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認知度94%、理由までなら半数足らず…消費税率引上げの周知状況

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 引上げの事実は知っていても、その内容や理由まで知っている人はそれほど多くない

期日・率共に周知度は高い消費税率引上げ

この4月から消費税率は現行の5%から8%へと引上げが行われる。これはすでに決定事項で、あとは実施するのみの政策。それではこの事実について、どれほどの人が認識しているだろうか。

次以降のグラフはインターワイヤードのディムスドライブ事業局が2013年12月12日から27日にかけて実施した調査結果を基にしたものだが、その結果内容によれば、引上げ期日、引上げ税率共に知っている人は93.5%に達していた。2013年12月の時点ですでにほとんどの人に周知されていることになる。

↑ 消費税率引上げに関する認知状況(「8%」「4月から」それぞれの要素について)
↑ 消費税率引上げに関する認知状況(「8%」「4月から」それぞれの要素について)

「税率のみ」「期日のみ」、さらには「引上げそのもののみ」「まだ検討段階だと思っていた」「まったく知らなかった」はごく少数派で、誤差範囲に近い。調査期間から実施までには3か月以上の期間が残されていることから、実際の切り替え時期の時点ではほぼすべてが知っている状態となるだろう。

半数足らずの「理由まで知っている」

一方、消費者には「直接には」関連性が薄い、消費税引き上げ分がどのように運用されるのかに関して、どれほどの人に周知されているだろうか。財務省の説明(例えば「副大臣がお答えします > 消費税引き上げの理由」)などによると、

「高齢化社会の到来で不足する社会保障財源の確保」

「国民全体で広く負担する消費税による補完が好ましい」

「不景気でも減収傾向が薄い消費税の方が安定しており、同じく支出が安定・漸増する社会保障財源として望ましい」

などの説明がなされている。しかしながら消費税そのものは一般税で、特定財源への割り当てを目的とした「(福祉)目的税」ではないことも認識しておく必要がある。各省庁などの説明では「福祉目的化」との言い回しが多数使われているが、法令上明確に区分した上での割り当ては成されていない。

ともあれ、運用面の理由、表現を変えれば「なぜ引上げの必要があるのか」について明確に、あるいはある程度認知している人の割合は次の通り。

↑ 「消費税(の引き上げ分)が何に運用されるのか」明確に・ある程度認知している人の割合
↑ 「消費税(の引き上げ分)が何に運用されるのか」明確に・ある程度認知している人の割合

全体の認知度は46.7%。実行される事実内容はほとんどの人が知っていても、「なぜ」という点まではあまり知られていない。特に、家計周りで細かい金額を日々消費して影響を受ける女性の認知度が31.3%と低い。理由を知らず、理解できずに事実だけを知っていたのでは、あらぬ筋から間違った情報を得たり、誤解釈の末、誤解を招いたり無益な反発が生じる可能性が高い。

世代別では高齢層ほど認知度が高い。これは掲げられている目的が社会保障財源の確保で、その恩恵を大いに受けるのが高齢者だから。また多額の金額を自ら動かす可能性が歳を経るに連れて高まり、その際に消費税も目に留まるのも一因。似たような理由で、世帯年収でも高年収ほど周知度は高い。最大で26.3%ポイントもの差が出ている。

周知度が今一つなのは、啓蒙活動が不足していることに他ならない。あと三か月足らずの間だが、さらなる「正しい」啓蒙・周知が求められる。

同時に、目的税でない限り、「福祉目的化」という枠組みはいつでも外される得る(「「住民税が2倍に増えた」「自営業者はツラい」の謎を探る(2)……定率減税廃止がかなめ!?」にもある通り、財務省曰くの「恒久的」なる表現ですら、「恒久」ではないからとの理由で廃止された定率減税が前例としてある)。人口構成を見る限り、多分の社会保障費が必要不可欠である状況にしばらく変化はない。

↑ 日本の年齢区分別将来人口推計(総人口比)(2013年版高齢社会白書より)
↑ 日本の年齢区分別将来人口推計(総人口比)(2013年版高齢社会白書より)

しかし常に監視は必要だろう。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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