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うなぎは誰が買っているのか…うなぎの購入傾向をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 土用の丑の日が近づくとうなぎのかば焼きが注目されるが(筆者作成・撮影)。

土用の丑の日に大いに買われるうなぎ

毎年土用の丑の日が近づくに連れ、巷にはうなぎ商品が満ちあふれ、同時にうなぎの絶滅危惧種問題と乱獲への懸念が叫ばれる。今回は総務省統計局の「家計調査」の公開値を用い、どのような層がうなぎを食べているのか、つまり需要層となっているのかを確認する。

夏の土用の丑の日(毎年1回、あるいは2回)には、うなぎを食べて精をつけよう、夏の体力不足に備えようとの習慣がある。これは通説では江戸時代の平賀源内が(夏には味が落ちているので売上も減少することから)困っていたうなぎ屋にセールスコピーとして、「本日丑の日(なのでうなぎを食べましょう)」的な提案をしたところ、大いに売上が伸びたのがきっかけだとされている。また丑の日に「う」がつく食べ物を食べて夏バテを防ごうとの風習もあり、うなぎ以外でも「う」がつけば何でもよかった(うどんや瓜、うさぎ、馬肉、牛肉など)との話もある。

実のところ、うなぎは滋養があるため夏バテ防止には適しているものの、江戸時代ならともかく現在では栄養摂取量も増え、手に入る食品も多様にあるため、わざわざうなぎに限定して夏バテ防止を推し量る意味合いは無い。

まずは実際に、どれほどまでに土用の丑の日にうなぎが買われているかを、家計調査から確認する。日次支出額が確認できる二人以上世帯における、2019年の土用の丑の日である7月27日を含む7月の動向が次のグラフ。対象品目は「うなぎのかば焼き」。うなぎ関連ではこの項目のみが調査・登録されている。

↑ 二人以上世帯における日次支出額(うなぎのかば焼き、円)(2019年7月)
↑ 二人以上世帯における日次支出額(うなぎのかば焼き、円)(2019年7月)

前日の7月26日も82.71円とやや大きめの値が出ているが、当日7月27日は言葉通りけた違いの値が出ている。土用の丑の日におけるうなぎは、得てして当日購入するのが一般的のようだ。食べるスタイルを考えれば当然の話ではあるが。

二人以上世帯の購入傾向

これをいくつかの属性別に区分し、その実情を見ていく。支出額を詳しく確認できるのは年ベースのみなので、まずは二人以上世帯(原則夫婦世帯)における、2019年の一年間のうなぎのかば焼きに対する支出金額と購入頻度を示したのが次のグラフ。

↑ 二人以上世帯における支出金額と購入頻度(うなぎのかば焼き、年間、世帯主年齢階層別)(2019年)
↑ 二人以上世帯における支出金額と購入頻度(うなぎのかば焼き、年間、世帯主年齢階層別)(2019年)
↑ 二人以上世帯における支出金額と購入頻度(うなぎのかば焼き、年間、世帯年収別)(2019年)
↑ 二人以上世帯における支出金額と購入頻度(うなぎのかば焼き、年間、世帯年収別)(2019年)

あくまでも年ベースでの値なので土用の丑の日に向けた支出金額とはそのまま結びつくわけではないが、日々うなぎを食べる状況も考えにくいので、おおよそ土用の丑の日におけるうなぎの購入傾向と連動していると見てもよいだろう。

年齢階層別では非常にきれいな形で、高年齢層ほど高うなぎ率の結果が出ている。60代以降は1世帯あたり1回以上はうなぎのかば焼きを購入し、該当属性の世帯平均購入金額もうなぎ上りとなっていく。「若者のうなぎ離れ」とでも呼びたくなるような結果であり、見方を変えればうなぎを積極的に購入している、こだわっているのは高齢者となる。

他方世帯年収別では1500万円以上で支出金額・購入頻度ともに高めの結果が出ているが、それ以外では世帯年収による傾向が導き出しにくい結果となっている。おおよそは世帯年収とうなぎの購入との間には連動性は無さそうだ。あえて言えば世帯年収が1500万円以上の世帯では高級うなぎが食べられている可能性が多分にあるということか。

単身世帯ではより明確な違いが

これを単身世帯で見ると、より明確な傾向が出る。なお単身世帯では購入頻度の指標は無い。

↑ 単身世帯における支出金額(うなぎのかば焼き、年間、世帯主年齢階層別、円)(2019年)
↑ 単身世帯における支出金額(うなぎのかば焼き、年間、世帯主年齢階層別、円)(2019年)
↑ 単身世帯における支出金額(うなぎのかば焼き、年間、世帯年収別、円)(2019年)
↑ 単身世帯における支出金額(うなぎのかば焼き、年間、世帯年収別、円)(2019年)

購入単価を考えれば若年層(34歳以下)ではほとんど買われておらず、中年層(35~59歳)でも数世帯に一件あるか否か。他方高齢層(60歳以上)では多くの世帯で購入していることが予想できる結果が出ている。男女別では女性の方が積極的にうなぎのかば焼きを購入している。他方、世帯年収別では法則性の類は見いだせない。属性別の人数が少ないのも一因だが(例えば500万円台は21人)。

文化の「維持」と「意地」と

以上の動向から、少なくともうなぎのかば焼きに限れば、恐らくは土用の丑の日にも高齢層が好んで食べていることが推定できる。実際に土用の丑の日における商店での購入傾向などを見ても、高齢層が好んでいそうな状況は容易に確認できるため、その通りの結果が出たことになる。

「土用の丑の日はうなぎを食べよう」との話は文化的なものだから仕方が無い云々の話もよく見聞きするが、元々は江戸時代のコピーライターによるものがきっかけであったに過ぎない。現在では栄養補強・夏バテ防止の類は他にも方法は山ほどある。「うなぎを食べて夏を乗り切ろう」的な話は、それこそ時代錯誤。また、うなぎの絶滅が危惧される中で、文化だから云々と食い尽くすかのような商いを行い、種を、文化の元ネタを滅ぼしかねない状況なのは、まさに本末転倒。

高年齢層は「これまでずっと習慣でやってきたのだから」とのこだわりが強いのだろう。これは土用の丑の日にうなぎを食べる慣習に限らず、インターネットの利用をはじめ、多様な生活様式に当てはまる話ではある。意固地、わがままとも表現できるこだわりで、多方面に迷惑をかけるような行為は慎むべきだとは思うのだが。

「それでも土用の丑の日に精をつけるものを食べてげん担ぎをしたい」というのなら、他に「う」がつく食材なり、うなぎの代替品を食すればよいまでの話。うなぎでなければ夏バテ防止にならないわけではないのだから。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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