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第四次安倍内閣改造の焦点

竹中治堅政策研究大学院大学教授
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

内閣改造

 明日安倍晋三首相は自民党総裁に三選されたことを踏まえて第四次安倍内閣を改造する予定である。

 そこで改造のポイントについて考えてみたい。二つの注目事項がある。一つは石破派の処遇。もう一つは日米貿易交渉、社会保障改革など今後の政策課題を担う閣僚の人事である。

総裁選の結果と石破派の処遇

 第一の焦点は石破茂氏を支持した人たちの処遇である。より具体的には石破派と参議院竹下派から閣僚を任命するかということである。総裁選中には首相側には総裁選後に「石破派を干す」という意見もあったという報道がなされている。

 実際に石破派から閣僚を起用しないのか。

 9月20日に行われた総裁選で首相は553票、石破氏は254票を獲得した。ここで重要なのは地方票の結果である。首相は224票、石破氏は181票した。党員票の獲得率に換算すると首相は55.4%、石破氏は44.7%を取った。

 1994年の政治改革以降、現職首相に他の政治家が挑む形で行われる総裁選が行われるのは今回で3回目である。安倍首相の一般党員からの得票率は3回中最低である。すなわち、99年9月の総裁選では小渕恵三首相は一般党員の投票の67.9%を獲得し、2003年9月の総裁選で小泉純一郎首相は一般党員の投票の57.2%を獲得した。

 今回は一騎討ちで行われ、石破氏の得票には首相に対する批判票がかなり含まれていると考えられる。一般党員の首相に対する支持が伸び悩んだのはなぜか。

森友学園問題と加計学園問題への批判

 それはやはり森友学園問題および加計学園問題に対する根強い批判が残っているからであろう。

 首相は今度の閣僚人事は適材適所で行い、挙党体制という形は取らないと明言している。もちろん現在、派閥の力は落ちており、かつてのように各派に閣僚ポストを割り振るという時代ではなくなっている。ただ、総裁選の結果にはすでに述べたような意味がある。

 首相は二つの問題について自らの関与を否定する一方で、最近は、首相夫人が森友学園の名誉校長を務めていたこと、加計学園の理事長と交友関係があったことを踏まえて「李下に冠を正した」面はあったと反省の弁を述べるようになっている。にもかかわらず石破派を「干す」場合、首相は二つの学園の問題に対する批判には結局耳を傾けるつもりはないのであると世論から解される可能性が高い。

日米貿易交渉、社会保障改革を担うのは誰か

 第二の焦点は今後の政策課題を担う閣僚の人事である。安倍首相は内閣の骨格は変えない意向で政権発足以来その任にある菅官房長官と麻生副総理・財務大臣を留任させる考えであるとすでに報じられている。

 それ以外の閣僚人事が首相が今後取り組むと考えられる政策課題との関連で問題となる。政策課題についてはすでに安倍首相自民党総裁3選後の課題で述べた。特に注目したいのが、経済財政・経済再生担当大臣人事、人づくり革命担当大臣の扱い、社会保障改革を担当する大臣の扱い、法務大臣人事である。

 当面の重要な政策課題は日米貿易交渉、教育無償化、高齢者の雇用拡大などを柱とする社会保障改革、外国人労働者受け入れのための新たな在留資格創設であろう。

 日米貿易交渉は経済財政・経済再生担当大臣が引き続き担当するはずである。一方、教育無償化は人づくり革命担当大臣が担当し、茂木氏が二つの大臣を兼任してきた。貿易交渉が本格化する中で、引き続き人づくり革命担当大臣ポストを設けるのか、設ける場合に経済財政・経済再生担当大臣との兼任ポストとなるのかが注目される。

 また、首相はすでに三選後に取り組む大きな課題として社会保障改革を挙げており、当面、高齢者の雇用拡大に取り組む意向を示している。社会保障改革を厚生労働大臣に担わせるのか、それとも、新たな担当大臣ポストを設けて、委ねるのかについても注意したい。

 安倍内閣は新たな在留資格創設に伴って、入国管理局を入国管理庁に改組する方針であるという報道もなされており、法務大臣人事も重要な意味を持つ。

政策研究大学院大学教授

日本政治の研究、教育をしています。関心は首相の指導力、参議院の役割、一票の格差問題など。【略歴】東京大学法学部卒。スタンフォード大学政治学部博士課程修了(Ph.D.)。大蔵省、政策研究大学院大学助教授、准教授を経て現職。【著作】『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』(中公新書 2020年)、『参議院とは何か』(中央公論新社 2010年)、『首相支配』(中公新書 2006年)、『戦前日本における民主化の挫折』(木鐸社 2002年)など。

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