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試合ごとに進化を続ける京都・伊藤達哉が臨む富樫勇樹との再戦マッチ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
試合ごとに選手として進化し続けている京都ハンナリーズの伊藤達哉選手

 Bリーグはシーズン第8節を終え、開幕から好調を維持している京都ハンナリーズは9勝6敗とし、西地区首位の琉球ゴールデンキングスを1ゲーム差で追走している。

 第8節では地元京都で大阪エヴェッサと対戦し、84-66、81-75と連勝に成功した。中でも今シーズンから先発PGを任させている伊藤達哉選手は、第1戦で14得点、2アシスト、2リバウンド、3スティール、第2戦でも15得点、2アシスト、7リバウンド、5スティール──という大活躍をみせ勝利に貢献している。

 京都は昨年2月に東海大4年生だった伊藤選手と契約した。昨シーズンは公式戦出場機会がなかったが、オフに村上直選手、川嶋勇人選手、小島元基選手と3人のPGが他チームへと移籍したため、まだ実績のない23歳の伊藤選手が先発PGに抜擢されることになった。

 U-18日本代表候補やユニバーシアード日本代表に選ばれた経験があるとはいえ、Bリーグ初参戦のルーキーが最初から思い通りのプレーができるするのは不可能だ。試合ごとに成功と失敗を繰り返し、時にはプレーに満足し、またある時にはプレーに悩みながら過ごす毎日だ。だがその一方で、経験を無駄にせず着実に進化を続けている。元々ディフェンスに定評がある選手だが、最近ではオフェンスにおいてもPGとして攻撃のバランス感が日に日に上手さを増しているのが見て取れる。

 「試合を重ねるにつれ、自分も成長しているなというか自信もついてきて、(自分で)いけるとことはいく、いくべきところではない時はいかないで、メリハリをつけることが今はできています。自分がダメな時はもっとインサイドに入れたりとか、そういう判断はどんどん良くなっていると思います。

 前までは(コーチから)言われていることだけをやるという感じだったんですけど、今は言われることに対して反抗ではないんですけど、その裏をかいたプレーとかを自分の中でやっているところもあります。フォーメーションだったりするとかでもその裏をかいて自分でドライブにいったり、それが結構いいというか、できているので、そこは続けていければいいかなと思ってます。

 40分間安定したプレーをするっていう…。それがガードにとって大事なことっていうか、常に冷静であることですよね」

 伊藤選手の言葉からも窺い知れるが、試合を重ねながらプレーに余裕が出てきたようで、試合の流れを読む判断力が確実に良くなってきている。またそうした技術的な進化が、心境の変化にも現れ始めている。シーズン開幕戦で三遠ネオフェニックス相手に連勝を飾り、次週に千葉ジェッツ戦を控えていた伊藤選手は人一倍強い負けず嫌いという性格も手伝って、同世代の日本代表PG富樫勇樹選手への対抗心をむき出しにしていた。だが第9節(18、19日)での千葉との再戦を控え、以前のような気持ちの高ぶりはほとんど感じられなかった。

 「(富樫選手とのマッチアップについて)最近よく聞かれるんですけれど、自分の中ではあんまり考えないようにしようかなと思っていて…(笑)。ちょっと意識しちゃうところが本当にあるので…。でも同級生の栃木の生原(秀将選手)とかは意識しちゃう部分はありますね」

 バスケットは相手がいる競技だ。しかし“個人対個人”の優劣で勝敗が決まるものではないし、マッチアップする選手に等別な対抗心を向ける必要もない。むしろチームが勝つためにどうやって自分の役割を果たすをしっかり考えるのがPGとして重要な役目だといえる。現在の伊藤選手は明らかに相手選手ではなく自分と向き合おうとしている。

 シーズン開幕から2ヶ月足らずながらも進化を続けている伊藤選手が、富樫選手率いる千葉と今回はどう渡り合うのか。興味が尽きないところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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