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全米プロ3日目、松山英樹の歯車が狂った一方で、なぜフィル・ミケルソンは連続ミス後に踏みとどまれたのか

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 全米プロ3日目は「ムービングデー」の名が示す通り、選手たちの動きにさまざまな変化が見られたが、残念ながら松山英樹は前日の4位タイから23位タイへと大きくムーブダウンした。

 3番でボギーを先行させながらも、4,5,8番でバーディーを奪った松山。しかし後半は11番のボギーを皮切りに、12番でボギー、13番でダブルボギー、14番でボギーと崩れ、最終ホールの18番でもパーパットがカップに蹴られてボギー・フィニッシュ。

 11番のボギーで踏みとどまることができていれば、その後の流れは変わっていたのかもしれない。だが、12番で3パットを喫し、2連続ボギーとしてしまったショックと力みが13番の松山の1打目、2打目を左に曲げ、小技もパットも狂わせてダブルボギーへ。その動揺と焦りが14番のティショットをグリーン・オーバーさせてボギーとなり、そうやって彼の歯車は狂っていった。

 一方、3日目を首位タイで出たフィル・ミケルソンは、前半で4つ伸ばし、折り返し後の10番でもバーディーを奪った後、12番でボギー、13番でダブルボギーを喫した。後半に入って突然躓いた流れは、どこか松山と似ていたが、ミケルソンは、そこで踏みとどまり、2アンダー、70でフィニッシュ。2位に1打差の通算7アンダーで単独首位に立った。

 12番はティショットを右の砂地に入れ、13番もティショットを大きく右に曲げて湿原へ打ち込んだミケルソン。「ボギー、ダブルボギー」の流れを、そこで食い止めることができた理由を、彼は2つ挙げた。

「今日も僕の弟がいい仕事をしてくれた」

 バッグを担ぐキャディは弟のティム。ミケルソンは前日もティムの距離やクラブ選択のアドバイスが「とても役に立った」と話していたが、3日目はジョーク交じりに語りかける弟ならではの励ましが気持ちを楽にしてくれたそうだ。

 さらに、ミケルソンは「絵」の効果を指摘した。ショットする前に打ちたいショットを頭の中で思い描いてから打つ「メンタル・ピクチャー」の手法は、以前から彼がメンタルトレーニングで学び、実践している方法だが、「今日の12番、13番は、いい絵が思い描けず、集中力を欠いてミスした典型だった」。

 だが、それでもメンタル・ピクチャーを描き続けようとしたからこそ、14番からすぐさま立ち直ることができたという。

 そうやってしっかり立ち直れたという実感が、終盤のミケルソンにエネルギーとパワーをもたらしたようで、16番はティショットを再び大きく右に曲げながらも、パー5の利点を生かし、バーディーチャンスにもっていって楽々パーをセーブした。17番(パー3)もバーディーを逃がしてのパー。そして18番は左セミラフからグリーン左奥へ外してピンチを迎えながらも見事に1.2メートルへ寄せてしっかりパーセーブ。

 窮地から脱し、流れを好転させたものは、ミケルソンが長年、心がけてきたメンタル・コントロールだった。

 すでに50歳、来月は51歳の誕生日を迎える。メジャー5勝の強者だが、2013年の全英オープン制覇以降、メジャー優勝からは遠ざかり、ここ5年はメジャー大会ではトップ10入りが1度もない。米ツアーのレギュラー大会でも2019年以降は勝利が無く、昨今は巷を騒がせている新ツアー構想、SLG(スーパーリーグ・ゴルフ)への移籍も囁かれている。

 1打差で追いかけるのはメジャー4勝のブルックス・ケプカ、2打差で追撃をかけるのは全英オープン覇者のルイ・ウエストヘーゼンだ。実力者揃い、メジャー・チャンピオン揃いのリーダーボードの最上段にいるミケルソンは、百戦錬磨の実力者といえども、メジャー大会最終日を最終組で回るプレッシャーは多大だ。

 そんなサンデー・アフタヌーンをどう切り抜けるのか。史上最年長のメジャー優勝を是非とも見てみたい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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