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今年は「ストリートファイター」が熱い!? MT-10登場で再び熱を帯びるトレンドに注目

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
都会の闇夜を切り裂くストリートファイター

5月中旬より、いよいよヤマハ「MT-10/SP」の国内発売が開始される。

そこで、にわかに活気づいてきたのが「ストリートファイター」のカテゴリー。今年も各メーカーから最新モデルが投入されている注目のジャンルである。

そこで今回は、街を疾風のごとく駆け抜ける「ストリートファイター」の魅力に迫ってみたい。

誰が一番強いかを巡って勝負した“街のケンカ屋”が語源

今月は国内デビューを間近に控えた「MT-10/SP」のメディア試乗会が開催された他、JAIA主催による海外ブランド一気乗りイベントなどもあり、多種多彩なニューモデルに触れる機会があった。その中で実感したのが「ストリートファイター」の台頭である。

「ストリートファイター」とは一体どんなマシンなのか。

ストリートファイターとは本来は“街のケンカ屋”の意味だ。ボクシングがまだスポーツとして確立されていなかった頃、街で評判の強い男たちが鉄拳で殴り合い、それを取り囲む観衆が勝ち負けに現金を賭けるといった興行が行われていた。

その舞台に登場するのがストリートファイター。これまで何度も映画のテーマになってきたので、興味のある人はレンタルビデオ屋へ。

若者のストリート文化として生まれ、メーカーがトレンドとして成熟させた

バイクの世界における「ストリートファイター」とは、元々はスーパースポーツなど高性能なフルカウルモデルの外装を剥ぎ取ってアップハンドル化し、公道を走るための最小限の保安部品を取り付けた仕様のことを言う。90年代にヨーロッパを中心としたストリート・カルチャーから生まれ、世界に広がったようだ。

日本製の4気筒大型スーパースポーツが隆盛を誇った頃で、ストリートでレースまがいの走りを楽しむ若者の一部にはクラッシュしたマシンの外装を修理することなく、逆に剥ぎ取ってシンプルな戦闘マシンに仕上げる者が現れた。いわば、ストリートカスタムの一手法として最初のブームは巻き起こった。

一方で、馬力があって軽量なこうしたマシンはエクストリーム用のベースマシンとしても最適で、過激なトリックをやりやすくするために、アップタイプのワイドバーハンドルを取り付け、エンジンも低中速寄りにチューンした独自のスタイルが出来上がっていった。

こうした、パワフルかつワイルドで剥き出し感のある雰囲気が“クール”ということで、若者を中心に広がっていったのが「ストリートファイター」の原型だ。

そこに目を付けた二輪メーカーが、今度は正式な用語として自社モデルのスタイルをそう表現するようになっていく。ストリート発のモーターサイクル文化、いわゆるサブカルチャーをメーカーがブランド戦略として取り込んだ好例と言っていいだろう。

こうして、独自の進化を遂げたのが現在の「ストリートファイター」のカテゴリーである。

電制で戦闘力を飛躍的に高めた個性派ファイターが続々デビュー

さて、話を戻して最近試乗した代表モデルとしては、「MT-10」が挙げられるだろう。

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▲MT-10

ヤマハは正式にはストリートファイターとは位置付けておらず、“ネイキッドとモタードの異種混合スタイル”と呼んでいるが、R1ベースの車体とエンジンをフル活用した高性能ファイターであることは誰の目にも明らかだ。

詳しくは試乗レポートを参照していただきたいが、ポテンシャルの凄さはもちろん、最新の電子制御テクノロジーによる“扱いやすさ”が際立っていた。

その直接ライバルと見られるのがBMWの新型「S1000R」だろう。

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▲S1000R

電制マシン時代の幕開けを告げたスーパーバイク「S1000RR」直系のエンジンと車体を、ほぼそのまま流用したようなアグレッシブなモデルで、ピークパワーを5ps上乗せしつつ、コーナリングABSやクイックシフター(アップ&ダウン)を装備するなど戦闘力を高めてきた。

ストック状態ではサーキット最速と言われるRRのDNAがそのまま注入されたモデルだけに速さは折り紙付きだ。

そして、アプリリアからは排気量アップとともに電制をさらに進化させた「TUONO V4 1100 Factory」が立ちはだかる。

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▲TUONO V4 1100 Factory

新型トゥオーノにも試乗したが、クラス最強175psを誇るスーパーバイク直系のV4エンジンとシャーシ、フルライド・バイ・ワイヤーによる各種制御、MotoGPマシン並みにバンク角や加速・減速Gのパラメーターを視覚化したTFTディスプレイなど、とにかく先進的かつ超過激。にもかかわらず、ストリート寄りにチューンされたエンジンの低中速での意外なマイルドさが印象的だった。

また、ミドルクラスではトライアンフ「ストリートトリプルRS」のバランスの良さが光っていた。

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▲ストリートトリプルRS

デイトナ675ベースの3気筒エンジンの排気量を765ccに拡大してパワーとトルクを大幅にアップし、電子制御によるライディングモードを搭載。前後サスペンションやブレーキなどの足まわりも強化された。

3気筒独特の胸のすくようなサウンドや、出力特性、ABS、トラコンの介入レベルをモードボタンひとつで自動的に調整してくれる便利さには大いに魅了された。

これ以外にも、ドゥカティの新型「モンスター1200」シリーズやKTM「1290スーパーデュークR」などの気になるモデルが続々ラインナップされている。

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▲1290スーパーデュークR

また、国産モデルではマイナーチェンジしたカワサキ「Z1000」や、スズキ「GSX-S1000」、ブランニューとなる「GSX-S750」などにも注目したい。

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▲Z1000

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▲GSX-S1000

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▲GSX-S750

よりスマートに洗練された、現代のアウトローへの期待

ケンカ殺法の荒くれ者のイメージが強かった「ストリートファイター」も、今となっては最新テクノロジーの力を借りることで、よりスマートで扱いやすく洗練されたモデルへと昇華されてきた。

これらは元々が最先端のスーパースポーツの血筋ということで、ストリート最強の優れた万能マシンへと発展していく可能性もあるだろう。今後はどのような方向に進化するのか興味は尽きない。

血統書付きのアウトロー。そんなイメージを楽しみたい個性的なマシンたちだ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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