬洋フリーライター
読者交流食事会「スナック大宮」を千葉県流山市で開催。中央が筆者。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流食事会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催140回を超えた。のべ2800人ほどと飲み交わしてきたことになる。

 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代までの「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。

 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めて対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

会場は流鉄流山線の平和台駅前にある「AZ CAFÉ」。飲食店開業などを志す人たちが試験的に使えるシェアキッチンカフェです。(筆者撮影)
会場は流鉄流山線の平和台駅前にある「AZ CAFÉ」。飲食店開業などを志す人たちが試験的に使えるシェアキッチンカフェです。(筆者撮影)

***アユミさん(仮名。独身女性、49歳)との対話***

他の参加者はみんな知り合い同士で私だけ部外者だったら、と不安でした

――千葉県流山市の平和台というややマニアックな駅近くのお店で開催しました。ご自宅から近いので思い切って初参加したそうですね。

 以前から大宮さんのメールマガジンを読んでいて、2019年の東京開催のスナック大宮に申し込もうとしていた形跡があります。今回、下書き保存したままのメールを発見したからです(笑)。

 私にはいろいろ想像してしまう傾向があります。一人で初めて参加をして、他の人たちはみんな知り合い同士で、私だけ部外者だったら……、などと考えて足踏みをしたのだと思います。今回は自宅から40分ぐらいで来られる距離なので、なんとなく気持ちが向いて参加させてもらいました。

――実際に参加してみてどうでしたか。厳しい感想もはっきり言ってくれて構いませんよ(笑)。

 いえ、私の取り越し苦労でした。大宮さんもホストとして気を遣ってくださったし、みなさん話しやすいと感じました。ネタの引き出しが多い人が多いですね! 私はバスケ好きなので、マンガ『スラムダンク』の登場人物と同じ苗字の女性に思わず話しかけたら、「そう言われたことがあります!」と話を広げてくれました。私はどちらかというと相手がしゃべってくれるほうがいいので嬉しかったですね。ちなみに話の糸口を見つけるのは得意なほうです。

人のためになっていると実感できる仕事。週末は乗馬を楽しんでいます

――普段は病院勤務だそうですね。

 はい。医師や看護師ではなく、検査系の技術職です。人のためになっていると実感できる仕事なので続けられています。新しい技術についていくためには勉強をし続けなければならないので飽きる暇はありません。

――暇なときは何をしているんですか?

 週末に乗馬をすることが多いです。モンゴルを旅行したときに、モンゴルの人はみんな馬に乗れるのが羨ましく感じました。日本でも乗れる場所があると聞き、ある乗馬クラブに出会って通っています。

 その乗馬クラブは「馬に乗せてもらっている。馬が嫌がってまで人が乗るものではない」という方針です。馬とのコミュニケーションが大事で、奥の深さを感じています。

――独身一人暮らしとのことですが、結婚願望があったりしますか?

 以前、両親から「婚活してみたら?」と言われて、自分には結婚したい気持ちはあるのかと考えてみました。今の暮らしで不自由をしていないので「絶対に結婚したい」はありません。でも、「結婚しなくてもいい」理由も見つかりませんでした。

 職業柄、コロナ禍の3年間は友人にも会えませんでした。今は、男女を問わずいろんな人と会って、気の置けない関係性を結べたらいいなと思っています。スナック大宮では久しぶりに知らない人とお酒を一緒に飲んでおしゃべりができました。素敵な人と出会うためには「外に出る」ことが必要なのだと感じています。

既婚未婚問わず様々な人が参加するのがスナック大宮。一人参加が原則なので、初めての一人参加でも寂しくはありません。静かに乾杯して、会話が徐々に盛り上がったり盛り上がらなかったりします。(参加者提供)
既婚未婚問わず様々な人が参加するのがスナック大宮。一人参加が原則なので、初めての一人参加でも寂しくはありません。静かに乾杯して、会話が徐々に盛り上がったり盛り上がらなかったりします。(参加者提供)

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マニアックでニッチな「場」であればあるほど、そのメンバーの絆は深くなる

 以上がアユミさんとの会話だ。大人になると新しい友だちができにくくなる、と聞くこともあるけれど、それは場選びが間違っているのだと思う。自分が居心地よく感じられないような場では、価値観が似ていて対等に話せる相手を見つけようがない。

 筆者は若い頃、オシャレな人たちと仲がいい自分になりたくてクラブに通っていた時期がある。とりあえず激しく体を揺らしていたけれど、新しい友人などはほとんどできなかった。音楽もダンスも洋服もそれほど好きではないのが全身からにじみ出ていたのだろう。我ながら浮いていたと思う。

 自分はこうありたいという憧れや妄想にはあまり意味がない。大切なのは、過去からつながって今ここにある自分がどんな性質で何に興味があるのかを見つめることだ。ちょっと恥ずかしい傾向でもいいので認めて、そのコアな場に足を踏み入れることで、思いがけなく心地良い人間関係が広がったりする。社会的なステータスとは無縁なマニアックでニッチな場であればあるほど、メンバーの絆は深くなる。

 スナック大宮はそれほどマニアックではないけれど、毎回の参加申し込み数は20名前後なのでニッチであることは確かだ。こういう場所を自分なりに探して参加してみれば、長く嬉しく付き合える人と出会えるかもしれない。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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