日本の長期国債先物の利率は6%なのはどうしてか。利子はないものではなく、物価に応じてあって当然のもの
日本の債券市場のベンチマークと呼べるものが大阪取引所に上場している長期国債先物、通称「債券先物」である。
デリバティブと呼ばれる先物の詳細を簡単に説明することが難しい。日本の長期国債先物は額面100円(つまり償還時には100円で返ってくる)。そして利率が6%の標準物と呼ばれる仮想の国債を取引しているのである。
長期国債先物は現引き、現渡しが可能で、その受け渡し適格銘柄の最安値銘柄、いわゆるチーペストに理論上は価格が連動する。そのチーペストに狙い定めて、日銀が6月に指し値オペを実施したのは、長期国債先物を売り仕掛けたヘッジファンドに対抗するものであった。このあたりの説明はやや専門的になるので今回は省略する。
ここで気にしてもらいたいのが、長期国債先物の標準物の利率がどうして6%なのかという点である。
現在の黒田日銀は長期国債の利回りを無理矢理0.25%に押さえ付けており、6%とは乖離がありすぎる。実際に8月2日に入札された10年利付国債の利率は0.2%であった。
長期国債先物の標準物の利率が6%なのは、東京証券取引所(のちに大阪取引所に移る)に長期国債先物が上場された1985年当時の長期国債の発行条件などを踏まえて決定されたものである。つまりそれが実勢の利回りであったのである。
これまで、標準物の利率を引き下げようとの動きはあった。しかし、価格の連動性などの問題により、変更されずに現在に至っている。
注目してほしいのは6%という長期国債の利率である。そんな利率があったのかと疑問に思われる方がいるかもしれない。
1985年当時の長期国債の利回りについて、財務省のサイトにある「国債金利情報」で確認してみた。長期国債先物が上場した1985年10月19日は残存が9年までの表示しかなかったため、9年でみても5.7%とほぼ6%であった。参考までに当時の日銀の政策金利である公定歩合は年率5.0%であった。
基準割引率および基準貸付利率(従来「公定歩合」として掲載されていたもの)の推移公表データ一覧 日銀
ちなみに1985年の消費者物価指数を今度は内閣府のサイトで確認したところ、前年比でプラス2%であった
現在、足下の消費者物価は前年比でプラス2%を超えている。それにもかかわらず、長期金利は2%どころかほぼゼロ%でしかない。これはおかしくはないか。
むろん1985年当時と現在の金利を取り巻く環境に違いはある。しかし、それでも物価に応じた金利は形成されることはしかるべきではないのか。
それを無理矢理にゼロ%におさえ付け、言い換えれば我々が本来、物価に応じて受け取れるはずの金利をなくすことで、いったい日銀は何をしようとしているのであろうか。利子はないものではなく、物価に応じてあって当然のものなのである。