中国に売られた北朝鮮女性が驚愕…現地警察が伝えた「意外な言葉」
3年7カ月間、閉じられていた北朝鮮の玄関がついに開いた。
16日午後、中国の大学に通っていた留学生らを乗せたバスが国境の橋をわたり、北朝鮮へと戻った。2020年1月に新型コロナウイルス対策で国境が封鎖されて以降、モノの行き来や在北朝鮮華僑の出国などはあったものの、海外にいた自国民が北朝鮮に戻ったのは、今回が初めてと見られる。
また、長らく運航されていなかった平壌―北京間の高麗航空便も22日午前に運航を再開した。
こうした人的交流の再開により、緊張を強いられている人々がいる。中国国内の脱北者だ。韓国など第3国への脱出を目指す人々は息を殺して潜伏しているが、そうもいかないのが人身売買などで中国人男性の妻となっている女性たちだ。
(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち)
中国のデイリーNK情報筋は、遼寧省の瀋陽で中国人男性の妻となって暮らす脱北女性が公安局(警察署)から一斉に連絡を受け、出頭したと伝えた。
そこで伝えられたのは、次のような意外な内容だった。
「罪さえ犯さなければ、北朝鮮に送り返すことはないから、ストレスを受けずに生活せよ。身分(証明書)がないので、外で捕まれば良からぬことが起きうるので、家で過ごせ」
現地の人口減を反映した決定と思われるが、公安局に呼び出された脱北者のAさんは、次のように述べた。
「普段からストレスを感じつつ暮らしていただけあって、何の罪を犯していなくとも、公安から出頭せよとの連絡があっただけでドキドキして何も食べられなくなり、夜も眠れなくなっていた。公安の担当者から『北朝鮮に送り返すことはないからストレスを受けるな』と言われてようやく胸のつかえが下りた」
人身売買の被害者の中には、早く帰国したいと望む人々がいる一方で、子育てや故郷に残した家族への仕送りのため、中国に残ることを望む女性もいるのだ。
Aさんによると、「あまり出歩くな」という話に対して、ある女性は「だったらわれわれに身分証明書を発行してくれ。子どもを産んでここで暮らしているのに身分証明書がなくて帰らされるのではないか」と言ったところ、公安の関係者は「それはそんな簡単な話ではない」と一笑に付したという。
一方、出頭した脱北者の持っている携帯電話の番号と、登録された番号が一致するかの確認も行われ、メッセンジャーアプリでのやり取りの確認まで行われたという。韓国行きの企てなど、おかしなことをしていないか徹底的に監視する意図があるようだ。
中国当局が最も嫌がるのが、自国内の脱北者が韓国に向かうことで、度々取り締まっている。このような問題を起こさずに静かに暮らすなら取り立てて問題にはしない方針のようだ。
ただ、このような措置はあくまでも非公式のものだ。表向きは「脱北者は難民ではなく、出稼ぎ目的の不法越境者で、見つけ次第送り返す」という方針に変わりはない。
中国人男性と結婚して子どもを産んで暮らしている脱北女性とは異なり、中国人の配偶者のいない脱北者や、出稼ぎ、或いは韓国行きを目指していた脱北者は逮捕、収監されている。彼らは、人的交流の再開に伴い、北朝鮮に送り返される可能性が高い。