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ドジャー・スタジアム、フェンウェイ、リグリー、時代の要請による変化の受け入れが長寿の秘訣

豊浦彰太郎Baseball Writer
半世紀以上を経ても最も美しいボールパークのひとつだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

メジャーで3番目に古いドジャー・スタジアムが、開幕までにアメニティの充実を中心に改装される。野球本来の魅力アップとは異なるが、時代が求める変化を受け入れてきたことが長寿の要因だろう。

今年のMLBオールスターゲームは、7月14日にロサンゼルスのドジャー・スタジアムで開催される。ぼくは観に行くつもりで、すでに航空券と現地ホテルは手配済みだ。この球場では1980年以来の開催で40年前はテレビで観戦したのだが(もちろん日本で)、レッズのケン・グリフィー(ジュニアではなくお父さんの方)が本塁打を放ち、MVPに選ばれたのを良く覚えている。

1962年にオープンしたドジャー・スタジアムは、今やフェンウェイ・パーク(1912年)、リグリー・フィールド(1914年)に次ぐメジャーで3番目に古い球場だ。そして、これが重要なのだが、今でも最も美しく魅力的なボールパークのひとつだ。

そして、そのドジャー・スタジアムには3月下旬の開幕までに総工費約1億ドル(約110億円)のリノベーションが施される。その内容は、ドジャースのホームページで公開されているが、内容としては以下のとおりだ。

「センターフィールドプラザ」新設

センターの外野席後方のスペースに、飲食テナント、ショップ、キッズ向け施設、イベント広場などを包括するエンターテインメント広場が新設される。また、ドジャースの栄光の歴史を訴求する銅像やプラークなども設置されるようだ。

外野スタンド改装

スタンド最上部に広いコンコースが造られ、ブルペンを間近に見ることができるバー、フェンスとスタンドの間のホームラン・シートなども新設される。

エレベーター&ブリッジ

その外野席にはエレベーターが新設される。また、その外野席から内野スタンドへのブリッジも建設される。これにより、外野スタンド上部の新設コンコースと合わせ、球場をぐるりと一周することも可能になる。

新しい音響システム

従来以上に迫力あるサウンドを届けることができるという。

個人的にはこのような改装は好みではない。球場というものは年々ファンが求めるアメニティレベルが上がり、レジャーランド化している。今回のドジャー・スタジアムのリノベーションでも、歴史へのトリビュートの部分以外は、本質的なベースボールの魅力とはあまり関係ない。虚飾を排除してより試合そのものに集中させ、球音や甘い芝生の香りを味わせる方が良いとは思う。

ぼくがメジャーに興味を持った1970年代においては、ドジャー・スタジアムはセンター後方のガソリンスタンド「76」の看板以外に全く広告がないことが特徴だった。しかし、今やそのシンプルさは失われ、ビッシリと広告看板やデジタルビデオボードに埋めつくされた。しかし、ビジネス化は排除できないし、エンターテインメント性という刺激も後戻りはできない。これも時代の流れだ。

いや、もう少しポジティブに捉えるなら、その魅力のコアな部分は守りながら時代が求める変化を受け入れてきたからこそ、58年目を迎える今も最も魅力的なボールパークのひとつとしてファンに愛されているのだろう。

これは何もドジャー・スタジアムに限ったことではない。クラシックさが魅力だったリグリーの場合も、2014年以降の改装で不釣り合いな巨大ビデオボードが設置され、ファウルライン沿いにあった古式ゆかしいブルペンは観客からは見えない場所に移設された。外野スタンドが増設されたため、かつては乱れ飛んだ場外本塁打(特に打撃練習において)が出難くなり、名物のボールホーク(外野の外でボールが飛んでくるのを待ち構えるマニアたち)の人数も減ってしまった。

フェンウェイだって同じだ。2003年にグリーンモンスター上に観客席が設置されたことを挙げるまでもなく、108年前のオープン時とは形状そのものが相当異なっている。

今年はレンジャーズの新球場グローブライフ・フィールドがオープンする。昨季までの本拠地グローブライフ・パークは1994年のオープンで、日本の福岡PayPayドームより新しい。この先代はフットボール用として使用され続けるとは言え、レンジャーズの本拠地として見切ってしまうのはずいぶんもったいない気もする。これは、夏には極端な高温になるテキサスの気候下では開閉式屋根&空調が不可欠と判断されたためだ。このことは、球場の寿命は建築物としての耐用年数ではなくアメニティの商品性で判断される時代にわれわれはいることを示している。

だから、フェンウェイやリグリー同様にドジャー・スタジアムもリノベーションが必要なのだ。アンタッチャブルな歴史的建造物になることを拒否したからこそ、これらの古いボールパークは生きながらえているのだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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