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今度は茂木幹事長から金融政策の正常化を促す発言が

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 19日の岸田首相による金融政策のさらなる中立化を促すとの発言に続いて、今度は茂木自民党幹事長からも日銀の正常化を促すような発言があった。

 自民党の茂木敏充幹事長は22日の都内での講演で、日銀について「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と語った(22日付日本経済新聞)。

 政治から独立した立場にある日銀の対応に関し、自民党の執行部が公の場で注文をつけるのは異例だと、この記事にあった。しかし、アベノミクスと呼ばれた政策は首相が政治から独立した立場にある日銀に対して公の場で注文をつけていたと思うのだが。

 ただし、アベノミクス時とは方向性がまったく異なる。アベノミクスでは日銀に対して強力な緩和を実施するように求めていた。

 それに対して今回は、行き過ぎた金融緩和策が円安などの弊害を招いていることで、躊躇無く金融政策の正常化を実施するよう求めていたのである。

 こちらは政治の干渉というよりも、日銀は独立性を維持し、過去にとらわれず、本来あるべき政策に戻すことを求めている。

 (茂木氏は)円安の是正策として「(日銀が)金融政策の方向性をはっきり、ぶれずに示すことだ」と説明した。金融引き締めは「日本企業の経営からいって基本的に十分対応できる」と主張した(22日付日本経済新聞)。

 日銀の金融政策は円安のために行うものではない。しかし、結果として日銀が異常な緩和策を続け、そこからなかなか抜け出せなくなっている状況が円安を招いている。その異常な状況から脱するように求めているのである。

 金融引き締めといっても欧米の中央銀行のように政策金利を大きく引き上げろというわけではなく、少なくとも物価に見合った金利形成の必要があるということになる。

 今回でいえば、0.25%までの利上げをどうして躊躇しているのかと問うているようにもみえるのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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