「SPY×FAMILY」 アニメ放送の初速パワーは「鬼滅」「呪術」超えも ビッグデータから読む
アニメが人気を博した「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」。テレビ東京の定例会見でも社長が絶賛。4~6月の放送時にツイッターのタイムラインでもよく見かけました。そこでビッグデータから探ってみます。
「スパイファミリー」は、集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+」に連載中の遠藤達哉さんのマンガが原作です。すご腕スパイのロイドは、敵国の総裁の息子が通う名門校に潜入するため、かりそめの家族を作ることになるのですが、引き取った少女のアーニャは人の心が読める超能力者で、妻になったヨルは殺し屋だったというコメディーです。
ポイントは3人が互いの秘密を隠し、さまざまなトラブルが続出しながらも、絆(きずな)を強めていくところ。読者視点では、それぞれのボロが見えるわけですが、それでいて3人の“家族”の幸せを祈ってしまうのですよね。
さて「スパイファミリー」ですが、ネットでの反応はどうなのでしょうか。ヤフーの行動ビッグデータを元に、生活者の実態や動きを可視化するインターネットサービス「DS.INSIGHT」で、「スパイファミリー」に関して調べてみました。なお数値は、ヤフーで検索された実数ではなく推計値で、日本国内となります。海外のデータは入っていません。
◇検索ボリュームは「スパイファミリー」の圧勝
まず、検索されるタイトル名です。正式表記の「SPY×FAMILY」、カタカナにした「スパイ×ファミリー」「スパイファミリー」とありますが、圧倒的に多いのは最後の「スパイファミリー」でした。
月間(6月)の検索ボリュームは、「スパイファミリー」は約46万に対して、「Spy×Family」は1万強。「スパイ×ファミリー」に至っては数字を挙げるのもためらうほどわずかでした。検索をするときに英語にしたり、「×」を入れるのを(おそらく面倒がって)省いているのですね。海外にも人気がある同作なので、世界に広げるとまた違う結果が出るのでしょうが…。
続いて検索ボリュームの変動について。今年4月のアニメ放送で爆発したのが、グラフからも分かります。ピークは4月の放送開始月で50万超え。その後は緩やかに減少していますが、50万前後はキープしました。放送が終わった7月は半減しそうですが、10月の2期放送が始まるとどうなるか楽しみなところです。
同作は、原作マンガもかなり人気でしたが、やはりアニメ効果は抜群。ですがアニメ化をすればよいわけではありません。数多くのアニメが放送されるだけに、ビジネスで成功と言えるのは一部の作品のみ。「スパイファミリー」は、もともとマンガの人気があるのに、ここまで検索ボリュームが跳ね上がるのですから、大成功と言えるでしょう。
◇検索されたキャラ トップはアーニャ
そして作品と共に検索されたワードに触れます。他作品と同様に「アニメ」や「漫画」「声優」のワードが強いのですが、目立つのは「ユニクロ」「グッズ」「一番くじ」「ガチャガチャ」といったアイテム系のワードです。作品が好きになれば、関連商品が欲しくなって、検索するのでしょう。
そして作品と共に検索されたキャラクター名のトップは、他を引き離してアーニャでした。続いて「犬(アーニャが飼っている)」、妻の「ヨル」、犬の「ボンド」。さらにヨルの弟の「ユーリ」、アーニャの宿敵の「ダミアン」、アーニャの友達の「ベッキー」。その後で、ロイドのコードネームである「黄昏(たそがれ)」が来ます。アーニャの人気の高さに引っ張られて、同世代キャラの強さが目立ちました。
◇アニメ開始の初月は「鬼滅」「呪術」超え
ここまでは「スパイファミリー」単体の作品傾向を見てきました。でも気になるのは、同作がどのレベルで成功したのか。そこで「鬼滅の刃」と「呪術廻戦」の大ヒットアニメと、大河ドラマの「鎌倉殿の13人」、朝ドラの「ちむどんどん」の検索ボリューム(月間)と比較しました。
「スパイファミリー」は、テレビアニメ放送開始初月(今年4月)は、約53万を記録。こと放送初月に限れば、「鬼滅の刃」(2019年4月放送開始、約12万)と「呪術廻戦」(2020年10月放送開始、約26万)を上回っています。
なお「鎌倉殿の13人」の初月(2022年1月)は約77万。「ちむどんどん」(2022年4月)は約58万。いずれも「スパイファミリー」より上でした。しかし放送開始3カ月の平均では、検索ボリュームの急落を食い止めた「スパイファミリー」の数値が逆転します。あくまで正式タイトルの検索結果であり、かつアニメはネットと親和性が高いために割り引いて考えるべきですが、それでも驚きの結果です。
ただし「鬼滅の刃」のピークは、アニメ映画公開直後(2020年10月)の約266万。「呪術廻戦」のピークは、テレビアニメ放送後半(2021年1月)の約90万。そう考えると、「スパイファミリー」には、まだ伸びる余地はありそう。今年10月のアニメ第2期の放送で盛り上がって、両者にどこまで近づけるかです。
一つ言えるとすれば、「スパイファミリー」は現時点でも十分な話題になっていますから、これ以上を狙うのであれば、何かの“追い風”を受けて、さらに多くのライト層を取り込むなど「天の時(幸運)」も必要でしょう。そして、どこで大ブレークするか、誰も予想できないのがメガコンテンツの面白いところです。
なお、ここに挙げたアニメ3作品、そして「ONE PIECE」は、全て集英社が発信するコンテンツです。もちろんゼロから作品を生み出した作家の才能と努力が称えられるべきですが、同社の「編集力」に恐ろしさを感じます。
ヤフー・データソリューション | DS.INSIGHT
※この記事は、Yahoo!ニュース 個人編集部、ヤフー・データソリューションと連携して、ヤフーから「DS.INSIGHT」の提供を受けて作成しています。
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