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中国、全人代当選無効は日常茶飯事

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
2016年の全人代(全国人民代表大会)(写真:ロイター/アフロ)

13日、中国の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)遼寧省代表の選挙で票の買収があったとして現職45人の当選が無効となった。省レベルでは異例かもしれないが、市レベルでは過去に518名が買収で無効となるなど日常茶飯事だ。

◆遼寧省で不正発覚

中国政府の通信社・新華網によれば、9月13日、全人代常務委員会は、全人代の代表を選ぶ過去の遼寧省の選挙において票の買収があったとして現職45人の当選を無効にすると決めたとのこと。

張徳江・全人代常務委員長は13日午後に閉幕した全人代常務委員会第二十三次会議で、遼寧省人民代表大会が選出した第12回全人代代表の当選者45人の当選を無効とすると発表した。

中国では全人代代表を村レベル代表の選挙から積み上げていって、郷鎮、県、市、省・直轄市・自治区レベルの人民代表を選び、その中から全国人民代表大会(全人代)の代表を決めるという仕組みになっている。全人代(全国レベル、国会に相当)以外の人民代表大会は、「地方各級人代」(地方議会)という呼び方をする。

この呼称に従えば、「全国人代と地方各級人代の選挙法」というのがあり、その選挙法第五十七条には、「金銭やその他の財物などの賄賂で当選した者は無効とする」という規定がある。

張徳江委員長は13日、「新中国建国以来、初めて起きた省レベルの不正で、重い規律違反であり、選挙制度を破壊する重大案件だ」と述べた。

しかし、この発言は「省レベルで」という言葉に注目すべきで、市レベル以下のレベルでは、日常茶飯事的に起きている普遍的現象だ。

◆湖南省衡陽市では518人の人民代表大会代表が無効

たとえば、2012年12月28日から2013年1月3日まで、湖南省衡陽市の代表選挙があった。ところが、この選挙に関して不正があった(金銭で票を買収した)という訴えが2013年2月から中国大陸のネットで出始めていた。そこで湖南省・中国共産党委員会の紀律検査委員会が調査を始めたところ、汚職行為があったことが判明。2013年年12月28日に、527人の代表のうち518人が辞職させられたと新華網が公表した。なんと全代表の98.3%に不正があったということになる。

汚職金額は総計で1億1000万元(当時のレートで換算すると、日本円で約19億円)に上る。

これは実は拙著『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』(小学館新書、2014年)で書いた「中国人が選んだ中国人クズ・ランキング」の組織分類で第3位を占めたスキャンダルである。

同じく拙著『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』で書いた 「広東烏坎(ウカン)村村長選挙」でも類似のことが起きており、村民委員会から全人代代表に至るまで、中国はどこもここも金銭による不正(腐敗)だらけなのである。どんなに努力しても、それを絶滅させることは不可能に近いだろう。

その原因は、一党支配体制の中で自由経済を許したからだ。

社会主義国家と自由経済という矛盾した体制の中では、「政治体制改革」を行なわない限り権力者側は腐敗の温床を形成するばかりで、政治体制改革を行なえば、「一党支配体制」は必ず崩壊する。中国はそのジレンマの中にある。

今回の事件は、そのジレンマの氷山の一角にすぎない。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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