消えたF35A 米国が主導する航空戦略に疑問符
昨年9月にはF35Bが墜落
[ロンドン発]9日午後7時27分(日本時間)ごろ、青森県の航空自衛隊三沢基地に所属する最新鋭ステルス戦闘機F35A(通常離着陸型)が東135キロ付近の太平洋上を訓練飛行中、レーダーから消えました(レーダーロスト)。
岩屋毅防衛相が同日夜、防衛省で記者団に明らかにしました。
40代の男性3等空佐1人が搭乗しており、機体とともに行方不明になっています。無線への応答もありません。自衛隊の救難ヘリUH60Jが3機、双発ジェットU125が3機、哨戒機P3Cと哨戒ヘリSH60Jも捜索に当たっています。海上自衛隊、海上保安庁も捜索に加わる予定です。
まずは空佐の無事を祈ります。不明機を含めてF35Aが4機で対戦闘機の戦闘訓練をしている最中にレーダーロストしました。「原因は不明だ」そうです。F35Aがこれまでに墜落したケースは報告されていません。
昨年9月には海兵隊仕様のF35B(STOVLタイプ=短距離離陸・垂直着陸型)が米サウス・カロライナ州で墜落しています。F35が空を飛んで17年、初の墜落事故でした。米国防総省の声明では燃料チューブの欠陥が事故の原因として疑われています。
エンジンに破片が入るのを防ぐ回転翼の欠陥も考えられるそうです。故障したため基地に帰る途中に墜落、搭乗員は無事、脱出できました。
F35は「空飛ぶ忍者」
F35は米ロッキード・マーチンが主導する米・英・伊など9カ国の国際共同開発機です。短い距離で離陸し、垂直着陸と超音速飛行が可能で、特にステルス性能に優れています。
英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の空軍専門家ダグラス・バリー氏は「F35はステルス性能を持ち、マルチロールに対応できる航空機だが、空対地能力に力点が置かれた非常に優れた爆撃機だ。その一方で情報・監視・偵察能力にも秀でている」と解説。
高いステルス性能を誇るF35は「空飛ぶ忍者」として敵の情報を収集し、統合ネットワークを通じて後方の味方に情報を送り、敵の戦力に精密な打撃を与えることができます。このため米国を中心とする西側諸国はF35を航空戦略の柱に据えています。
IISSの今年1月時点のまとめによるとF35の配備状況は次の通りです。
オーストラリア F35A 10機
イスラエル F35A 14機
イタリア F35A 10機 F35B 1機
韓国 F35A 4機
オランダ F35A 2機
ノルウェー F35A 16機
トルコ F35A 2機
英国 F35B 17機
「中国、ロシアに対する航空優勢を確保するゲームチェンジャー」
日本の自衛隊も「中国、ロシアに対する航空優勢を確保するゲームチェンジャー」としてF35に期待を寄せています。将来的にF35Aを計105機配備する予定で、昨年1月に三沢基地に初めて配備されました。
今年3月に80人態勢で第302飛行隊に新しく編成されたばかりで、13機が配備されていました。不明機は三菱重工業小牧南工場(愛知県)で組み立てられていたそうです。残り12機について当面、飛行を見合わせます。
「いずも」型護衛艦(満載排水量2万6000トン、全長248メートル)の事実上の空母化に伴い、軽空母からも発進できるF35Bを42機調達するとみられています。
最も高価な戦闘機
2019年度の概算要求では、F35Aは6機で916億円、1機で152億6000万円もします。F35は史上最も高価な戦闘機と言われています。
空中戦と対地攻撃能力を備えた多用途性のF35はしかし構造上、多くの矛盾を抱えています。このため、これまでにもエンジン出火などのトラブルが絶えません。
F35に詳しい軍事専門家ダン・グレイザー氏によると、ジェームズ・マティス前米国防長官は今年9月までにF35の任務遂行能力を80%に引き上げることを目標に掲げていました。しかし下の数字を見ると、目標達成は難しそうです。
F35A 54.67%(昨年10月のディフェンス・ニュース)
F35B 12.9%(昨年6月、グレイザー氏)
F35C(艦載型) 0%(2017年12月、グレイザー氏)
(おわり)