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ドイツでもドローン事故発生中  保険加入義務は2005年から

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
超危険!アウトバーンでの事故(c)birgitH/pixelio.de

日本と同じく、ドイツでもドローン(無人飛行機)による被害が問題となっている。例えばこの5月、アウトバーン走行中の乗用車フロントガラスにドローンが衝突した事故では、大惨事になるところだった。被害にあったドライバーは、今でもショックと怒りが消えないという。

ドイツでは2005年よりドローン飛行における賠償保険加入義務が定められた。ドローンの重量、機種に関わらず、企業で用いる場合だけでなく、ホビーで飛ばすドローンもその対象だ。

危険な事故、ドローンカーゴでプレゼント配達も!

ここでは、個人が所有するドローンの事故やその対策にスポットを当てた。過去に様々なドローン事故ニュースがあった一部を下記に紹介したい。

1.乗用車を運転中に被害にあった市民

2015年5月、アウトバーン走行中の乗用車フロントガラスに直径40センチのドローンが衝突した。男性ドライバーには幸い怪我はなく、走行中の他の車輌にも被害は及ばずにすんだ。警察は、道路交通法違反としてドローン操縦者を捜索中。 

また、昨年にはハンブルク近郊で走行中の乗用車の屋根にドローンが衝突した。ドローン操縦者の未熟な技術が原因だったようだ。

2.服役中の友人にドローンカーゴでプレゼント

2014年12月、ブレーメンの港近くにある刑務所内にドローンが不時着陸した。ドローンには服役中の友人に届ける予定だった10グラムのマリファナが隠されていた。

刑務所建物の外部に突出しているわずかな窓台にドローンを着陸させ、服役者は窓の金網からプレゼントを入手するという算段だったらしい。2年前、高くした刑務所の壁をなんとか乗り越えたドローンカーゴは受取人の手元に届くことなく墜落、監視官が発見した。

ブレーメン刑務所によれば、2013年に没収したドローンに隠された違法品は、計500グラム。カナビス、マリワナ、ハッシッシなどが運ばれたという。

またハンブルクの刑務所でも服役者にクリスマスプレゼントをドローンに忍ばせて飛ばしたが失敗した。中身は携帯電話、マリファナ、USBステック(映画)だった。 

3.企業スパイ  

2013年3月、ブレーメン、北ドイツ在のIT技術者男性を逮捕。ドローンを操作してハイテック企業の上空へドローンを飛ばし、機密情報を盗み取ろうとした模様。 

以上はほんの一例だ。正確な事故統計はないため、実際にはもっと多くの問題がある事が予想される。刑務所服役者の手に無事渡った品物については当然のことながら明らかにされていない。

天から降ってくるドローンにどう対処? 2005年より賠償保険加入義務

一番問題となっているのは個人が利用するドローンで起きる事故にどう対処するかであろう。ドイツでは2005年より保険加入義務があるが、一般市民に浸透していないように見受けられる。

ドローン飛行認可申請歴を見ると、その数はうなぎのぼりだ。例えばミュンスターでは、2014年に220件の認可をした。2012年は、50件だったというから、この2年で4倍以上の認可をした訳だ。この数字は企業、個人とも含まれる統計のため明確ではないものの、ホビーとして利用する市民が急増していることは間違いないだろう。

ホビーでドローンを操作する市民が気をつけねばならない主な点は、以下のとおり。

1、ドローンの重量が5キロ以下の場合、操縦・飛行の許認は不要。ただし、重量が5キロから25キロの場合、居住地管轄の州航空管理局へ申請し、許認が必要だ(企業で用いる場合は、ドローンすべての操縦ならびに飛行の許認が必須)。 

2.重量に関係なくすべてのドローンの飛行禁止区間は、住宅地、車道、空港周辺1.5キロ圏内。屋外イベント会場や人が密集する場所も不可。企業敷地内やその上空、個人の敷地も飛行タブーゾーン。

3.操縦者はドローン飛行の様子を監督できる100メートル以内で操作すること。飛行の高さは100メートルまで。カメラやGPS搭載のドローン飛行は原則として禁止。カメラやGPS搭載で飛ばす場合は、担当治安局へ事前申請手続きをして特別認可を得ることが可能だ。

出典:全国紙ディ・ツァイト新聞とシュレスヴィヒ・ホルシュタイン新聞より抜粋

保険に加入すれば、安心という訳でもない。事故が発生した場合、賠償額全額を保険でカバーできるとは限らない。保険会社は、事故の背景やドローン操縦者などの背景を詳しく調査し、認可した時に限り、被害の一部あるいは全額が支払われる。

保険料金は、保険会社により様々だが、年間保険料80ユーロから150ユーロ程((1万円から2万円前後)という。

保険加入義務付けでも、課題は山積

個人所有のドローン事故を防ぐには、操縦する市民の意識改善が必要だろう。ちょっと遊び気分で飛ばそうという気軽な思いで操縦する前に、悪用の危険性やどんな規制があるのかを学ぶことは、事故防止に繋がるにちがいない。

例えば、ドローン購入時に操縦方法や禁止飛行地区を学習するノウハウセミナーを設けるのも一手かもしれない。ドローン所有者向けに乗用車ドライバー対象の交通違反点数制度と同じような法導入や罰金制度で取り締まりを強化するのもいいだろう。

一方で、個人が用いるドローン飛行の規制や禁止地区などが曖昧な点も指摘されており、安全なドローン飛行にむけて今後の課題は山積している。

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典共著(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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