従来型携帯とスマホ、双方のネット利用の現状を探る
若年層で圧倒的なスマホ、従来型は中堅層以降
日本でもようやく携帯電話の主流が従来型からスマートフォンへとシフトしつつある。それでは現時点において、携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォン双方、タブレット型端末は含まない。以下同)を用いたインターネット利用状況はどのようなパワーバランスにあるのか。総務省が2014年6月に発表した「通信利用動向調査」を基に、その実情を確認する。
次以降に示すのは、モバイル系端末に限定した「インターネットの利用率」。各値は全体比(未回答者除く)における値。例えば「全体の従来型携帯電話のみの値は20.3%」とあるが、これは調査対象母集団全体(携帯電話保有者やインターネットの利用者限定では無い)の20.3%が、過去一年間で従来型携帯電話のみでインターネットを利用した経験があることを意味する。参考として一年前、つまり2012年末時点のデータも併記する。
若年層でのスマートフォンの浸透ぶりが目立つ。13-19歳では従来型携帯電話と併用している人も合わせると64.2%。そして20代になると従来型携帯電話からの乗り換え(かつそのまま併用)をしている人も合わせ、8割強に達する。昨年のデータと比べると、その加速度的な広まりには驚くばかり。30代以降は従来型携帯との併用も合わせ徐々にスマートフォンのネット利用者は減り、60代後半になると1割を切る。
従来型・スマートフォンの利用率の転換点は40代と50代の境目。表現を変えれば、50代以降の「携帯電話によるインターネット」は「従来型携帯電話」経由メインであり「スマートフォン」メインでは無い。
前年2012年末分と比べると、急速な勢いによるスマートフォン利用者の加速、さらには従来型の併用者の減少が確認できる。新型機のラインアップはほとんどスマートフォン、従来型は入手する機会すら得られない。併用するメリットも無く、コストばかりかかる。スマートフォン1つに利用を絞り込むのも道理というもの。
高年収ほど携帯そのものもスマホも高利用率
続いて所属世帯の年収別利用性向。
従来型携帯電話よりスマートフォンの方がランニングコストは高くつく。低年収の方がやりくりが厳しくなるため、スマートフォンまで手が出せない。その実情が結果となって表れている。
年収が一定ラインに達すると、スマートフォン「のみ」の所有率はさほど変化が無くなり、従来型携帯電話との併用が増えていく。従来型・スマホを併用しても許容できるお財布事情の余裕度合いが見えてくる。
一方、最高年収になると従来型の利用率がやや増え、スマートフォンの利用率が幾分減る、それ以下の層とは逆行する動きがある。これは多分にイレギュラーなものだろう。さらに統計値を精査すると、この年収層は多分にシニア層(65歳以上)で占められているので、年収よりもその構成員の年齢が影響している可能性は高い。
世帯構成別では……!?
最後に世帯構成別。回答者の所属する世帯の構成別で、携帯電話によるインターネットの利用性向にどのような変化が生じるかを見たもの。
単身世帯(非高齢者。高齢者は60歳以上)では金銭的にも余裕があり、自分で操作技術を習得できることから、携帯インターネット利用率全体も、さらにはスマートフォン利用率も高い。一方同じ単身世帯でも高齢者のみでは、操作などを教えてもらえる機会も少なく、従来型携帯電話で満足している場合も多く、スマートフォンの利用はごく少数となる。そもそも論としてモバイル系端末によるインターネットへの利用機会自身があまりない。
ところが同じ高齢者でも、二世代に渡る世帯の構成員となると、高齢者単身世帯と比べてスマートフォンによる利用率が高い値を示すようになる。回答者本人が高齢者でも、子供などに教えてもらえる機会が得られるため(無論双方とも高齢者の場合もあるが、互いに教え合うことで、一人よりははるかに楽になる)、技術的ハードルを超えやすいものと考えられる。
世間一般には「従来型携帯電話=古い、前世代」「スマートフォン=新しい、新世代」のイメージが根強い。企業の戦略もそれに従い、全面的にスマートフォンをプッシュしている(利益率やインフラ上の問題もあるが……)。しかしタッチパネルの操作問題や、スマートフォンが「携帯電話」としてよりはむしろ「パソコン」に近いツールであることから、シニア層へのトラブルが懸念されるのも事実。
万人にスマートフォンへの切り替えを推し進めるのではなく、ボタン押し方式の従来型携帯電話の改良型(「マルチメディアフォン」と呼ぶこともある)の選択肢も残した方が、需要に合うだけでなく、特にシニア層からは喜ばれそうな気がするのだが。
■関連記事: