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バイデン政権のミサイル迎撃システムのイスラエル派遣

高橋和夫国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

バイデン大政権は、THAADと呼ばれるミサイル迎撃システムの操作要員と共にイスラエルに配備すると発表した。イスラエルを守るという強いメッセージを発する意図だろう。

しかし、民主党のハリス候補を助けたければ、イスラエルを抑えて戦火の拡大を抑えるべきなのに、アメリカが守ってあげるというメッセージを出せば、ネタニヤフ首相はイラン攻撃への動機を強めるだろう。

そしてイランの反撃がある場合には、この迎撃システムが目標とされる可能性が高いだろう。イランからのミサイルの迎撃に失敗すれば、超大国としてのアメリカの威信に傷がつく。またアメリカ軍の将兵が死傷するだろう。そうするとアメリカが、イランに報復せざるを得なくなる。アメリカ自身が戦争に巻き込まれてしまう。

また仮に首尾よくイランからのミサイルを撃墜したとしよう。その場合には、イランにばかりでなく、アメリカの潜在的な敵国である中国、ロシア、北朝鮮にも貴重なデータを提供して手の内をさらす結果となるだろう。

しかもアメリカの中東への肩入れを待っていたかのように、中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。さらに北朝鮮は、韓国を威嚇している。

THAADの派遣は、賢明な政策には見えない。バイデン政権の中東政策には、首をかしげるような場面が多い。この1年間で首が曲がってしまいそうだ。いずれにしろ、世界が、やがて起こるであろうイスラエル上空でのハイテク兵器の激突に注目している。中東が最新の兵器の実験場となっている。

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イラン革命、イラン・イラク戦争、湾岸危機・戦争、アメリカ同時多発テロ、アフガン戦争、パレスチナ問題、イラク戦争、アラブの春と続発する事件に関して30年以上にわたり発言を続けてきました。またオフレコでメディア、官庁、政党、企業などに対し、そして名前を公表できない人々を含め日本の指導層のために助言とブリーフィングを行ってきました。高橋和夫の情報への感性に共鳴する方々のために分析を提供します。

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国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

国際情勢をわかる言葉で、まず自分自身に語りたいと思っています。北九州で生まれ育ち、大阪とニューヨークで勉強し、クウェートでの滞在経験もあります。アメリカで中東を研究した日本人という三つの視点を大切にしています。映像メディアに深い不信感を抱きながらも、放送大学ではテレビで講義をするという矛盾した存在です。及ばないながらも努力を続け、その過程を読者の皆様と共有できればと希求しています。

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